財政マネタリストが使い続ける相関グラフ

「税は財源ではない」カルトの教祖の一人・中野剛志が、近著の『どうする財源』で例の散布図を引用している。

財政支出でGDPをコントロールできるという「財政マネタリズム」とでも呼ぶべき論である。

p.102-103

これは、1997年から2017年の間における主要31ヵ国の財政支出の伸び率と名目及び実質GDPの成長率の関係を示したものです。
これによると、財政支出の伸び率は、名目GDPのみならず実質GDPの成長率と強い相関関係を示していることがわかります。
しかし、日本では、積極財政が経済を成長させるとどうしても認めたくない論者が少なくありません。そういう人たちは、この不都合な図14を見せられると、必ず「これは、経済が成長したから、財政支出が増えたことを示すものだ」と言い張ります。

p.103-104

この図14から、財政支出を伸ばすと経済が成長することを否定するのは、かなり苦しいのではないでしょうか。

p.105

このグラフは起点(t=0)とn年後の名目GDP(Y)と一般政府支出(G)の関係が

$$
\frac {Y_n}{Y_0}≒\frac {G_n}{G_0}
$$

となっていることを示している。これを変形すると

$$
Y_n≒\frac {Y_0}{G_0}G_n
$$

となる。$${\frac {Y_0}{G_0}}$$は定数なので、$${Y_n}$$は政府が決める$${G_n}$$によって決まる、というのが積極財政派の主張だがそうではない。

式を

$$
\frac {G_n}{Y_n}≒\frac {G_0}{Y_0}
$$

と変形すれば、ほとんどの国は一般政府支出の対GDP比($${\frac {G}{Y}}$$)をほぼ一定に保つということを示しただけに過ぎないことが分かる。

IMFのWorld Economic Outlook Databaseから先進36か国について示したものが👇だが、

IMF WEO Databaseより作成

この2001年と2019年を比較するとこう👇なる(左下が日本。

IMF WEO Databaseより作成

収入でも同様の関係が見られるが、因果関係が政府収入→名目GDPの向きではないことは明らか(増税して税収を増やすほど名目GDPも増えることになってしまう)。

IMF WEO Databaseより作成
IMF WEO Databaseより作成

積極財政派の学習能力の低さには呆れさせられる。

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