マガジンのカバー画像

経済

471
運営しているクリエイター

2021年1月の記事一覧

経団連とクメール・ルージュ

この他人事感は凄い。 経団連・中西会長「日本の賃金水準が、いつの間にかOECD(経済協力開発機構)の中でも相当下位になっている。春季交渉で、その問題がすべて片づくとは思わないが、非常に大事な課題だ」 OECDから平均賃金(年間)の推移をグラフにする。購買力平価(PPP)換算なので為替レートには影響されていない。 This indicator is measured in USD constant prices using 2016 base year and Purch

生活保護の推移

菅首相の「最終的には生活保護」発言が話題になっていたので、生活保護の推移を確認する。 グラフは2020年10月までだが、被保護実人員は減少基調にある。 保護率(=被保護実人員÷総人口)はバブル経済で急低下→バブル崩壊で低下が止まる→金融危機で上昇に転じる→リーマンショックで急上昇→安倍政権の景気拡大期にピークアウトしたが、依然として歴史的高水準にある。 2018年度には保護開始の主な理由別世帯数の38.8%が「貯金等の減少・喪失」だった。

失われた30年は10年+20年

「失われた10年」が20年、30年と延びたところを新型コロナウイルス感染症に直撃されている日本経済だが、再建には1990年代の10年と2000年代からの20年が全く別物であることの認識が欠かせない。以前にも論じた内容だが、データをアップデートして再度取り上げる。 10年と20年の違いが企業部門の構造変化にあることを財務省「法人企業統計調査」で確認する。2009年度以降の当期純利益と配当金は純粋持株会社を除いている。 先に書いておくと、バブル期の過大な投資が過剰設備と過剰債

リフレ派の時代遅れな意見にダマされるな

リフレ派の浜田宏一がボケた話をしている。 人を見る目が無い。 菅新首相は社会を庶民の目から見ることのできる首相である。社会のどこを直せばより能率的な社会になり、どこを直せばより公平な社会になるかを判断する目があると想像できる。 これが事実誤認であることは先月の記事で検証している。当時の日本経済には量的緩和は無意味であり、円高もキャリートレードによる大幅な円安が巻き戻されたものに過ぎない。日本経済の落ち込みが大きかったのは、それまでの景気拡大が過度の外需依存だったためであ

定額給付金を要求するなら費用対効果の検証も必要

また定額給付金に関して的外れな批判である。昨年の10/27と10/28の記事でも論じているが、改めて要点を指摘する。 昨年の特別定額給付金の効果についても以下の記事で示した通り、多くは預貯金に回り、その効果は薄いと答弁している。 特別定額給付金によって、命や生活が何とか維持されて助かった人の声など、一切耳に入らないようだ。 麻生財務大臣が言っていたのは「特別定額給付金によって、命や生活が何とか維持されて助かった人」は割合としては多くはないので、給付金を必要としない人に配っ

不公平税制に憤る学者もフェミの味方

この本の原題の"The Triumph of Injustice"は「資本への課税はますます減り、労働への課税はますます増える」ことを指している。税制が富裕層有利になって背景にグローバルな資本移動があることの分析と、格差を縮小するための税制改正の提言には説得力がある。 しかし、不公平に憤る優秀な学者でも、女のことになると思考がバランスを失うようである。 育児には法外な費用がかかる。託児所の年間費用が幼児一人あたり二万ドルに及ぶケースもざらにある。そのため多くの家庭では、親