欧州プレミアムカーブランドのマーケティングにおける未開地はデジタルである

自動車業界のマーケティングやプロモーション活動は、どこもよく似ている。ブランドによって大きな違いはないし、独自性を感じることは少ない。

特に、プレミアムと言われる、Mercedez、BMW、Audi等に焦点を当ててみても、いつも見るのは、キレイでかっこよい画像と、ドライブフィールを訴求した動画、その両者を組み合わせて、特別なあなたに特別な体験を提供します、といったもの。

現地法人のマーケティング部門においては、広告予算もそれなりにある※ため、上記のクルマのプロモーションのフレームワークにフィットする形で、広告代理店とよい素材を作っていく、というのが仕事の中心である。
(注:1顧客当たりの広告予算は大きい)

一般的に自動車メーカーのマーケティングは、ブランディングを統括する本社と、セールスプロモーションを担当する販社(卸売/インポーター)、そして店舗(ディーラー)という、密に連携した3つの登場人物によって、顧客にリーチしていくことが基本構造である。

販社の立場で言うと、本社からモノと情報を得て、「いつものクルマのフレームワーク」に落とし込んで販売活動をマネージしていくので、本社がブランドを確立していくことができれば、今まで通りクルマは売れていく。よって、販社は、去年は何台、今年は何台と、いかにカスタマー/販売店視点で、スピーディに改善活動をしていくかが求められていた。

しかし、販社は、数十年続いた、この成功モデルが、ゆっくりとユーザーからクルマを遠ざけていることに関心を持つべきだと思う。カスタマー体験(CX)をリアルの場だけに設定していた自動車会社は、高級ホテルや豪華な場所で車両展示イベントを行うことは得意だが、もうユーザーはそこにはいないし、「リアルだけを考えることはもはやリアルではない」ことに気づかないといけない。

メルセデスベンツが提唱するCASE戦略(Connected, Autonomous, Shared and Electric)は素晴らしい概念だと思うが、これはあくまで単にユーザー視点での語り口だと思う。これを企業のマーケッターが同じ視点で考えてはいけない。例えば、この「Connected」をどうとらえるか、という視点において、車両に搭載されているConnect機器のみを考えて人が多いが、本来はその背景にあるデジタル施策については、深く理解し実行していくことが求められている。

デジタルは、プレミアムブランド(あるいはクルマに限らず、ラグジュアリーブランド)におけるマーケティング領域の最後の未開地だと思う。

今後、このNoteを通じて、エクスクルーシブなブランドの顧客体験をどのように創出し、そして拡張していくかという自動車業界の大きな課題について、紹介していきたいと思う。

※参考:
・Mercedes Benz, Case strategy
 https://www.daimler.com/innovation/case-2.html

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