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【プリズンライターズ】15年目の宮城刑務所から「点検からの忘れ物+短歌10首」

日中の暑さは相変わらずですが、朝晩はいくらか涼しさを感じられる様になりました。
関東の暑さは大変ですが、いかがお過ごしですか。私も東北に来て15年になりますが、元は関東の人間。関東の暑さに比べれば、東北の暑さは数日程度。厳しい暑さの日でも、毎日長くは、暑さは続かぬと思い、日々頑張っております。

私がいる宮城刑務所では、第2、第4金曜日が「矯正指導日」となっており、午前中に教養ビデオが45分間流れて、その時間は机の上の本等は片して見なければなりませんが、その他の時間はマンガや雑誌以外の本、小説なら読書に励むことが出来ます。
今月は12日が第2金曜日にあたり、11日の山の日から始まり17日までが盆休みで7連日でした。盆前に汪さんより無償本がまとめて届いたので大変助かり、今年の盆休みは読書にも励み、良き休みを過ごすことが出来ました。ありがとうございます。

プリズンライターの会報も届き、皆様の応募したものを見て、拘禁生活が長いクセに文章が苦手な私ではありますが、「なんでも好きなことを書いて下さい」ともあったので、少しずつですが、私もプリズンライターに応募をしたいと思います。
題名は「点検からの忘れ物」「短歌10首」です。私のいる宮城刑務所は、今現在は新獄舎が立ち、昨年の9月に移り、すべてが独居房になりました。その前の旧舎生活は雑居房もあり、私も新獄舎に移るまで雑居生活でした。


点検からの忘れ物

昨年6月の出来事なのですが、私の雑居房では3人で生活をしていたおり、1人は60代、もう1人は70代の耳の悪い高齢の人との生活です。私は40代ですが、まだまだ若手です。3人部屋で生活をしていた時、70代の人の補聴器が無くなり、本人は工場へ持ち運びするパスケースに入れたと言い、当時の担当のオヤジは、パスケースには入っていなかったと言い、少々の騒ぎになりました。

工場で無いことに気づいた為、同囚はパスケースに入れ忘れたのだろうと言われ、部屋に帰ってから私物を確認をすることに・・それでもその日は補聴器が出てくることなく、翌日を迎えても同囚とオヤジで、パスケースに入れた入ってなかったの繰り返し。その日は同部屋の私たちの私物も本人確認をすることに・・
私物のバックの中にキレイに整頓をして入れていた物をすべて出して確認。私物バックの中を、すべて出して入れ直すだけでも少々時間のかかる、面倒臭い作業です。

もちろん、私の私物バックから補聴器が出てくるわけもなく、同囚のバックからも出ずに、同囚といっしょに部屋の中も点検をして過ごしました。刑務所にいる者はひとクセ、ふたクセある者も多く、同囚の60代の人も中々ひとクセあるとウワサがある人物。疑いの目はその人にいっていたのかもしれませんが、同部屋で物が無くなることで、私にも少しは疑いの目はあったことでしょう。そしてまたあくる日、私たちが工場に出ている内に、今度は部屋に総点検が入ったようで、せっかく私物バックの中を整頓してキレイにいれたのに、中はグシャグシャ。またすべて出してキレイに入れ直し。部屋には私物棚もあり、昔は刑務所の収容人数も多かったので、今は3人部屋でも10人分の私物棚があり、1つ飛ばして使用をしていたのですが、その棚の誰も使用をしていない所に黒いファイルがあったのです。

部屋に帰ってすぐ点呼が始まる日だったのですが、布団も少し崩れていた為、総点検をやったことがすぐにわかり、色々と部屋の中を見ていたところ、私がファイルを発見。はじめは、総点検の時に人の棚の物を隣の棚に置き直し忘れだと思い中を見たら、なんとこの部屋の者の身分帳で、総点検はどの職員が入ったかは分かりませんが、職員の忘れ物だったのです。私は同囚の中の誰の物かを確認をしようとしてパラパラと見たときに、1枚1枚同囚の顔写真が左上にある身分帳と、3人の白黒顔写真と罪名が載っている物があり、すぐに見てはだめな物とわかり、部屋の前にいたオヤジにわすれ物だと出したのです。勝手に総点検で部屋の中をグシャグシャにしたあげく、人の身分帳を棚に置き忘れていき、私は発見をしてパラパラ中を見てしまいましたが、すぐにオヤジに出したのに、その日は夜の9時、消灯時間まで部屋の3人とも入れ替わり、身分帳の件で取り調べをしました。

7時から見られるテレビも見れずに、そんなに大事なら置き忘れるなと思いながらの調べです。見られて困るのは私たちなのに、タマに思うのは、私の身分帳がまたどこかに置き忘れをされて、ひとクセのあるような懲役にみられたらと思うとゾッとするばかりです。
罪名とか地元は別に隠してはいませんが、引受人や色々と住所等も載っていたのかなぁと思うと、「今後はこの様なことはなくします」と言ってくれましたが、本当にないことを願うばかりです。最終的に70代の人の補聴器も出てくることなく、身分帳の置き忘れと私物バックの入れ直しが2度と、大変な想いをしただけでした。

雑居房では色々とありましたが、今現在の独居生活は雑音もなく快適です。
「点検からの忘れ物」、最後は少々グチっぽくなってしまいましたが、あってはならないことがあった、すごい刑務所です。


短歌10首

私は教育でやっている「俳句会」と「短歌会」に入っているのですが、今現在はコロナの関係で、シャバから先生が来る教育等はすべて一時停止をしているので、こちらで「10首」応募をします。

① われの身を案じつ帰る母の背に

           やつれ目立ちぬ夏の陽の中

② 雨となる夕ぐれ近き頃にして

           しきりに啼ける蜩のこえ

③ くれなずむ庭にするどく稲妻の

           走れば白さ百合が浮き立つ

④ 刈り取りし庭のあら草夏の陽に

           枯れゆくいきれ窓にこもりぬ

⑤ 時をりに涼しき風のそよぎきて 

           疲れし心静かならしむ

⑥ 台風の過ぎて幾日うろこ雲

           移りつ午後の光しずけし

⑦ 汗ばみし顔洗わんと濡らす手を

           止めて聞き入る蜩のこえ

⑧ さわやかに秋の気配の流れきて

             みちのくの空どこまでも澄む

⑨ 家族らを思いいたりて空仰ぐ

             秋の陽ざしの眼に痛きまで

⑩ われを待つ家族を思い切なけり

             秋の茜の夕日わびしき


私は読書をしている時が1番よき時間で、いつも皆様の活動には大変助かっております。
残暑を乗り越えて、実り多き秋を迎えられますように祈っております。

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