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発達障がいとは何なのか?原因は脳?それとも毒親?

作業療法士の中野です。
実に1年半ぶりになる先日のエントリー『発達障がいを持つ子どもと家族に対してエビデンスベースの実践なんて殆ど無理ゲー』に対して多くの反響を頂き感謝しております。

さて、本日はその続編とも言える内容を書きたいと思います。
発達障がいというのは脳機能障がいであり、しつけの問題ではないというのが一般的な話の流れです。
特に高齢でこういう情報に疎い層は「あなたの躾がなっていなから…(この子が言うこと聞かないのよ…)」的なことを悪気があって言ったりします。
僕が訪問している利用者さんの中には、「先生、最近私病気っていうことにしてんねん!」とおっしゃる方がいらっしゃいます。
「旦那の両親が…」的な理由で病気だから仕方ないって思ってもらう為にそういう理由にしているのだと。
こういう事実が結構相次いだことによって発達障がいは脳機能障がいであるとうことになっているのではないの?なんて意見もありますよね。

もちろん、実際に原因は分からないものの(個人的には胎児期にエコーで分からないレベルの小さな出血なんかが原因ではないかと思っているが)脳機能(構造)障がいに起因する発達障がいもあります。

加藤先生が、立派な方なのかどうかは知らないがこういう意見が発達障がいは脳機能(構造)障害に起因するという意見。

加藤先生のこの本は読んだけど分かりやすいのは分かりやすかったという印象。内容はあんまり覚えてないからもう一回読むことにします。
また、ゲルストマン症候群なんかはそもそも高次脳機能障がいとして知られていますが、子どもにも存在し、彼らは学習障がい的な症状を呈します。こういうケースはきっと脳機能(構造)の障がいなのではなかろうかと推察します。

参考文献:発達性ゲルストマン症候群の一例

さて、脳機能(構造)障害だけが、発達障がいの原因なのであれば、所謂脳トレにて再教育すれば『治る』と言えます。
障がいを受けた脳機能を別部位で代償することだったり、血流を回復することだったりで(完全には無理でも)治療可能であるのが脳機能障がいだと僕は捉えています。

でも、そうそう簡単に子どもたちは変わってくれません。ま、そんな簡単に変わってくれたら世の中にはびこるニセ医学による発達障がい関連商材や治療はなくなるし、僕がそんなことできるなら世界中飛び回っているはずです。笑

発達障がいとはそもそも何なのか?

そもそも発達障がいというのはどういうものなのでしょうか。
DSM5では「広汎性発達障害」という診断は無くなり、「自閉スペクトラム症」という診断名で一括りとなりました。
「スペクトラム」とは連続体というような意味合いがあり、つまり正常と異常の明確な差異はなくグラデーションのように濃く現れているか、薄くしか現れていないかの違いだとされています。
自閉症色がメチャメチャ濃いお子さんは人と目を合わせないだったり、社会のルールが守れないだったり、独語やこだわりが強いなどの症状が一般人から見ても如実に分かったりします。地下鉄で運転席にへばりついて大きな声で独り言言っている人に出会ったことがある人も多いかもしれないが、そういう人たちは自閉症色が濃いかもしれない。
逆に普通に話してて「ん?」って思うことはあるものの特段「自分との違い」を感じない人たちは自閉症色が薄いのだろう。

ちなみに私はADHD色が強めだし、私の経営者仲間の大半はADHD色が強い。研究者の友人は自閉症色が強めな気がする。将棋で有名な高校生の彼なんかも自閉症色強めだと思う。

ここでお伝えしたいのは、自閉症色が強かろうが薄かろうが、私のようにADHD色が強かろうが薄かろうが、それらがそのまま「障がい」に結びつくわけではないということです。

この文章を読んでくださっているあなたは、私のことを障害者だと思うでしょうか。私が精神科を受診すれば診断が付き、障害者手帳を取得することはできるでしょうか。
もちろん、病気のフリをすれば診断もつくし、薬も処方されるし、おいおい手帳も取得できるでしょうが、ありのままを伝えたところで何しに来たんですか?と言われます。

つまり、診断がつく、つかない、手帳が発行される、されないについては自閉症色の強さ、薄さではなく『生活に困っているかどうか』なのです。
自閉症色が強ければ強いほど、生活に困っていなくても診断はつくし手帳も発行されるでしょうが、それも結局は生活に困っているフリをしているだけの話なので本当に困っていなければ(当然受診しないわけなので)診断はつきません。
というわけで僕には診断がつかないわけです。生活に困っていませんし、困っていないから当然受診することもないからです。

では、発達障がいと言われる子たちは生活に困っているのでしょうか。
全国的な調査をしたことがないので分かりませんが、少なくとも僕が関わっている発達障がいと言われる子どもたちの大半(8割くらい)は生活に困っていません。
また、施設支援で関わっている児童発達支援事業所や放課後等デイサービスに通ってきている子ども達の大半(8割くらい)は生活に困っていません。

そんな子どもたちに様々な診断名がつくのはなぜでしょうか?
答えは簡単で親や周囲が困っているからです。
うまくしつけられていないケース、子どもとの上下関係(立場)が完全に逆転しているケース、そもそも子育てしていないが故に周囲(先生や行政など)が困っているケースなどなど理由は様々でしょうが、困っている人の大半は親です。

さて、ここで問題になるのが『親が困っている原因』です。
その原因は子どもがASDだから?あるいはADHDだから?なのか、親の子育て力の問題なのか?その両方か?は非常にデリケートな問題で、数分間面談したところで判断しきれない問題です。

親が子どもに困る2つの原因

上述の通り、発達障がいとは本人又は周囲が困っていて初めて発達障がいと診断されます。
言葉が遅い(けどコミュニケーションは取れている)とか、つま先立ちで歩く(けど、歩行スピードに問題はない)とか、こだわりが強い(けど、パニックなどは起こさない)…
この程度であれば、『疑い』とされるケースが多いかと思います。所謂グレーゾーンってやつです。
発達に不安を抱えて受診する方の多くは子どもの身体面・言語面・情緒面を気にして受診されるケースが多いかと思います。つまり、受診のきっかけは定型発達から外れていることが原因なのだと考えられます。
例えば、0歳児を持つ親が「うちの子、言葉が出ず、コミュニケーションが取れなくて困ってます。毎日泣いてばかりで…」なんて言われても先生は返す言葉に困ります。
が、0歳児ではなく2歳児であればグレーゾーン、3歳児で全く言葉が出ないとするなら恐らくASDという診断がつくでしょう。

そこで、仮に3歳で言葉が全く出なかったとしましょう。
この子は困っているでしょうか。答えは分かりません。だって喋ってくれません。不快な思いをしているかもしれないという気持ちは通じる可能性はありますが、それが一般的な3歳児が抱えている不快感とどちらが大きいか?なんて判断できません。
結局は困っているのは、その子を育てなければならない親なのです。

こういう事を考えると、私は発達障がいは『①親(や先生)の子育て(教育)障がい』だったり、あるいは『②過度の不安』から起こるものではないのかなぁと思うわけです。

上のケースのような場合であれば、恐らく子どもにASD的な特徴がありますし、だから故に子育てしにくいかもしれません(もちろん、そんな事気にせずおおらかに子育てされている方も実際にいらっしゃいます)。
ですが、親の主訴として以下のようなものもあります。

・何度言っても言うこと聞かない。
・爪噛みが直らない。
・よく迷子になる。
・指示が通らない。
・思い通りにならないと泣きわめいて収集がつかない。
・暴力をふるう。

これらは、非定型発達に起因するものの可能性もありますし、しつけの問題である可能性もあります。
しかし、現象は同じ。精神科医はどこをどう判断しているのでしょうか。人によるでしょうし、私には答えは想像できません。

・何度言っても言うことをきかない。
→子どもってそういうものですし、そもそも伝えただけでなく伝わったかを確認しましたか?

・爪噛みが直らない。
→ぶっちゃけ、それで困ることありますか?爪噛みが原因で異性にモテナイと気づいたら直る気がするのですが…。

・よく迷子になる。
→大草原でも迷子になりますか?そもそも迷子になりやすい環境に住んでませんか?(外出していませんか)ちなみに私も迷子の常習犯でした…。

・指示が通らない。
→そもそも、伝わったことを確認しましたか。仮に一度で通る魔法のような指示はありませんから、100回指示しても通じない場合、それは子どもの問題ではなく指示に問題があると思われます。

・思い通りにならないと泣きわめいて収集がつかない。
→お子さんが中学生になってもなお、そうであれば何かしらの問題はあります。が、小学生低学年くらいなら普通にありますし、高学年でも場合によってはあります。

・暴力をふるう。
→問題解決の手段として暴力をふるうということを学んだのだと考えられます。誰が教えたのでしょうか…。

色々書きましたが、要するに親側にも問題のある可能性があって、しつけの方法や過度に心配しすぎ(あるいは期待しすぎ)が原因であることもあるということです。

子育て困難感や過度の不安を生む理由とは?

じゃあ、何故子育て(教育)が上手く行かなかったり過度の不安に陥ったりするのでしょう。
この原因は何も子育てや教育に限ったことではないかと思いますが、私達が住む社会における情報量があまりに増えすぎた事ではないでしょうか。
また、これに加えて子育てや教育に関する正しい知識を義務教育(に限りませんが親になるまでに)できちんと習わないからとも言えます。

私達の子育ての参照枠は基本的に自分が提供された子育て、つまり我が親の子育て方法がベースにあります。
親である自分たちの呼称(お父さんと言わせるか、パパと言わせるか)からお小遣いの額や怒りのポイントなどまで、私達は意識的にだけではなく、無意識的に親から受けた子育てをベースとします。それは、仮に自分が親を恨んでいたとしても、この部分は反面教師として見習おうと思っていたとしてもそうなりがちです。子育てについての参照枠がないというのはそれくらい大きなことです。
子育てに対して、ベースとなる考えがないものだから、それをどうにかしたいと思う人は親になってからか、早くても親になる直前に学び始めます。

しかし、アマゾンで子育てと書籍を検索すると2万点以上がヒットします。この中で本当に指標となる書籍がどれだけあるでしょうか。
余談ですが、この前3冊ほど良さそうな子育て関連本を買いましたが、良かったのは1冊の内の一部でした。
でもアマゾンで検索すればまだ良い方で、多くの方はGoogle検索します。Googleで子育てと検索すると1億件以上がヒットします。もちろん、行政等のお知らせなどもヒットしますから、全て子育てのアドバイスが書かれているわけではありませんが、その中から本当に良い子育て法を学び取れるでしょうか。
ぶっちゃけ、相当検索エンジンを使い慣れていて、情報の取捨選択ができる人じゃないと難しいです。

算数で解ける問題であれば、私達はそう簡単に騙されません。何故なら算数は義務教育で習っていますし、答えは限定されているからです。
しかし、子育てのように概念が曖昧で、また何が正解かは社会情勢や環境によっても変わることに対して答えなど限定できません。
そんな中でもより良い方法を探そうとして、上手い表現をしているタイトルや甘い言葉に騙されたりもします。

結果…、よかれと思ってやっている親としての行動が子どもにとって最悪の行動になっている可能性も無きにしもあらず…ということです。

非定型発達は脳機能(構造)の問題で出現します。しかし、親や周囲の蜜に関わる人間の関わりによっても出現します。
一般的には先天的問題とされる発達障がいですが、後天的問題によっても起こりうるものであることは否定できません。
日常的な身体的虐待(暴力)や性的虐待は犯罪なので論外ですし、ネグレクトも個人的にはNGですが、心理的虐待だけは意図せず起こっている場合があります。
親が良かれと思って関わっているケースや、子どもの捉え方の問題(例えば脳機能的に軽度の非定型発達がある場合で、日本人的奥ゆかしい伝え方が伝わりにくい場合等)で結果的心理的虐待が起こっているケースが多々あるということです。その辺については以下の書籍を参考にして頂けると良いかと。

変な情報を参考にして、子ども対しトンチンカンな関わりをしてしまう。ニセ医学情報を鵜呑みにして子どもに対して過度の不安を持ってしまう。
情報量が多く、また判断基準があいまいな情報を取捨選択することが難しいが為に起こってしまう弊害なのだと思います。

そして、受診しASDなりADHDなりと診断を受け、一種の安心を覚えます。答えが分かったことによる安心です。「あー、だからこの子はそうなのか」と子どもの病気のせいにして、親である自分が原因である可能性を考えなくなります。
結果、子どもとの関係がギクシャクし、中学を卒業する頃には目も合わせてくれない(という程度で済んでくれれば良いのですが)なんてことになります。

おわりに

発達障がい、いえ、今回の話の流れから非定型発達という表現に変えます。
非定型発達は脳機能、構造の問題で生じます。もちろん、それ以外の後天的な理由でも生じます。
極端な例ですが、生まれてから一定の温度で無味無臭無音の真っ白な部屋で過ごしたら非定型発達になるどころか早死すること位想像がつきますよね?それくらい環境要因というのは人の生活に影響を与えます。
子どもにとって一番身近で一番影響を受ける環境が親です。

仮に脳機能の問題から非定型発達をしている子どもであっても、障がいを持たず(生涯に渡って大きな困り感を抱えず)生きていく人も居ます。
私のように。
私の親が超絶素晴らしい子育てをしてくれていたかは分かりませんが、山あり、谷ありの人生の中でアラフォーに突入した現在でも深い愛で見守ってくれていることは感じています。
そんな風に感じている時点で恐らく仮に正解の子育てをしていたのかは不明ですが、不正解ではなかったんだろうなと思います。

上で紹介した本にあるように、適切な愛着形成をするのは以外と難しいですから、本当にありがたいなぁと思います。

そして私自身、我が子に対して極力適切な子育てができるようにと考え、より適切だろうと思われる情報を得る努力をしています。
最近では科学的に分かってきていることも多くありますし、エビデンスもあります。臨床ではそういう事を元にペアレンティングも実践しています。

もしこのエントリーをお読みになられたあなたが親であるなら、あるいは今後親になることを望んでおられるなら、適切な情報を得る努力をしてください。
そして、(気持ちは分かるのですが…)誰彼構わず相談して、悩みを増やすのも止めてください。信頼できる相談先を数箇所に絞り、個人の体験談はそんなこともあるのかぁ…程度にとどめておいて下さい。
絶対的黄金法則のようなものは存在しません。だから、多くの親が育児に悩みます。
ですから、子どもの様子を深く伺い、今子どもが欲している事が何で、そのために自分は何ができるか?を考えて下さい。
私は臨床以外でもメール等で可能な範囲で育児に関する相談はお受けしています(メールの受信を忘れていなければ返信する程度ですが…苦笑)が、仮に私からの返信があっても全てを鵜呑みにしないで下さい。笑
メール等で読み取れる事には限界があり、相談者さんの状況を正しく把握できているとは限りませんので。(もちろん、そういう状況であるという事を伝えた上で回答しておりますが…。)

長くなりましたが、今日はこの辺で。

I'm Occupatipnal Therapist for children with disorder. I like all children. I hope save the children. I try to write for save the children.