通貨の起源は財政赤字とは限らない~南スーダン・ポンドの生まれ方
国民が納税するためには、その前に政府が通貨を発行・支出して民間に通貨を保有させていなければならない、という主張がある。この「通貨の起源は財政赤字」説によると、政府の支出は中央銀行の自動的な通貨発行によって賄われるので、中央銀行のバランスシートの資産に政府向け信用、負債にマネタリーベースが両建てで現れることになる。
この説の真偽を確かめるには新通貨の制定・発行時を観察すればよい。その格好の事例が2011年7月にスーダンから分離独立した南スーダンである。南スーダンでは中央銀行の南スーダン銀行(Bank of South Sudan)が新設され、新通貨の南スーダン・ポンド(SSP)が発行された。
グラフはマネタリーベースと信用面の対応だが、2011年7月末の政府向け信用(全額が当座貸越)はマネタリーベースの4%弱に過ぎず、12月末にはゼロになっていた。マネタリーベースを裏付けていたのは主に対外資産である(←石油収入)。
南スーダンは「最初に財政赤字がなければ国民は納税できない」という説への反証になっている。
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