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ゴトゴトシネマ/前田誠一さん

2024年3月22日&29日放送

 今回は、自主上映団体「ゴトゴトシネマ」の主宰・前田誠一さんをお迎えしました!

■ 前田誠一さん
四万十市(旧中村市)出身。大学進学で上京し、東京のオーガニック食材を取り扱う会社に就職。20年余りにわたって「食の情報発信」を担当します。2011年の東日本大震災を機に家族で高知へ戻ることを決め、縁のあった高知市土佐山に移住。その後、2014年からは地元の公民館で映画の自主上映を開始し、 現在は高知市を中心に月に2作品程度を上映しています。

〔 番組収録風景 〕

▶ 映画好きの家庭に育ち…

 幼少期は野球少年だった前田さん。野球好きの父親と一緒に神社の階段でうさぎ跳びをするような星飛雄馬のような少年時代だったそうです。

 一方でテレビも好きだったお父様。当時は映画が放送されることも多く、家族みんなで映画を観ては感想を語り合ったり『すばらしい世界旅行』や『野生の王国』などドキュメンタリー番組に心ときめかせていたそうです。そんな幼少期の体験が今の活動に大きな影響を与えているんですね。

 ちなみに子どもの頃の思い出の映画として…
『ジョーズ』『ロッキー』『エンドレス・ラブ』を挙げていただきました。

 当時、高知県内には各地に映画館があり(旧中村市には中村太陽館)、今よりも映画が身近だったように思います。そんな中、前田さんは思春期には映画雑誌「スクリーン」「ロードショー」を毎月購読していたそうですので、やはり筋金入りの映画好きだったと言えるでしょう♪

▶ 約25年間の首都圏生活!

 大学進学で上京し、その後「株式会社大地を守る会」(現オイシックス・ラ・大地株式会社)に就職。グラフィックデザインの経験があったことからカタログデザイン・情報誌発行・広報・広告・編集・ブランディングなど、食の情報発信を20年余りにわたって担当します。

 そして迎えた2011年3月11日、平穏だった日々が一変します。当時、前田さんは千葉県房総半島に居を構え、家庭菜園を楽しむなど穏便な生活を送っていましたが、福島から約250kmという近さもあって震災後は放射能に対する不安がありました。その頃、娘さんは3歳。庭に実ったイチゴを摘んでそのまま口に入れるような日々を送っていたこともあり「このままではいけない」と思って、まずは妻子だけ実家の四万十市に避難させ、その後、自身も仕事の都合をつけて高知へUターンしました。

 ただ再就職を考えると高知市周辺で暮らした方が有利。それも津波の心配がない山間部がいいと考えた前田さん。前職で交流のあった生姜農家の方に紹介してもらい、高知市土佐山での生活をスタートさせるのでした。

〔 自然豊かな土佐山地区 〕

▶ 自主上映活動を開始!

 高知にUターンしてからは宅老所に勤務していた前田さん。ある日、所長から「高知市が16ミリ映写機の講習会を無料で開くので、前田さんこの講習を受けておじいちゃん達に映画を観せちゃって!」と言われます。実際に受講してみると、映写機、スクリーン、スピーカーなどの機材も貸してくれるという話になり、まずは近所の人を集めて自宅で上映会を開いてみました。(結局、宅老所での上映は実現しなかったそうです…💦)

 大きなスクリーンを使った自宅での上映会は大好評!映画への想いが沸々と甦ってきた前田さんはその後、奥様の許しを得てプロジェクターを購入。「手芸のコマドリ」で白と黒の布を買ってきて貼り合わせ、95インチのスクリーンを自作。さらに義父から譲り受けたTANNOY製スピーカーで音響面も大満足!レンタルDVDを借りてきては自宅でいろんな作品を鑑賞するようになります。

 こうなると、次は「この感動を他の人にも味わってもらいたい!」という気持ちになるのは世の常。近所の皆さんと一緒に地域を盛り上げる企画を考える中で土佐山桑尾公民館の2階で映画を観る会を始めることになり、2014年、今のゴトゴトシネマにつながる映画上映活動がスタートします!

〔 桑尾公民館2階での上映の様子 〕

▶ 有料上映会を開始!

 2014年から地元の土佐山桑尾公民館で定期上映会を開始した前田さん。床にゴザを敷き、座布団の上に胡坐をかいて(人によっては座イス持参で)の鑑賞は地元の方にとって大切な憩いの時間となりました。しかしその一方で前田さんには「新しい映画を観たい!新作を上映したい!」という想いがありました。そのためには配給権付のBlu-rayを借りる必要がある。そしてその費用を捻出するにはお客様から入場料をいただく形にしなければ…。

 そんな想いを形にした有料上映会が2016年2月にスタート!第一回の上映作品は、大西暢夫監督の『家族の軌跡~3.11の記憶から~』でした。

 映画の舞台は東日本大震災で甚大な津波の被害を受けた宮城県東松島市。大西暢夫監督が震災直後から通い詰めて4年がかりで完成させた、被災地に暮らす人々のドキュメンタリー作品です。

 実は東日本大震災の発生から約3週間後、会社の上司と共にトラックに食料を積み込んで東松島市を訪れていた前田さん。目の前に広がったのは爆心地かと見紛うような瓦礫の山、山、山。この上映会では前田さんがその様子を撮影したビデオも併せて上映し、当時のことをご自身の言葉で報告したそうです。

 高知の方にとって東日本大震災はテレビの中の出来事であり、なかなか自分事としてリアルに感じることは出来なかったかもしれませんが、報道では伝わってこなかった現実を目の当たりにして「これは他人事ではない」と感じ、やがて来る南海トラフ地震への備えを考えた人が多かったようです。とても意義深い上映会になったんですね。

▶ 現在の上映活動は?

 現在は高知市内を中心に月2作品程度を上映している「ゴトゴトシネマ」さん。ホームページにはこれまでに開催した上映会・全167回の記録と、お客様の感想が掲載されています。是非チェックしてみてください。

 そんな「ゴトゴトシネマ」の次なる上映会は … 3/23(土)・24(日)に開催!上映作品は、吉田夕日監督による『1%の風景』です。

 99%の方が病院やクリニックなどの医療機関で出産する現在の日本で、助産所や自宅での出産という“1%の選択”をした4人の女性と、彼女たちをサポートする助産師の日々を見つめたドキュメンタリー作品です。

 初めてのお産に挑む人、予定日を過ぎても生まれる気配のない人、自宅出産を希望する人、コロナ禍に病院での立会出産が叶わず転院してきた人。様々な妊婦さんの出産を、自身も助産所での出産経験がある吉田夕日監督が追いました。(実は前田さんご夫婦も助産院での出産を経験!)

 そんな希少な“1%の方”はもちろん、"99%側”の出産を経験した人、これから出産を迎える人、そして子どもたちにも是非観ていただきたいこの映画は、前田さん曰く“幸せな気分に包まれる作品”。是非お見逃しなく!


■ 映画『1%の風景』上映会

【開催】3月23日(土)・24日(日) 
【時間】①10:50 ②13:30 ③16:10 ④18:50
    ※24日は④18:50の上映はありません。
【会場】喫茶メフィストフェレス2Fシアター
    (高知市帯屋町2-5-23)
【料金】前売・予約 1,400円 / 当日 1,600円
    高校生以下 800円

▶ 他団体とのコラボ上映も!

 「ゴトゴトシネマ」では月に2作品程度の定期上映会のほかに、イベントやお祭りに参加してのコラボ上映も行っています。

 例えば、2023年9月30日・10月1日に安芸市を舞台に開催されたイベント【東洋的漫遊祭】では『縄文にハマる人々』という作品を上映しました。

 日本人なら誰もが知っている言葉でありながら、その実態がほとんど分かっていない縄文時代。この映画は1万年以上続いた縄文時代を題材にしたドキュメンタリー作品で「ゴトゴトシネマ」でも過去に何度かアンコール上映した人気の作品です。

 イベントやお祭りに合わせて上映を行うときは「どんな映画を上映するのが良いかを考えるのが楽しみ!」と語る前田さん。【東洋的漫遊祭】では、イベント自体がアジアンエスニックな感じだったのでこの作品をセレクトし、風情ある五藤家安芸屋敷を会場に上映を行いました。しかも会場サイズを考慮して前田さんが自作した“伝説の初代ゴトゴトスクリーン”での上映。安芸市で開催されたこの上映会をきっかけに「ゴトゴトシネマ」の定期上映会に足を運んでくれるようになった人もいるそうですよ。

〔 画像奥が伝説の初代ゴトゴトスクリーン! 〕


 また2020年と2021年には高知県立牧野植物園を会場に【お山でシネマ】と題した上映会も開催!植物園ならではの緑に囲まれた雰囲気の中で楽しむ野外シネマイベントでした。

■ 2020年 上映作品
『SEED~生命の糧~』
 食べものの種の問題を探るドキュメンタリー作品。
『ビッグ・リトル・ファーム』
 アメリカ人夫婦が理想のオーガニックファームを作るまでの8年間を追いかけたドキュメンタリー作品。

■ 2021年 上映作品
『フラワーショウ!』
 100年以上の歴史を誇るイギリスのガーデニング世界大会に挑んだ景観デザイナーの奮闘を描いた人間ドラマ。
『花のあとさき~ムツばあさんの歩いた道~』
 埼玉県秩父市にある山間の段々畑に花を植え続けた夫婦の物語。

 すべて前田さんのフィルターをとおして厳選された映画なので、全部観たくなっちゃいますね。

 ちなみに2020年の【お山でシネマ】では、ゴトゴトシネマの前田さんと、牧野植物園学芸員の前田さんによるトークショーも開催。“まえだまえだ”のトークに惹き込まれた方も多かったのではないでしょうか?

〔 トークショーの様子 〕

▶ 本日の1曲!

 音楽への造詣も深い前田さんは「ゴトゴトシネマ」のホームページで毎日音楽を紹介する【本日の1曲】を展開しています。

 もともと様々なジャンルの音楽を聞いていた前田さんですが、コロナ禍で思うような上映ができなかった頃に、音楽に救いを求める形でネットで世界各地の楽曲を探し始め、日本では紹介されていない良い楽曲やパフォーマンスをたくさん見つけました。

 そんないいものを知ってしまうと、自分だけではなく他の誰かに紹介したくなるのが前田さんの性分。2021年8月からホームページ上で毎日一曲ずつ紹介し始め、これまでに実に800曲以上をピックアップ!これらの楽曲はすべてアーカイブとして残っているので、興味のある方は是非チェックしてみてください!

 番組では【本日の1曲】の中から、前田さんが「最大の発見だった!」と興奮状態で語る、Silvana Estrada(シルヴァーナ・エストラーダ)さんの楽曲「Ser De Ti」をオンエアしました。2022年にラテングラミー新人賞を受賞し、大きな注目を集めているメキシコ人シンガーです。最近になって日本でも少しずつ紹介され始めていますので今後注目ですよ。

▶ 今後の夢は?

 これまでに160回を超える上映会を開催してきた前田さん。上映のたびにお客様にアンケートをお願いし、映画の感想や今後上映してもらいたい作品などを答えてもらっています。特徴的な感想は監督や配給会社に送っているそうで、以前にはその姿勢に感激した配給会社が100件を超える感想を全てホームページ上で公開したこともあったそうです。

 本来、クリエイターとは自分が創り出したものがどのように受け取られ、観た人にどのような影響を与えたかが気になるもの。前田さんはお客様の反応をクリエイターに伝えることで、観た人と作った人が繋がって互いにプラスになるような連鎖を作っていきたいと語っています。

 実はそのプラスの連鎖はクリエイター側だけでなく、観たお客様側にも広がっていて、例えば キューバジャズをテーマにした作品『Cu-bop』を観た若者が実際にキューバへサックス修業に出かけたり、鹿児島の知的障がい者施設に密着した作品『幸福は日々の中に。』を観た人がその施設の職員になったこともあったそうです。

 前田さんは時々「映画を観るに来ている人は幸せに生きるためのヒントを探しに来ているのでは?」と思うことがあるそうです。観た人と作った人を繋ぎ、双方にプラスの連鎖を引き起こすこと。これこそが自主上映活動の醍醐味なのでしょうね。


 最後に前田さんの今後の夢を伺いました。

■ いちばんの目標は上映会を継続していくこと!

 出来れば 同じ場所で、すなわち「ゴトゴトシネマ」の上映拠点を持って上映会を続けていきたいと語る前田さん。いろんな表現が次々と発表されている今、世界中で面白い映画が続々と作られています。そんな作品に出会い、それを高知の皆さんにどんどん紹介していきたい!前田さん自身の好奇心や興味に引っ張られるように「ゴトゴトシネマ」の活動はこれからも続いていきます。ぜひ注目してください♪

【 放送プレイバック 】📻✨
★ 3月22日(金)放送 ⇒ 
コチラ から!
★ 3月29日(金)放送 ⇒ 
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