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#高安動脈炎闘病記 18

18.マカロニ

マカロニを食べる気になれない。

大学時代、イタリアンレストランでアルバイトをしていたので、たくさんのマカロニを茹でてきた。ホワイトソースと絡めたり、トマトソースと絡めたり。
もちっと柔らかな食感と可愛い見た目に食べ応えがあるパスタ。
焼けばグラタンになる。

高安動脈炎の所見のひとつに、マカロニサインという言葉がある。
頭頸部の大動脈の超音波検査(エコー)で示される、血管の壁が厚くなっている事象で、形がマカロニのようにみえるのでマカロニサインというらしい。
聞き馴染みのないこの言葉を初めて耳にしたのは4月のことだった。

退院後も定期的に、手術した病院で診察がある。
1ヶ月後となる6月中旬に病院に行った。
幾つかの検査を受け、予定の時間から1時間押して先生の診察を受ける。
心臓血管外科の部長で、執刀医の先生だ。
実は、この時がほぼ初対面となる。
(もちろん手術してもらってるので、14時間以上僕の身体に触れている)
まずはこの度の手術のお礼を告げ、話を聞く。
朗らかで話しやすく、先生!というよりお医者さんといった柔和なぽっちゃりとした先生(結局先生と呼ぶ)と、思い出話のように手術の時の話をする。
実は結構大変だったよー、と笑いながら先生は仰ったが、ホントそうなんだろう。
しかし、さすがは百戦錬磨の名医だ。この人の元に辿り着いてよかった。病気になった時はつくづく運のない人間だとも思ったが、運がいいからここに辿り着けたんだ。

そして、今後の治療についての話をする。
今回の手術はあくまで、元となる病気から発症した症状を治しただけであり、その本丸「高安動脈炎」と闘わなければならない。
僕らは外科で、心臓の手術に関してはプロフェッショナルだけど、動脈炎についてはあくまで専門外でこの病院には専門の科がないので、そちらを受診してほしい。という話を聞いた。

プロかっけえー。もしかしたら、この世界では当たり前の話なのかも知れないが、選択と判断のメリハリがすごい。思わぬところで感動してしまった。
とにかく、今後は心臓の診察もうけつつ膠原病内科の受診をすることとなった。

ただ、いくつかの手違いが重なり(僕の確認不足)初診が8月となってしまった。

紹介を受けた病院は、これまた新しくきれいな病院だ。受付を済ませ、いくつかの検査を受けた。CTスキャンの機械が前の病院と違って、妙にテンションが上がった。

いくつかの結果が出て、先生の診察を受ける。
若く賢そうな女性の先生と、症状や違和感などの確認をして、また待合室に。

再び呼ばれた際に先生は2人になった。
これまた若く、おそらく僕と歳の近い爽やかな男性の先生が加わる。

先生が、僕の右手首の脈を探す。

「脈がふれませんね」


言葉の意味がよくわからなかった。

言葉の通り、手首の脈がない。
高安動脈炎は別名「脈なし病」と言われることもあり、症状の特徴として脈がとりにくい、ふれにくいという所見がある。
簡単にいうと動脈の狭窄があり、流れが悪くなっているということだ。
そうすると血の巡りが悪いわけなので、コリのような感覚がぬけなかったり、痺れや痛み、立ちくらみという症状を引き起こす。
事実、ずっと立ちくらみや眩暈、コリなどに悩まされてきていた。術後も心臓が弱くなったからか、外でクラっとすることが多く、
効果があるかわからないが外出時に薄いサングラスをかけることもある。

「入院して治療が必要です。」
8月のこの日、またマカロニが嫌いになった。

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