MMTシンパ議員の浅い理解

須藤議員はMMTの本質を全く理解していないようである。

彼女の熱心な布教活動のおかげで、理論の核となる大前提、つまり財政赤字には何ひとつ内在的な危険がない、という主張が米国の進歩主義政治の中心的な信念となり、次第に世界中でもそうなりつつある。
Her fervent evangelism helped turn the theory’s core premise, that there is nothing inherently dangerous about fiscal deficits, into a central belief of progressive politics in the United States and increasingly around the world.

現行制度では、政府の借入ルートは「民間から市場経由」に限定されているが、これにはインフレリスクを反映した市場金利での調達にすることで、放漫財政→悪性インフレ(インフレ税の増税)を防ぐ意味がある。市場が政府に財政規律を守らせる役割を果たしているわけである。

一方、MMTでは、政府は従属した中央銀行から随意にゼロ金利で資金調達して財政支出に充てる。政府は「打ち出の小槌」を手に入れたようなもので、市場金利による制約から解放される。

政府を市場メカニズムから解放すると共に中央銀行の独立性を剥奪して「マネー権力」を独占させるというのがMMTの根本的な主張であり、社会主義の権力集中制に通じる(日本では国家社会主義的右派がMMTを担ぐ理由でもある)。MMTの目標が「Job Guarantee Programによる失業ゼロ社会の実現」であることや、通貨の裏付けが「労働」であることにもマルクス主義の影響が見て取れる。

就業保証の提案をMMTアプローチに含めることについては、議論が分かれている。MMTは純粋に説明的であるべきで、いかなる政策も推奨するべきではないと主張する者もいれば、就業保証プログラムは最初からMMTの一部だと主張する者もいる。
我々は20年前にMMTアプローチを展開し始めたが、最初から就業保証プログラムを取り入れていたので、実のところは後者が正しい。我々はさらに、主権通貨には「土台」が必要であり、就業保証プログラムにおける基準賃金の設定によって、プログラム自体がその土台となると考えている。
就業保証プログラムは、通貨を「裏づける」1オンスの金よりもずっと有効な土台であると我々は考えている。労働力はあらゆる財・サービスの生産に投入されるので、労働力の緩衝在庫は金の緩衝在庫よりも経済を安定させるのに有効である。

MMTは単なる「財政赤字には何ひとつ内在的な危険がない、という主張」ではなく、マルクス主義→新左翼→progressiveの系譜の思想なので「進歩主義政治の中心的な信念」になっているのである。

この投票行動からもわかるように、多くのアメリカ人の若者たちは急進化しており、「社会主義」の方がいいと考えるようになっている。彼らこそ、「ジェネレーション・レフト」にふさわしい。多額のローンを背負って大学に行き、その後の雇用も安定せず、医療費なども膨大な格差社会に住むことに、若者たちが疑問を抱くようになっている。そしてなにより、気候変動が深刻化するなかで、若い世代は、資本主義の無限の利潤追求を問題視するようになり、別の社会システムへの大転換を要求するようになっているのである。

外来思想の本質を理解せずに安易に飛びつくことは禁物である。


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