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ふたりめの彼氏

オタク街コンで彼氏発見!

 そして2回目?3回目?で行ったオタク街コン(この時は複数対複数のタイプだった)で、新しい彼氏が出来た。前回とは違い180センチ近い長身痩躯の、沢村一樹を老けさせたみたいなイケメン顔の、同い年のひとだった。
 前の彼氏ほどの大学ではなかったけど、彼もとても有名な大学の出身だった。……と、そこまではよかったのだが、これまた理系のひとだった。
 結局わたしは理系の人が好きなのかもしれない。凄くタイプだったけど、わたしが初めての彼女だという発言に少しひっかかった。こんなに格好良くて、頭も良いこの人に一体どんな欠点があるのかと穿ってしまう。それがわたしの悪いところだ。基本的にとことんマイナス思考である。だが、この勘を大切にしておくべきだったと、後々になって気付かされた。

2番目の彼氏

 彼はわたしとは真逆の性格で、ひとつのものに執着しない、ワンクールで女性向けを除くほぼすべてのアニメを見るような人だった。声優とかを追いかけているわけでもなく、純粋に『アニメ』を愛しているようだった。カラオケが好きだという趣味が重なったので、何度もカラオケに行った。

 はじめての彼女だということで張り切っているところもあったのか、彼は絶対に1週間に1度会いたがった。最低でも2週間に1度。恋人としては普通のことなのかもしれない。
 でもわたしは織姫と彦星のように1年に1回会うだけの生活でも耐えられる女なので、毎回デートに行くたびに次の予定を詰められていくのがすごく窮屈で苦しかった。ありがたいことではあったのだが、特に何をするわけでもないのにわざわざ人ごみの中に行って、知りもしないアニメ映画を見せられるのもきつかった。休みも会わなかったので(相手は平日休み)なぜかこちらだけが年休を取ったりしないと会えないのもまた面倒だった。

クソ男のエピソード一覧

 そこからずれを感じるようになった。

・泣けるアニメが見たい、と言ったわたしに見せてくれたアニメが、学生百合ものの続編映画だったこと(元ネタアニメを一切見たことないとは伝えてあったし、おまけに泣けなかった。響けユーフォニアムってそんな泣ける系のアニメではなくない? そもそもわたしは『映画』というものがコスパが悪くて嫌いと先に言ってあったはず)
・同じく泣ける映画に行こう! と言って連れて行かれた謎アニメを見てる最中、隣で爆睡していた(興行的にも爆死したようなクソつまんねー映画に1800円も出したわたしの気持ちは?)
・回転ずしが食べたいと言い出したから長蛇の列を作るスシローで1時間40分も待ったのに、寿司には目もくれずにラーメンを注文して食べだした(だったらラーメン屋で良かったじゃん!)
・シスコンなのか、やたらと妹の話をする(わたしもシスコンなので気持ちはわかるけど! 妹はかわいい)
・池袋の水族館に行きたいと言い出したから、ウキウキしながらカメラを持って行ったら「学生時代の友達と相席居酒屋に行って飲み明かしてしまい、歩くのが辛い」という理由で行き先を急遽漫画喫茶に変更された(わたしには一銭も奢ってくれたことがないくせに、相席居酒屋で同席になった名前も知らないような女にはメシを奢ってあげたらしい死ね)

など、今思い出しても怒りで眩暈がするほどの仕打ちの数々を受けた。

 相席居酒屋で同席した女には何千円も奢れるのに、わたしには一銭も奢ってくれないところも怒りを増幅させた。
 わたしは割り勘全然オーケーなタイプだし、むしろそうすべきだと思っている。今の時代ならそうすべきだ。普段平等を訴えるくせに、都合のいいときばかり男の人だけに負担を強いるのはおかしい。
 だけど、彼女がいるのに相席居酒屋に行き、そこの女に奢ってへらへらした挙句、デートの予定を勝手に変更するって何? と段々許せないポイントが増えていった。普通にマジであり得なくない? と、友達に愚痴る回数が増えた。(勿論別れろ別れろ!と言われた)

最低最悪の記念日

 そうこうしているうちに1か月記念日を迎えた。珍しく店を予約してくれたというから少しうれしくて、ちょっとだけ浮かれて待ち合わせ場所まで行った。
 まあクリスマスデートですら鳥貴族だった男(わたしは鳥貴族好きだから許したけど)だからたいして期待はしてなかったけど、悪くないお店だった。でもディナーのパスタが1200円くらいだった。普段サイゼリアに行っている高校生だったら滅茶苦茶感動しただろうな、って感じの店ね。笑
 言っておくが、わたしはサイゼリアは大好きだ。友達と行ったり、ひとりで行く分には何も問題ない。彼氏とは嫌だけど。

 だが、だからといってコースを予約してあるわけでもなく、ただ席だけ取ってあったのでなんだか記念日なのか普通のディナーなのか分からないような食事をした。
「好きなもの頼んでいいよ!」と珍しく景気のいいことを言うので、きっと奢ってくれるつもりなのかもしれないと控えめなものを頼んで、食べた。サラダどころか、デザートすら頼ませてもらえなかった。
 そして会計の時、それでも一応財布を出して「半分払うよ」と言った。そうしたら、半分きっちりと徴収された。いや、半分どころではない、相手の方が食べているし酒も飲んでいるのだから、何故かわたしが奢ってしまった。
 たかだか数百円のことだったが、あり得ないと思った。だって、わたしが出すなら好きなもの食べるに決まってんじゃん。なんでわざわざ恩を着せるようなこと言って遠慮させたんだよ。死ね。という気持ちでいっぱいになり、わたしのテンションは地におちていた。書いていて怒りが再熱してきたような気がする。

 そして帰ろうとしたわたしに「今日ホテル行けない? 最初は旅行とかに行って、とかの方がいいと思うけど我慢出来なくて」と言い出した。いや、行けねえだろ。てか行かねえだろ、とも思ったが、この歳になって出し惜しみするのもおかしいかと諦め、半ば投げやりでついていった。ホテル代は絶対に出さねえぞと固く心に誓って財布も出さなかった。

 この時のわたしは過労で半年で10キロ痩せていたこともあって「出逢った時に比べると胸が小さくなった?」とか聞いてきた。しかもろくに準備もしないから失敗して、痛がるわたしに「騎乗位は? バックは?」と次々聞いてくるその無神経さにさすがのわたしも我慢の限界だった。

 彼氏と初めて寝る日のはずなのに、わたしの脳裏ではモブおじさんに犯される推しの姿がよぎった。自分は哀れな推しで、彼氏だったはずのその男はモブおじさんだった。わたしは闇の腐女子なので、何度もモブおじさんに推しを犯させ、酷く傷つけ、泣かせてきた。申し訳ないことをしてしまったと、その時初めて激しく後悔した。性癖は変わらないけれど、その時の気持ちは永遠に忘れないと思う。

 限界が来たのですぐに服を着て、残りの時間を何とかやり過ごし、駅まで真っすぐに向かった。今度もう一度チャレンジしようね、とか言われたけど、寒気が走って頷くこともしなかった。そのままその男からの連絡を無視し続け、疎遠になった。やっぱりわたしは男という生き物が嫌いなのかもしれない、とさえ思う。

 今日この男と久しぶりに会うことになってしまった。連絡が来たのはあちらから。きっと新しい彼女と別れ、寂しくなったのだろう。だが、未だにこれだけ怒りが沸くのだから、復縁など到底無理だ。年収が5000兆円になっていたとしてもいやだ。

 だけど、今日なら、今なら、あの日言えずに我慢し続けてきたことを嫌だったと言えるだろうか。言えば、少しだけ気持ちが楽になるような気がする。

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