【プリズンライターズ】本と宇宙人になったカエル・書評 Vol.3「自由研究には向かない殺人」
こんにちは!ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が未だ続いていますね。民間人を虐殺したり拷問にかけたり、ロシアの行動は常軌を逸しているとしか言えず、たとえこの先停戦したとしてもこの戦争犯罪の代価はプーチンにとって破滅以外無いのでは無いでしょうか。
TVを付ければウクライナの事ばかりやっているというのに、いくら気にしていても刑務所にいると、この様な情報も社会と違って知りたい時に知ることが出来ずとても困ります。多少の情報は新聞などで読むことは出来ますが、それより深い情報となると本や雑誌を買うしかありません。しかし、買うとなると手元に届くまで2ヶ月近くかかり、そのころには気持ちが大部違う所に行っている事もありとても不便です。
せめて、刑務所の中にも本屋や図書館があると嬉しいんですけどね。嬉しいとは言え、図書館に行った事は小学生のころなら数えきれぬ程ありますが本を借りた事がありません。え?何してたかって?決まってますョ。遊びにです。
私の家の近くの図書館は、役場と公民館が併設された2階にあり、特に夏はパチンコ屋なみに冷房が効いていて、草野球やサッカーで疲れると涼みに行って冷水機の水を飲んで床やシートに寝ころんだり、駄目だって怒られてんのに持っていった菓子を喰いながら少年ジャンプを読んだりしてました。図書館に漫画や雑誌があれば良かったけど、無かったので漫画を持ちこんで本を読んでる気にでもなっていたのでしょう。もし、あの時何かの変化で本を読むことが出来ていたら、きっと人生違っていただろうなと思いますが、あのころは本を読む人は友達のいない人なんて勝手に思っていた程馬鹿だったので無理だったでしょうね。今じゃその図書館に行って好きなだけ本を読みたいと思っている自分に少し笑ってしまいます。
因みに私が初めて1冊の本を読破したのは多分15歳、少年鑑別所で借りて読んだシドニー・シェルダンの“ゲームの達人”だったと思います。勿論、借りたのはゲームと書いてあったからだと思いますョ。それ以前にも小学校で読まされたりした本はありますが最後まで読みきった事はなかったかな。後、赤川次郎の "三毛猫ホームズ” シリーズや “ふたり” なんかも読みましたが、本が読めた自分にスゲー×2と驚いた記憶があります。
その話はまた!
それでは今回、勧める本は「自由研究には向かない殺人」です!
「自由研究には向かない殺人」 ホリー・ジャクソン
イギリスの小さな町のリトル・キルトンのグラマースクールに通う17歳の少女ピップはEPQ(自由研究で得られる資格ーーつまり大学入試と並行して独自で行う自由研究)の課題として5年前に町中を騒然とさせた同学年のアンディという少女の失踪事件を調べることにした。
警察はアンディの交際相手だった少年サルが事情聴取後に大量の睡眠薬を服用し森で遺体となって発見されたことから、サルが彼女を殺し逮捕を恐れて自殺に及んだと結論付けていた。
証拠や自殺、そして嘘の供述をした事で町の誰もがサルの犯行だと確信していたが、彼と親しかったピップはサルが犯人だとは信じられず、少年の無実を証明するためEPQを口実に事件の再調査を決行する。
自由研究に殺人事件なんてと、教師からは反対されるも被害者・加害者どちらの家族とも一切連絡を取らないことを条件に承諾を得た。条件を守らなければ不合格になるのだが、そんなことは何処吹く風でピップの大冒険はサルの弟ラヴィを訪ねることから始まった。
物語はまさしく現代、今時の女子高生。インターネットやSNSを駆使して情報を集め、時には警察官や新聞記者にまで体当たりでぶつかり、サルは冤罪であるという確信が深まれば深まるほど行動力は増してゆくピップの真っ直ぐさに心を打たれる。“怖いけど‥.怖くない” そう自分に言い聞かせて行動するピップの判断基準とエネルギーは “絆” や “友情” に重きを置いている。真実を追求するためなら危ない橋も厭わず渡り、時として警察の世話になる様なことも平気でしてしまうからおもしろい。
ひたむきに信じた道をつき進み、やっとつかんだ真実は……
本作は英米で大ベストセラーとなり、児童文学のカーネギー賞などにもノミネートされており一見ヤングアダルト作品の様だがミステリーとして評価が高く、失踪・巡礼・謎解き等さまざまなジャンルのミステリーに当てはまり、作品は読みやすい上巧緻で、ピップという明朗闊達なキャラクターが加わる事によって重苦しさが消え、ラストまで楽しく読後感の快い新世代を代表する“青春ミステリ” の傑作と言えるだろう。
日本でも昨年の年末ベストミステリー各紙で翻訳部門の上位を獲っていることで “ピップの活躍” を証明している。
このピップ物語には続編があり、今年中に日本でも翻訳出版されるとのこと、まだまだ気になることが多すぎてピップの入国を首長くして待っている。
■「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン
創元推理文庫 定価1540円
最安値1026円 送料250円
この記事が参加している募集
【PRISON WRITERS】投稿へのサポートに関して/ 心が動いた投稿にサポートして頂けると有り難いです。お預かりしたお金は受刑者本人に届けます。受刑者は、工場作業で受け取る僅かな報奨金の1/2を日用品の購入に充てています。衣食住が保障されているとはいえ、大変励みになります。