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「君たちはどう生きるか」を見て②(ネタバレ)

今回はさらに妄想全開で。
マヒトの自傷行為について掘り下げたいと思います。
まともなレビューは先週映画を見た当日に上げているので、まずはそれを見てね。今日のは一週間スルメのように噛み締めて出てきたネタバレしかない感想と妄想です。

前回のレビューで「お!?いつもの宮崎作品の男の子主人公らしからぬことをするな」と感じた行為、それはマヒトの自傷行為のことです。転校初日の帰り道、突然石を掴んで自分の側頭部に思いっきり打ちつけるなんて予想できました?何があっても驚かないつもりで見ていた自分もこれにはびっくりでした。
その行為に至った心理が気になって引っかかって一週間。自分の結論はズバリ「ついカッとなって」です(笑)。
一週間考えてそれかい、と思うでしょう。

映画を見ている最中は喧嘩した同級生を貶めて学校を休むための策略でやったのかと思いました。そう思いましたよね?・・・悪いやつだなと。
でも最後まで見たあと、小さな違和感がずっと残っていたんですよね。マヒトはそんなことをするようなやつか?と。で、彼を信じたいと言う気持ちで今書いています。(だから妄想)

ものすごい環境の変化(母の死、疎開、転校、継母とその妊娠、新居)についていけなくなって衝動的にリセットボタンを押してしまった、そんな感じではないかと。たぶん本人もなぜそんなことをしたのかよく分かってない。で、帰って父の反応を見て、やべーとなった。
自分が思い描いていた居心地のいい理想の世界とあまりにかけ離れた世界に突然放り出されて、いやこれ現実?リセット〜!!ということなら理解できるかなと。怪我の手当をしてもらいながら父に転んだと嘘をついたときは本当にミジメな気持ちだったろう。もうこの時マヒトは自分のことが心底イヤになったと思う。
そのイヤな自分がアオサギ。
弱くて卑怯で嘘つきな自分自身、それがアオサギだ。
嫌悪し、なんとしても打ち倒しこの世から消し去りたい。そんな正義に燃えた思春期の男の子の心の闘いと成長の記録なんだろなこれは。
漠然とそんな感じで鑑賞し、個人的にはすごく満足でした。でも誰にでもは勧められる作品ではないなあと思った、と言うのが本音です。

「君たちはどう生きるか」
生きるとは何か、命とは何か。
そんなことを言葉や文字でわかりやすく表現し語るなんてダサいことしたくないしできない。受け取る方もそんな話聞きたく無いでしょ。(正直、タイトルを知った時、説教くさい話だったらイヤだなあと言う気持ちがあった)
でもこの歳になればよくわかる。
本当はめっちゃ語りたいし、若い子にもっと教えたいんだ。だからせめていつか分かってくれと言う願いを込めて抽象的な表現で作品に残す。
人間って本当に不器用。・・・でもそれがイイ!
(ちょっと脱線でした)

マヒトは冒険の中で自分と向き合い、人と向き合う。
世俗的で気遣いの無い父、それがなりふり構わず家族を守り生き残る強さだと知った。
年老いたいやらしい年寄りには逞しく生き生きとした若い日があり、自分も同じ道を歩いていることを知った。
突然新しい母と紹介された女性は、実は思春期の男子と自分の子ども、同時に二児の母になることに対し自分以上に戸惑い、不安と戦っていることを知った。
その不安を閉じ込めた心(石室)に一人で踏み込むことを後押しした母、きっとアオサギ(自分の弱さ醜さ)を友としたマヒトならその気持ちに共感し受け止め母と呼ぶことができると信じたのだろう。
それに対して人の醜い感情を嫌悪し人の心(石室)に踏み込むことをタブーとし、綺麗な石だけを集めて積み上げできた大叔父の理想の世界がいかにちっぽけであるかを知った。
そして母と同じ世界に戻れないことを受け入れたマヒトは迷うことなく現実に戻る。
ここまでは全て劇中で描かれていた話。

で唯一劇中で精算されてないのが同級生達との関係だ。
気になるよね、学校でうまくやっていけるのか。
でもこの冒険を乗り越えて逞しくなったマヒトならたぶん笑ってこう言えるはずだ。

「いやー、ついカッとなってやっちまったわ 笑」

こいつやべー、サイコパスかよ、とひっそり去っていく者もいれば、なんだお前頭いかれてんのかと笑い返してくれる者もいるだろう。
多分、アオサギ前のマヒトは前者のタイプで、アオサギ後のマヒトは後者のタイプだろう。

きっと楽しい未来が待ってそうだ。

これが1週間味わい尽くした僕の「君どう」

おわり。


おまけ:台無しなセリフでスベるマヒト
 「いやー、ついカッとなってカットしてしまったわ」

おまけ:わらわら
 わらわらは新しい命の象徴。
 しばらく上の世界に上がれなかった理由は「戦争」。ペリカンの話は少子化に対する気持ち入っていると思う

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