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発達障がいを持つ子どもと家族に対してエビデンスベースの実践なんて殆ど無理ゲー

作業療法士の中野です。
noteでは最初の記事なんだけど、「お手上げ療法士予防派」というブログを読んで下さっていた方はお久しぶりです。
かれこれ1年半もWEB上で文章を書いておりませんでした。
一応曲がりなりにも経営者でして、新規事業として2016年10月に立ち上げた訪問看護ステーションが1ヶ月でスタッフにやめられ2017年4月に再スタート。
そこから1年半馬車馬のように働き、今もほぼほぼ馬車馬のように働いているのだけれど、少しだけ情報発信したい欲求が出てきてnoteで再開することにしました。
表現は以前のブログより落ち着いていると思います。前のは権威性を持たせるという作戦?によりあえてどぎつい表現をしていたので。

さて、この1年半、僕は訪問作業療法を中心にめちゃくちゃ働きました。自らの実践を振り返る暇もなく、記録をまともに書く暇もなく…
そして、約1年関わってきたある家族への関わりが本当に難しく、かと言って適切なアドバイスを周囲の支援者からもらえるわけでもなく、悶々とした日々を過ごしているので、この文章を機に色んな人からアドバイスをもらえたら丁度良いと思い、書き始めることにしました。

発達障がいを持つ子どもと家族の為の作業療法って?

発達障がいを持つ子どもに対する作業療法ってどんなイメージがありますか?
感覚統合や手先の不器用さに対する対応、SSTなんかが主なイメージなんじゃないかなぁと思います。

この本のイメージかな。学校で習ったのもこんな感じだった。教科書にしても良いんじゃない?って思う。さすが辛島先生。

教科書と現実は違いすぎる!

最初から全否定して申し訳ないのだけど、現実はこの本に書かれているような作業療法は全く展開できない。
高3で大学受験を目指しているような子に感覚統合のセッションなんてありえないのは当然ご理解頂けるのだけど、SSTで対人スキルを上げるとか、家族関係を良くするとか、そんなもん無理ゲーなんですよ。
いや、それが最重要課題であるなら全く問題なく提供できるんだけど、中学生以上ともなってくると、もうこじれててこじれててそんな事課題に挙がってこないんですよ。

そんな中極めつけのケースがあるので、紹介したいと思います。是非アドバイスください。

母一人子二人の3人家族。母は気分障害と診断されてるけど、僕の所見はボーダーライン。兄(高3)、妹(高2)ともにASDという診断。離婚し、別居している父もASDと診断されている。
このプロフィールだけでも感じて頂けると思うけど、子ども達二人を障害者たらしめているのは母。

詳細を書くと身元がバレちゃうのであまり書けないけど、こういう感じ。3人共うちの利用者さんです。
家族関係は破綻していて、当初母と兄のコミュニケーションは殆どなく、僕を介して意思の疎通をする感じだった。妹と母は会話はあるものの、妹は母のことが大嫌いで家にいるだけどストレスを感じるという状況。

数年前、兄が自宅で暴れ警察を呼ぶ騒動があったが、その後僕が母と兄の間に入ったこともあり最近までは比較的落ち着いて過ごせていたのだけれど、受験のことや学校の卒業が危ういという状況、妹もテストやら何やらでピリピリしていたことが相俟って、再び兄が妹に暴力を振るった。その後家庭内別居状態。
母と話していると息子と娘への要望を聞くだけで1時間が終わる。こーやってほしい、あーやってほしい、〇〇は全くしてくれない、やるって言ったのに全くしないetc...
完全なる支援依存症で、モンスターペイシャント且つモンスターペアレントである。
特に妹は母のモンスターっぷりに嫌気が指していて、それもストレスになっている。

こんな家族に作業療法士ができることってなんだろう…

感覚統合して何とかなる問題じゃないし、子どもたち二人は対人スキルは決して低くない。僕に対する態度は普通。
もちろん行動面に問題は抱えているが、指示を適切に出したり負荷を調整してあげれば何とかなるレベル。
だから、僕の(母には内緒だけど)子どもたちと共有している目標は一人暮らしする事。
もちろん能力的に足りない部分はある。だけど、今のまま同居生活を続けても誰にとってもハッピーがやってくるとは思えないし、僕の介入でこんな状況を打破できるとも思えない。
足りない能力はヘルパーさんに助けてもらえば良い。金銭的に困るなら一時的にでも生活保護を受ければ良い。そうまでしてでも一人暮らしした方がハッピーだと思う。

精神科領域で働かれている方ならご存知かと思うがボーダーラインの患者さんに行動変容を求めるのは非常に骨が折れる。
このケースにおいて一番変わるべきは母。でも、それが簡単にはいかない以上、離れるのが一番だと感じている。
そして、彼らが一人暮らしする大義名分は離れた土地への進学。僕はそれを支援する為、兄に対しては受験勉強の管理やそもそも学校を卒業するための管理をやっている。
妹は勉強はそれなりにできるんだけど、ストレスがたまり過ぎると保健室登校になりがちで出席日数が足りなくなるから、登校状況の管理とストレスマネジメントをやっている。

母に関しては…関係各所との調整かな…。
良きか悪きか、母は恐らく僕に(というかうちの事業所に)切られるのを恐れている節があり、僕に対しての文句はあまり言わないし、気を使っている様子もある。でもその分他機関、他職種への文句がひどいこどひどいこと。
常に何かを期待して、粗探しして、文句を言う。決してその文句が状況を改善させるわけではないのにも関わらず。毎回ため息が出るレベル。

こんな目標や関わりが正しいか分からないけど、たまたまで良いから何とか少なくとも子どもたちを家から出すことに成功すれば何か変わるんじゃなかろうかと期待している…。

こんなケースにエビデンスなんてない…

さて、こんな悩みを抱えている僕だけど、Pubmedで何て検索すれば良いの?
無理でしょ!気持ちが高ぶって昨日やさぐれたTweetをしたら山田先生から心温かい言葉を頂戴した。感謝です。

確かに、日々頭めっちゃ回転してるんですよ。特にこのお宅に訪問する日は。苦笑
で、ググってたら面白い内容を見つけた。

リスクベースドメディシンって初めて聞いたけど、なるほどって思った。
作業療法士として、患者さんと対峙する時に一番考えないといけないことがリスクマネジメントだと昔の上司からキツく教わった。

今回のケースのようにエビデンスなどなく、誰からのアドバイスもない。医師からの指示書なんて始まって以来内容も変わっていない。
自分を頼りに関わっているわけだけど、そのような場合、一番考えないといけないことが『今より悪い状況にしないこと』だと思った。

今より悪い状況にしない関わりの末に…

今後、この家族がどうなるか全く想像がつかない。エビデンスがない以上、予後予測なんてできないわけで。
でも、今より悪い状況にしない為の関わりを通じて、何かちょっとでもハッピーになれて、一つの(レアかもしれないけど…)ケースとして、仮説を生成するに至ればなぁと思っています。

今やっている事は作業療法なのか分からない。
この家族に健康と幸福をもたらす作業とは何か?を常に考えているが、それを提供できているか分からない。
いや、何なら僕が提供しているサービスが作業療法でなくても良いからこのご家族が今より少しでもハッピーに暮らせるようになれば良いなぁと心から思って応援しています。

P.S…
こういうケースと関わっていたら対利用者とも対他職種とも信念対立の嵐なので、京極先生に助けを求めた方が良さそうです。


I'm Occupatipnal Therapist for children with disorder. I like all children. I hope save the children. I try to write for save the children.