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みんな、好きなことをやろうや

某月某日、知らない高校生からメールを貰った。
こういうのは、嬉しいなあ。
それにしても、日本からの頭脳流出が増えていく実感がある。でもその子にとって、そして科学全体にとっては良いこと。
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吉森先生へ

初めまして。
8月1日に「オートファジーって何?」のイベントをオンラインで参加させてもらった〇〇○○と申します。今年の6月に〇〇〇〇を卒業しました。大学の生物学を探していた時に、阪大のウエブサイトを拝見しこのイベントに参加しました。オートファジーの研究には前から興味を持っていて、先生のイベントから沢山の事を学ぶことが出来ました。

特に、先生方が研究を始めた時には世界に役立つのか知らなく、それにも関わらず研究を続け、オートファジーの研究がノーベル賞を受賞した事が印象に残りました。

私自身、大学卒業後の進路を考えた時に生物学が果たして役に立つ学問かと言う点で悩んだ時期がありました。しかし、やはり自分の好きなことを勉強したいと考えた結果、やはり大学では生物学を学ぶことにしました。私は今月から、イギリスのKing's College London へ入学しBiomedical Scienceを勉強します。

これから大学の勉強を頑張って、いつか先生方の研究をお手伝いできるのを目指し勉強してきます。
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私の返事
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〇〇○○さん、

私の講演を聴いてくれてありがとう。
イギリスで生命科学を勉強されるとのこと、素晴らしい!
King's College Londonの生命科学はとてもレベルが高いです。頑張ってください。そして、世界を舞台に研究して下さい。
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某月某日、バスケと読書が好きな奈良の高校Ⅰ年生(上記メールの子とは別の子だ)が、私にインタビューしたいとひとりで訪ねてきた。

あるNPOが三菱みらい育成財団の支援を受けて行っている「高校生が会いたいと思う社会人に自分でアポイントメントを取って、話を聞きに行く」という面白いプロジェクトに応募したらしい。

MidVillage君というその生徒は、中学生のときに私の著書「ライフサイエンス」を読んで感銘を受け、私に会ってみたいと思っていたのだそうだ。

質問したいことを一生懸命考えてきたようで、びっしり質問事項が書かれた紙を片手に、最初は緊張していたが徐々にそれもほぐれ、私の話を身を乗り出して聞いてくれた。

研究内容と言うより、私の考え方などが聞きたかったようだが、哲学と生命科学の違いはなにかといったとても興味深い質問もあって、私もやりとりを随分楽しんだ。

彼は生命科学への関心が高く、独自に本を読むなどしてかなり理解しており何度も驚かされる場面があった。

彼にも言ったのだが、同じ年に生まれた人間が一斉にトコロテン式に小中高大と進んでいくシステムってみんなそれが当たり前だと思っているが、別に必然性はないと思う。

中学を出ていないと高校で習うことを知っちゃいけないことはないし、大学を出ていないと研究できないということもない。

ひとりひとりがそのときに興味のあることを掘り下げれば良い。順番は関係ない。ましてや上の学校に行くことが、知識の蓄積でしか無いならなおさら。知識はAIに聞けばいい。

この私の持論が正しいことを、MidVillage君と話していても感じる。みんな、好きなことをやろうや。年齢なんか関係ない。

いつものごとく私の話があっちこっちに飛ぶので2時間もかかってしまったインタビューを彼がどうレポートにまとめるのか、が楽しみだ。

そういえば、彼が自分は多趣味でかつ飽きっぽいのが悩みだと言っていたが、私も同じ、それで全然オッケーだと言っておいた。

その道一筋も確かに素晴らしいが、日本ではそれが美化され過ぎだと思う。

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