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マーケティング部のマネジメントとして転職した時に、最初にすべきことは、見える化。KPI設定はあなたにしかできないアート。

転職や出資している企業への出向等で、新しい組織にマネジメント層としてジョインする場合、何をすべきか。最近、知人にこんな相談をされることがあり、短期間での成果の定義や、システム導入ステップ、また、マーケティング責任者としての気構えについてどのように考えるべき等を話す機会があった。

経営層とか事業責任者といった立場ではなく、あくまで「マーケティング」「デジタル」の責任者という専門職の立場で何をすべきか、自分なりに経験し、苦労もしてきたので、マーケターのはしくれとして、せっかくなので、ノートでもメモしておきたいと思う。

新規で入り込む組織のレベルにもよるが、まず最初に確実にやるべきは「見える化」であることは間違いないと思う。KPIの見える化。マーケティングチームのミッションと、その成果を説明するKPIとレポーティング、またそれを押し上げ続ける施策の確認。こう言うと、とても簡単なことに聞こえると思うが、これが結構、知見が必要で、手間がかかり、政治的で、悩ましいところだと思う。それは、何を隠そう、大概の組織はあなたが求める数字の提供と、動きをしてくれないからである。数字はそこら中にバラバラで、統合・整理されていない。部署やチームを跨ぐものについては、別々で管理していて、その関係性も定義されていない。ある部署ではデータは必要ないと言い、とある部署では、データを細かくとっているがあまり事業にインパクトがなかったり、あるいは、ただただ明らかな非協力な姿勢をとられたり。。。

世の中には、KPIについて書かれた書籍はあるし、マーケティングのフレームワークも勉強すれば理解しやすいものだし、最近はデジタルツールで、GAやHubspotとかでも簡単にレポートを自動化してくれるはずである。

それなのに、なぜあなたが入った企業では、あなたが欲しいデータが見つからず、部下がやっていることが理解できず、見える化の課題にぶつかるのだろうか。

それは、KPIレポートはアートだからだと思う。同じように見えるが実はどこでも同じものではない。単純に、過去の蓄積や、データの格納場所、システム、人のスキル等が違う、ということもあるが、もっと大きな理由は、レポートは単に眺めればよいのではなく、それを見て、課題を抽出し、翌週には行動によって変化をおこせるものでないと意味がないからである。
「変化を起こすレポート」を目指すと、組織や担当者のレベルやリソースによってコントローラブル度合いがかわってくる。レポート・KPIを組み立てる必要があるから、会社によってそれが異なってくるのである。

きれいで見やすいKPI・レポートを設定する以上に、それを見て、最終目的につながる行動を喚起できるレポートでないと意味がない。逆に、それを構築できれば、運用体制を構築でき、毎週レポートを見るたびに意味のある数字が改善していく状態を確立できた、ということになる。(やや言い過ぎだけど)

数字をベースにコミュニケーション・ディスカッションできることは大事なことは言うまでもないが、それがビジネスゴールに直結する数字について現場でティスカッションできることはものすごく組織を強くするし、自分が組織をリードする際に、最も大事な環境の一つだと思う。(FYI:映画マネーボールの「本当は選手ではなく、"勝利"を買うべきだ」というゴール設定を明確にする名言がただただ好きです。。)

マーケティング部門のマネジメント層として新しい会社に入ったら、最初にこの「見える化」を死ぬ気でやるべきだと思う。自分の経験ではこれはかなり地道な作業である。たとえ、現場の反発にあったり、データ抽出に膨大な時間がかかる状況であろうと、やりきるべきだと思うし、しかも3か月以上時間をかけたらだめだと思う。時間がたてばたつほど、そもそもこの重要性に腹落ちしていない現場からは、この新任の責任者はわかってないなぁと思われるし、お互いの信頼を失っていく、悪循環を生み出すきっかけになってしまう。マーケティングの新任マネージャーは、現場でやっていることは大抵正しいという前提で、ただ正しい数字をベースに議論し、成果とチーム力を高めていかないといけない。

以下は、やるべきステップのイメージ。

1.数字・データ・レポートを洗い出す。各担当者のアクションとは別に、何の数字を軸に仕事をしているのか把握する。嫌がられても、めんどくさくても何とか出す!出してもらう。教えてもらう。

2.会社全体のビジネスゴールとマーケティングチームのゴールの関係性を確認する。
例えば、私が外資系自動車会社でトラッキングしていたマーケティングのゴールは以下。
a)CS関連のスコア(D2Cとリテールの顧客満足度関連データ)、b)ブランドスコア(ブランディングのポジションやランキング等のデータ)、c)新規受注データ(リードや新規受注等)。この3つを柱として、ヨーロッパ本社の各部署にレポートしていた

3.マーケティングチームの各アクティビティのKPIの設定。
2のスコアに関連する中間KPIを特定する。
例えば、広告、WEBサイト、SNS、新規リード、継続率、属性別データとか。各チームの担当者が行うアクションに関連するレポートの整理。

4.上記に関する目標値を設定し、関係者と合意する。
 2については、上司(社長、本社CMO等)と合意し、3についてはチームメンバーと合意するイメージ。

5.上記に基づき、レポート運用を開始し、毎週数字で議論する。

上記をやることで、マネジメントが効く、いわゆる、成果をあげられる組織になる。各担当者にとっては、自分の仕事が認められるようになるし、上司と共通認識で議論し、必要なヘルプも受けられるようになることで成果も高まっていくはず。昨今のマーケティングはデジタルによって多くの業務・部署とつながっていくので、実行内容と結果を単純化し、みんなに理解してもらうことで、必要なヘルプを受けることができる。いいことずくしだが、ここまで来るまでは苦労が大きい。反発もあるし、地味に作業が大変ということもある。入社間もなく、理解が足りない中、多くのミッションをこなす必要がある立場で大変だけど、逆に最初のタイミングでないと実現しにくい、という面もある。

マーケティングはデジタル化し、テクノロジーも進化しているのは事実だが、結局はそれを従来のフレームワークに落とし込む単純化の作業ができるかどうかだと思う。結局、組織は人が動かすので、成果を定義し、みんなが納得して、それに向かって努力し、自走できる環境を作りだすこと。だから、KPI設定は真剣にアートなんだと思っています。個人的に。

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