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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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2021年2月の記事一覧

通貨の起源は財政赤字とは限らない~南スーダン・ポンドの生まれ方

国民が納税するためには、その前に政府が通貨を発行・支出して民間に通貨を保有させていなければならない、という主張がある。この「通貨の起源は財政赤字」説によると、政府の支出は中央銀行の自動的な通貨発行によって賄われるので、中央銀行のバランスシートの資産に政府向け信用、負債にマネタリーベースが両建てで現れることになる。 この説の真偽を確かめるには新通貨の制定・発行時を観察すればよい。その格好の事例が2011年7月にスーダンから分離独立した南スーダンである。南スーダンでは中央銀行の

MMTとチャベスの共通点

政府は「公正な社会」の実現のために、何はともあれ通貨を無制限に発行して必要な分野に支出するべし、というのが現代貨幣理論(MMT)の主張である。現行制度で放漫財政の抑制役になっている中央銀行と国債市場は政府の管理下に置かれる。副作用のインフレの恐れはあるが、財政支出だけではハイパーインフレーション(⇔財政破綻)にはならないので、何とかなるはずとのことである。 Kelton is the foremost evangelist of a fringe economic move

「税収は財源で無い」のではない

反緊縮・積極財政派がマントラのように唱える「税金は政府支出の財源ではない」だが、現行制度では事実ではない。 「税は財源ではない」は、徴税は「統合政府」が発行・支出した通貨を事後的に回収する行為という解釈から来ているが、現行制度はそのような論理構造をしていない。 【角田次長】「統合政府」は「政府紙幣」発行と同じ発想だが、政府紙幣はかつて失敗した反省がある。「通貨発行は中央銀行(日銀)が政府から独立して行うべき」というのは歴史の教訓だ。 政府の通貨調達コストがゼロだと支出の

自称貨幣論研究者シェイブテイルのアイデア盗用等について

貨幣論研究者を自称するシェイブテイル(shavetail/a.k.a. 西武輝夫)なる医薬・バイオ系の前期高齢者の男が、当noteからアイデアを盗用して書籍を出版していた疑いが判明したので、ここに証拠を揃えて告発する。 盗用・剽窃について「剽窃」の辞書的な定義は明確で、「他人の著作物や着想を自分の手柄にすること」です。 研究結果の公開にあたって,他の研究者や原著者のオリジナリティはもっとも尊重されるべきであり,他の研究者の著作者としての権利を侵害してはなりません.また盗作

「MMT」に対する高井議員のあきれた見解

国民民主党の高井議員が「MMTは理論として正しいことは認めるべきだ」と 興奮しているが、確実に理解していない。 おそらく、財務省の角田主計局次長も理解していない。 理解していなくても仕方が無いのは、MMTの教祖たちが信者を集めるために、おそらく意図的にぼかした説明をしているためである。特に日本では、ケインズ的な「国債増発→財政出動」を求める反緊縮・積極財政派がMMTに飛びついたために、本来のMMTの教えとは異なる内容がMMTだと誤解されている。高井議員が信じ込んでいるのも

反緊縮派の変なグラフを検証

1月22日に日経チャンネルでWEB配信された「日経ビジネスイノベーションフォーラム 現代貨幣理論とコロナ危機」を視聴したが、島倉原の素人レベル感が目立っていたので特に三点について取り上げる。 一点目はこのグラフで、金融は十二分に緩和している→緊縮財政こそが長期停滞(デフレ)の真の原因、という分析だが、重要な要因が考慮されていない。 「1997年、財政構造改革法&消費税5%増税」とあるが、1997年を日本経済の転換点にしたのは4月の消費税率引き上げではなく、11月に発生した

MMTがJGPを必要とする論理

について考察する。 信用貨幣である現代の法貨の価値は、不動産や物ではなく、国の将来の収入(主に税収)によって担保されているが、収入を生み出す生産要素(土地、労働、資本とそれらを結び付けるentrepreneurship)を分解して、そのうちの一要素を担保にすることも可能だと考えられる。実際、過去にはハイパーインフレーションを招いたフランスのアシニャ紙幣や、逆にハイパーインフレを終わらせたドイツのレンテンマルクなど、土地や地代を担保にした貨幣が存在した。国ではなく企業では、機

国の資金繰りと中央銀行

MMTの教祖によると、政府が中央銀行に指示して中央銀行の担当者がキーボード操作で市中銀行の口座の残高を増やすだけで、即座に十兆円でも百兆円でも財政支出が可能である。中央銀行がその場で発行したカネが支払先の取引銀行の預金口座に入金されるので、政府は支出のための資金調達を必要としない。 しかし、これは事実ではない、政府も民間企業と同様に資金繰りに苦労していることは、この特集(⇩)を読めばわかる。 補正予算を執行するには、資金調達が必要になる。 しかし、追加で国債を発行し、資