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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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2020年6月の記事一覧

日銀が地方債を買う必要はない

アメリカでFedが地方政府の資金繰りを助けるために、SPVを通じて新発地方債の買い入れを始めたことに刺激されて、日本の反緊縮派の一部が「日銀は地方債を買え」と騒ぎ出しているようだが、日本とアメリカでは事情が違うので、益よりも害が大きくなる可能性がある。 Under the MLF, the Federal Reserve Bank of New York will commit to lend to a special purpose vehicle (SPV) on a

日本経済に「新・ワニの口」は存在しない

朱に交われば赤くなるで、反緊縮派の安藤裕議員が反知性主義の素人レベルに劣化してきたように見える。 名目GDP=1人当たり実質GDP×GDPデフレータ×人口 なので、各項目のアメリカ/日本比率を比較すると、「新・ワニの口」に最も寄与しているのはGDPデフレータすなわち物価である。 1人当たり実質GDPには「鰐の口」は生じていない。 上のグラフではReaganomicsが始まった1981年を基準にしているが、 1980年代後半:バブル経済の日本がリード 1990年代  

MMTの新教祖のミスリードを検証する

Forbes JAPANのMMT推しが顕著になっているが、この記事も素人騙しの悪質な内容である。 ここでは、中央銀行の資金供給と政府の財政支出を混同させている。 司会者「FRBが支出に用いたのは税金だったのですか?」 バーナンキ「いえ、税金ではありません。私たちはただ、コンピューターを使って操作しただけです」 大学生たちが疑問に思ったポイントは、ここだった。景気が悪くなれば、政府が財政出動をするのは教科書通りだが、財源を確保するためには税収が必要だと思っていたのに、「コン

反緊縮派議員の粗雑な議論

反緊縮派でMMTシンパの安藤裕議員がテレビ出演していたが、ロジックが粗雑すぎる。 国債残高が増えても財政破綻しない理由を三つ挙げていたが、そのことはMMTが正しいことではなく正しくないことを補強している。 ❶MMTに基づく安藤議員の説明「国債発行は新しく通貨を発行する行為」 ❷財務省の外国格付け会社に対する反論(2002~2003年) ❸安藤議員のもう一つの説明(⇩) 日本国という経済主体は永続するので、100年後に返す、200年後に返す、極端な話、1万年後に返すでもい

MMTシンパ議員の浅い理解

須藤議員はMMTの本質を全く理解していないようである。 彼女の熱心な布教活動のおかげで、理論の核となる大前提、つまり財政赤字には何ひとつ内在的な危険がない、という主張が米国の進歩主義政治の中心的な信念となり、次第に世界中でもそうなりつつある。 Her fervent evangelism helped turn the theory’s core premise, that there is nothing inherently dangerous about fisca

低い国債金利と高い企業のROE

新型インフルエンザ等対策有識者会議「基本的対処方針等諮問委員会」の構成員に起用された財政再建論者の小林が、約1年前の記事で頓珍漢なことを言っていた。 意図してやっているわけではないだろうが、結果としては低金利のもとで政府債務が膨らみ続けている。私は、何らかのバブルによって、謎の状態が起きているのだと思う。 日銀が国債を買い続けたとしても、それを上回って民間の投資家が売れば金利は上がる(債券価格は下がる)はずだ。日銀が全部買って市場から国債がなくなったとすれば、今度は貨幣の価

アダム・スミスと現代貨幣の基盤

ネットde真実系の素人MMT信者にありがちな信用貨幣論に関する誤解が、金兌換の停止(最終的には1971年のニクソン・ショック)によって、現代の中央銀行は通貨の発行に際して経済的価値の裏付けを必要としなくなったというものである。MMTerの表現では、中央銀行が通貨を発行するにあたって必要なのはコンピュータに数字を打ち込む「キーストローク」だけで、通貨は無から創造される。 しかし、これは現行制度においては事実ではない。MMT信者はアダム・スミスの時代の重商主義者と同様の、「富(

MMTと極左

アメリカで左右の過激派が暴れているようなので、この機会に昨年の記事で取り上げたMMTと極左の関係について再確認する。 ミッチェルはanti-fascismを掲げる学生団体の「ファシストに協力した」との批判はナンセンスと否定したものの、progressiveの一員として、南京大虐殺や慰安婦(=性奴隷)を否定する歴史修正主義者との関係を断つと宣言していた。 The allegations are that the Professor who invited Stephanie

コロナ大不況と1937年のアメリカの景気後退~我流MMTと本家MMT

また中野剛志が我流MMTを宣伝するために牽強付会な文章を書いている。 ルーズヴェルト政権は、景気回復の道半ばにもかかわらず、政府債務の累積に恐れをなし、1936年から1938年にかけて、財政支出を削減してしまった。その結果、1937年から1938年にかけて、史上最も急速な景気後退を引き起こし、失業率は再び跳ね上がってしまった。 「史上最も急速な景気後退」は印象操作で、1920年と1929年よりは軽度だった。「最も急速」は"worst"の意味ではないと言い逃れするつもりなの