出生数減少の実態

今年の出生数が70万人割れとなる見通しで「相当ヤバい」と騒がれていたようなので、少し詳しく見てみる。

近年では30歳が最も出生率が高い年齢となっている。

国立社会保障・人口問題研究所

"出生数=出産可能年齢の女の人口×出生率"だが、出生率が高い30歳前後の人口の減少ペースは近年では緩やかになっている。

総務省統計局「人口推計」, 国立社会保障・人口問題研究所「将来人口推計」
2024年以降が将来推計

それなのに出生の減少ペースが速いのは、出生率が低下しているためである。若い世代の出生率低下に加えて、それを相殺していた30歳以上の出生率が2010年代後半から頭打ち~減少に転じている。

厚生労働省「人口動態調査」
厚生労働省「人口動態調査」

コーホート別に見ると、1980年代後半以降に生まれた世代に出生率低下の兆しが表れている。

国立社会保障・人口問題研究所
国立社会保障・人口問題研究所

出生率低下の主因は婚姻率の低下である。

総務省統計局「国勢調査」
総務省統計局「国勢調査」より作成

例えば、28歳の既婚の割合は1985年が78%、2020年が42%、出生率は1985年が0.19、2020年が0.09とそれぞれ約半分だった。

国立社会保障・人口問題研究所
合計=1.76
国立社会保障・人口問題研究所
合計=1.33

ある"エキスパート"は3つの原因を挙げているが、

非婚化・少子化の原因は、主に、先進諸国に共通した「1:高学歴化による価値観自由化」と、日本に顕著な「2:男性の長時間労働の温存に起因した、生産性・実質賃金の低迷と、女性の大きな家事育児負担」「3:育児の大きな家族負担」。

https://news.yahoo.co.jp/profile/commentator/shibataharuka/comments/cc0119a4-6982-4a9f-8bd7-6c1003766b90

20代の経済状況が悪化していないことなどから2と3はnegligibleであり、1の「結婚観・人生観・社会規範の変化」が決定的要因であることがほぼ確実である。この要因による非婚化・少子化は人類普遍的なので、政府の政策では少子化を止めることは極めて困難だと考えられる。

補足

天野のこの👇推測は正しい(ここから先の掘り下げは的外れだが)。

この差から見えてくるのは、「好きになる力」(=好きになって行動に移す力)が既婚者と未婚者を大きく隔てているのではないか、ということです。結婚を実現させる力は、財力よりもまずは「他者を好きになる力」を持ち、「好きになった相手と一緒になりたい」と強く思い、行動に移す力ではないかとむいうことです。

データで読み解く「生涯独身」社会』p.151

ゆとり教育が失敗した主因に、強制されたり適切に誘導されなければ勉強しない(できない)子供が少なくなかったことがあるが、非婚化も本質は同じで、皆が皆「好きになって行動に移す力」を持っているわけではないので、自由に任せると結婚できない男女が大量発生(約3割)してしまう。

男女一組から生まれる子の数は平均2人となるのが世界標準なので、3割が非婚ならコーホート出生率は1.4になってしまう。

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