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経済

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2022年6月の記事一覧

消費税減税なら年金3割カット

茂木発言が反発を買っているらしいが、3割は大袈裟だとしても、収入が20兆円も減れば(恒久減税または廃止で)、支出も減らさなければならないのは当たり前ではないか。 社会保障を維持と消費税の恒久減税/廃止を両立させるなら、代わりに何を増税するかを明確にするべきである。

円の対ドル適正価格と実質為替レート

1ドル=90円74銭が歴史的にはどの程度の水準なのかを、日米の消費者物価指数で実質化した為替レートで確認する。適正水準としてはやや円安気味のように見えるが、試算の一つとして参考にはなる。 グラフは名目為替レートが1ドル=129円の2022年5月までで、同月を基準とする。橙線が1ドル=90円74銭。 円とドルを逆にする。 ちなみに、1ドル=200円(100円=0.5ドル)は実質では昭和30年頃の水準である。「プラザ合意以降の円高バブル」はとっくの昔に崩壊しているので、今更

「岸田政策」の問題点

二点取り上げる。 一点目だが、企業に関しては将来不安というよりも「国内市場の量的拡大が見込めないという確信」とした方が適当と思われる。この確信は人口減少という事実に基づいているので、政策によって変える(→将来不安を払拭する)ことは難しい。 二点目だが、これが「日本経済の長期低迷の原因」の一つであることに気付いていないらしい。 日本は 人口減少のために潜在成長率が低い 資本蓄積が進んでいる ために、資本効率が低いのが自然である。ここで、資本に対するリターンを引き上げ

消費税廃止

消費税の廃止は現実的か。 消費税は一般会計の租税収入の中で最も多くなっている。 2020年度には26兆円(一般会計分は21兆円)に達しているが、それでも社会保障費の国庫負担の増加には追い付いていない。 消費税廃止→経済活性化→20兆円以上の税収増とはならないので、当面は公債金で穴埋めするとしても、いずれは20兆円以上の増税and/or歳出削減が必要になる。それを具体的に示さない限りは、無責任と批判されても仕方がない。消費税が社会保険料よりはましな財源とされていることには

日本の賃金が上がらない三つの理由

日本の賃金が上がらなくなった理由についてはこれまでにも再三記事にしてきたが、最近また話題になっているので、今回は三点に整理する。 一点目は、人口減少→国内市場の量的拡大が見込めない→(物価が安定していれば)売上高は右肩上がりにはならない、との認識が定着したことである。 増収が期待できない環境では、企業は 固定費を抑える/下げる 固定費の変動費化を図る(→雇用の非正規化) ようになるが、これは家計の購買力減少→企業の国内売上の減少につながるので、ひとたびこのような均衡

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円は実質で「1ドル=308円」の時代に逆戻り

実質実効為替レートで見た円安については6/14の記事で取り上げたが、今回は一般人にとって馴染みがある対米ドル為替レートで円の「安さ」を示す。 戦後の円は1ドル=360円→1971年12月のスミソニアン合意で1ドル=308円に切り上げ→1973年4月に変動相場制に移行、と推移してきた。 1971年末から現在までにアメリカの消費者物価指数は7倍、日本は3倍に、従って、1ドルの購買力(実質的価値)は1/7、1円は1/3になっている。ドルは対円で3/7(=43%)に減価したことに

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円安~実質実効為替レートは1970年頃の水準に低下

円安のヤバさと政府・日銀のこれまでの政策のマズさがようやく認識されてきた。 対ドルは6月13日まで 実効為替レート(Broad)は6月3日まで 日本は他国よりもインフレ率が低い状態が続いてきたので、海外との相対的な物価水準を示す実質為替レートは名目為替レートよりも大きく低下している。 下のグラフは2022年4月までで、4月のbroad指数は約60だが、現時点では60を大きく割り込んでnarrow指数では1970年頃の水準になっていると推測される(broadはnarro

ウクライナの通貨が示す未来?

この東京大学の准教授は畑違いのロシア・ウクライナ情勢についていい加減な記事を書き散らかしているが、今回も酷い。 ウクライナの通貨フリヴニャが「開戦後も一定のレートを堅持する」のは、ウクライナ国立銀行(中央銀行)が公定レートを2月24日の水準で固定したからである。その一方で、政策金利は開戦前の10%から25%に引き上げられている。 歴史認識も酷いが、とりあえずここまで。

「日本の家計が値上げを受け容れている」理由

日本銀行の黒田総裁の「日本の家計が値上げを受け容れている」は、 東京大学の渡辺努教授のサーベイ👇を基にしている。 だが、おそらくこの仮説は外れている。家計は「コロナ禍のために消費が減った→結果的に貯蓄が増えた→値上げに寛容になった」よりも、値上げの主な理由が原材料の国際価格の高騰&円安だと知ったために、「値上げ圧力は全国に行き渡っている→他店も値上がりしている可能性大→他店に移っても骨折り損のくたびれ儲けになる→その店でそのまま買う」となったと考えられる。 仮説の妥当性

21世紀政策研究所の報告書「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」の基本認識に問題あり

冒頭からこの👇論調なので反緊縮派に称賛されている21世紀政策研究所の報告書だが、 「緊縮的な経済財政運営の継続」のために「この30年間、日本は他の先進国に比べて、実質GDPは伸びてこなかった」という基本認識に問題がある。 上のグラフにイタリアを加える👇。 30年間では人口増加率の違い(日本は+2%だがアメリカは+32%)が無視できないので、1人当たり(per capita)にすると成長率の差が縮小する。 更に、1990-2002年と2002-2020年の2期間に分ける

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