MMTの新教祖のミスリードを検証する

Forbes JAPANのMMT推しが顕著になっているが、この記事も素人騙しの悪質な内容である。

ここでは、中央銀行の資金供給と政府の財政支出を混同させている。

司会者「FRBが支出に用いたのは税金だったのですか?」
バーナンキ「いえ、税金ではありません。私たちはただ、コンピューターを使って操作しただけです」
大学生たちが疑問に思ったポイントは、ここだった。景気が悪くなれば、政府が財政出動をするのは教科書通りだが、財源を確保するためには税収が必要だと思っていたのに、「コンピューターを操作しただけ」とバーナンキが答えた意味がわからなかったという。

中央銀行の資金供給は、中央銀行が信用創造したマネーを流通市場の国債等と交換または担保に貸し出すもので、流動性の低い資産を決済に用いられる流動性の高い資産(中銀マネー)と交換する意味がある。

We print it digitally. So as a central bank, we have the ability to create money digitally. And we do that by buying Treasury Bills or bonds for other government guaranteed securities.

政府の財政支出は、政府が事前に民間から徴税または借入によって調達していたマネーを支出するもので、政府はマネーを信用創造していない。コンピューターの操作とは、政府預金を支払先の取引銀行の当座預金口座に移すもので、個人の銀行経由の支払いと同じことである。

これ(⇩)の誤りは、中央銀行券は国債等の価値あるものを裏付け資産としており、単なる紙切れではないことである。

たとえば、1万円札は原価が20円程度の紙だが、なぜそれに1万円の価値を見出せるのか。昔のように同額の金(ゴールド)と引き換えてくれるわけでもない。
価値を見出している理由の1つは、日本円というお金を税金の支払いに使えるということだろう。私たち日本人が生活する日本において、税金は日本円を使って支払うことができる。つまり、日本円は日本政府が額面で受け取ってくれる。だから日本人は日本円に対して信用をしているのだ。
このように考えると、税金の存在理由が財源ではなく、ただの紙をお金として流通させるためにあると考えることができるだろう。

政府が現金での納税を強制することは、国民が現金を利用する一つの理由ではあるが、根本的には貨幣の三機能の一つの「価値の保存」が実現しているからである。2000年前後のジンバブエのように、現金の価値がどんどん損なわれていく状況では、現金での納税を強制しても国民は現金から逃避してしまう。

現代のマネーは債券や株券と同じく紙やデータなので、ゲーテの『ファウスト』第二部でメフィストフェレスがやったように、確かな裏付け資産を欠いても発行は可能であり、政府支出の財源としての税は不要になる。「造幣→支出→徴税」のサイクルになる。

しかし、そのような税を財源としない仕組みでは、放漫財政→悪性インフレを招く危険性が極めて高いことが歴史の教訓として得られているため、金銀の時代のように税を財源とする仕組みが世界標準として定着している。

MMTの信者はMMTを「マネーの本質を明らかにした最先端の理論」と思い込んでいるようだが、そうではなく、とっくの昔に「使えない」ことが実証されて放棄されている。MMTの「税は財源ではない」とは周回遅れの議論なのである。反知性主義のMMT信者には、現行制度の仕組みと歴史的経緯について学ぶことをお勧めする。

学生の読者には何が正しい、間違っているとすぐに結論を出そうとするのではなく、いま大学で習っている経済学もMMTも1度学んでみて、さまざまな視点を持つことをお勧めしたい。

森永もMMTで一稼ぎするつもりなのかもしれないが、誤った知識を広めるのは止めてもらいたい。

さらに詳しくは下の記事を参照。


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