見出し画像

「君どう」を見て。(ネタバレあり)


純度100%の宮﨑駿。

「ゴティックメード」が純度100%の永野護、
「シン・エヴァ」が純度100%の庵野秀明だとしたら、
この「君どう」が純度100%の宮﨑駿なのだろう。

日本の誇る創造主たちが、本当に表現したい純度100%の作品を作り、その世界を映画館というもっとも集中して入り込める環境で鑑賞できる。本当に贅沢なことだ。(なんか前にも言ってた)

ここからはネタバレアリの感想。

テーマはすごくシンプルで、タイトルの通り、そのまま。君たちはどう生きるか?だ。
でも問いかけで終わったりはしない。主人公の行動を通して宮﨑駿はちゃんと答えを示している。自分はこう思うねという答えを。
問いかけだけで終わらないのは好感。問いかけで終わるのは学校の道徳の授業と坊主の禅問答だけで十分。本当に人を導こうという意思があるなら、まず自分なりの考え・答えを示すべきだ。

物語が始まって最初に「お?」と思ったのは、駿作品のいつもの男の子主人公とは少し様子が違ったからだ。どこか未完成。これまでの作品ではどんな小さな男の子でも強さと正しさを持ち勇気まで兼ね備えた人格者、そんな完成形の主人公がほとんどだったと思う。それが駿の男子たるものこうあるべしなんだろうと思っていた。
本作はそんな完成形の男子が少女を守って敵を倒し世界を救っちゃう話ではなく、完成形目前の男の子が完成形に至るまでのストーリー。結果ではなく過程を見せるお話なんだろう、ちょっと新鮮。そんな主人公は話の最初の方で、らしくない行動を取る。そこに「お?」となった。

「あまり好きじゃない」という世界。母を失った寂しさ、父への不信感や嫌悪、性愛の象徴のような継母と新しい命への戸惑い、いやらしく得体の知れない年寄りたち、嘘つきで卑怯な自分、それら一つ一つと向き合い、受け入れ、友とすることで少年は成長する。(アオサギはもう一人の自分だ)
そして少年は選択する。
誰も寄せ付けない塔の中で一人理想を積み上げて作り上げたちっぽけでグラグラの世界を守る生き方をするのか(大叔父の生き方)、それとも、人と関わりその汚さを認め金を稼ぎ人に仕事を与え家族を守り命を繋いでいく社会的な生き方を選ぶのか(父の生き方)。答えは劇場で笑

千と千尋の神隠しで宮﨑駿は、生き生きと目的を持って行動する千尋や白と対比して、何の目的も持たず表情も名も無くぼんやりと生きる若者を顔無しに見立てて強烈にヘイトした。
本作では子供部屋おじさんを塔の主人に見立てて巧妙にヘイトしているように思った。どんだけ団塊ジュニア世代をいじめるのか笑
でもそれが純度100%の宮﨑駿であり、宮﨑駿の真骨頂なんだと思う。それを味わえて本当に満足。大叔父の生き方は甘美な誘惑でしかない。多くの子供達に夢を与える仕事をしながら、決して夢の中に閉じ込まないでくれというメッセージを送り続ける熱い宮﨑駿が好きだ。

純度100%シリーズもっと見たいね。次は富野由悠季の番でしょ。ガンダムの看板下ろしてやってほしいわ。(ブレンパワードがそれに近いかもしれんが)

終わり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?