見出し画像

日本防災植物協会/斉藤香織さん

2023年7月14日&21日放送

 今回のお客様は「日本防災植物協会」事務局長であり、「株式会社しまんと流域野菜」代表取締役の斉藤香織さん!

■ 斉藤香織さん
東京都杉並区出身。舞踏家として国内外で公演活動を行う一方で「身体と食は密接である」との想いから野菜ソムリエの資格を取得!2013年に高知県四万十市へ移住します。その後、植物生態学者の澤良木庄一先生と出会って「日本防災植物協会」を設立!2018年には「株式会社しまんと流域野菜」を創業し、有機野菜の栽培と次世代の生産者育成にも取り組んでいます。

〔 実は3人は以前からの知り合い 〕

▶ 植物も好き!舞踏も好き!

 東京23区の中でも比較的緑が多い杉並区で育った斉藤さん。
小学生の頃は毎日30分近くかけて通学していたそうで、道端に生えていた桑の実を取って食べたり、ツツジの蜜を吸ったりと、当時から植物に触れる機会も多かったそうです。東京にもそんなお子さんいるんですねー♪

 大学に入ってからは演劇を始めますが、台詞が苦手だったこともあって、身体表現オンリーの舞踏に方向転換!舞踏カンパニー「大駱駝艦」などで学び、1999年からは「舞踏舎 天鷄」に参加して国内外で公演を行います。顔を白く塗っておどる舞踏は、日本よりも寧ろ海外で人気があるそうで、アメリカ、ドイツ、フランス、ルーマニア、中国、インドネシアなど、いろんな国で公演を行ったそうですよ。

〔 舞踏舎 天鷄の公演風景 〕

 一方で「身体と食は密接である。食べるもので身体はつくられる」との想いから“食”に興味を持つようになり、野菜ソムリエの資格を取得!東京を拠点に活動します。しかし知識だけで喋っている自分に疑問を持つようになり実際の栽培体験を求めて地方への移住を画策。以前に旅行で訪れて、雄大な自然と美味しい食べもの、何よりも人々の温かさが印象に残っていた高知県四万十市を選び、2013年に移住しました。

▶ 人との出会いを大切に

 地方への移住を果たしたものの、ほぼ知り合いがいない状態だった斉藤さん。最初に取り組んだのが人脈づくりでした。四万十市で出会った方の中で斉藤さんに大きな影響を与えた人が2人います。

 一人は、地域商社の先駆け「四万十ドラマ」の 畦地履正社長!
「四万十ドラマ」が手がけていた【道の駅四万十とおわ】の食堂には当時、野菜をたくさん使ったメニューが無かったことから、地元で獲れた美味しい野菜を中心にしたレシピの開発を依頼され、今に繋がる美味しいメニューを開発しました。「四万十ドラマ」や、四万十町十和地域とは今でも共同の取り組みを行うなど深いご縁で繋がっています。

 そしてもう一人が、植物生態学者の 澤良木庄一先生!
高知の野山を駆け回って植物採集とスケッチに明け暮れた植物学者であり、公立の学校で教諭、教頭、校長を務めた教育者です。移住直後に新聞掲載された斉藤さんの記事をきっかけに出会い「野菜を育てた経験がない」と語る斉藤さんに「僕は畑をやっているので良かったら一緒にやりませんか?」と誘ってくださったそうです。

 その後、畑仕事をしながらたくさん会話をする中で話題に上がったのが、災害時に食べられる防災植物のこと。澤良木先生との出会いが「日本防災植物協会」の発足へと繋がっていきます。


 四万十市・為松公園内にある「四万十市郷土博物館」では9月26日まで澤良木先生の足跡を辿る企画展が開催されています。

 タイトルは【 四万十の植物学者 さわらぎ先生の語り草 】
澤良木先生のご専門だったコケ・シダ類の標本や、研究成果、そのほか先生の人生やお人柄が偲ばれる展示になっています。
NHK朝の連続テレビ小説『らんまん』放映で植物に再び注目が集まる中、牧野富太郎博士とはまた違った植物学者が四万十にいたことを是非この企画展で感じてください。

▶ 防災植物って?

 澤良木先生と一緒に「日本防災植物協会」を立ち上げた斉藤さん。
防災植物とは … 山野に自生する植物の中で、災害時や食糧難の折に、毒が無く、簡単に食べられるものと定義しています。災害時は食料以外に物資も不足します。調理器具や調味料が無くても、簡単なひと手間で食べられることがとても重要なファクターになってきますね。

 そんな防災植物を農業共済新聞が特集した際の記事があります。
道端でよく見かける野草がこんな美味しい料理になるんですよー♪

〔 2022年4月20日付 農業共済新聞より 〕


 また防災植物を使ったメニューを実際に食べられるカフェもあります。
斉藤さんが毎月第3土日の2日間だけ、四万十市津蔵渕にオープンしているカフェ【 四万十ふれーばー*ボウサイショクブツカフェ 】です。

 防災植物は災害時に命を繋いでくれるものですが、普段から調理したり、食べたりしていないと、なかなか手が伸びるものではありません。
そこで旬の野草を使ったメニューを提供し、味を知ってもらうだけでなく、
ご自身で調理する際のヒントにもなればという想いで営業しています。

 例えば今年6月にお出ししたのが「野草と夏野菜のドライカレー」!

〔 見た目も美味しそう! 〕

 ドライカレーの上に載っているのは …
ヨメナ、カキドオシ、ドクダミ、そしてお花はムラサキカタバミです。

 ドクダミはお茶にして飲むことが知られていますが、生の葉っぱをそのまま召し上がった方は少ないのではないでしょうか?実は『らんまん』の中で主人公の万太郎が「ドクダミって何にでも効くんだよ」と言って、十徳長屋で干しているシーンがありました。それを観た人たちがドクダミのお茶をつくってみたり、焼酎に浸けて虫除けにしたりと、にわかにドクダミブームが起こっていたことから、今回、生で食べてみよう!と思ったんだとか。

 生のドクダミは独特の匂いがありますが、味は意外とイケるそうで、香菜として知られるパクチーのような位置付けになれるのではないでしょうか。
7月にも同じメニューをお出ししますので、気になる方は是非【 四万十ふれーばー*ボウサイショクブツカフェ 】にお出かけください。

 次回の営業は、7月15日(土)・16日(日)の2日間!
前日までにご予約をいただければ確実に席を確保できるそうです。
予約のお電話は … 090-2625-8370 までお願いします。

▶ 防災植物教室もやってます!

 斉藤さんは、季節ごとに「防災植物教室」も開催しています。
7月2日(日)には「第23回防災植物教室~初夏の野草を楽しもう~」を開催し、親子連れなど約30人が参加しました。

 今回は四万十川沿いに生えている食べられそうな野草を採取し、名前を調べて分類したほか、生のヨモギを刻んで生地に混ぜたチヂミもつくって食べました。生で食べても苦すぎず、美味しいチヂミが出来たそうですよ。

 また夏休み期間中には「四万十市郷土博物館」でイベントも開催します。

①【 夏休みこども植物教室 】
 為松公園内の草花を観察してスケッチしたり、採集した植物を顕微鏡で覗いたり、標本をつくったりします。
■ 日時:2023年 8月 6日(日)9:30~12:00
■ 講師:田城光子さん ほか
■ 定員:小学校6年生以下とその保護者 20名

②【 四万十川を愛した澤良木先生と生物多様性 】
 植物をとおして環境や社会を見つめ続けた澤良木庄一先生について、高知大学名誉教授の石川慎吾先生が語るミュージアムトークです。
■ 日時:2023年 8月23日(水)14:00~16:00
■ 講師:石川慎吾先生(高知大学名誉教授)
■ 定員:20名(事前申込制)

 イベントへのお申込みやお問い合わせは「四万十市郷土博物館」まで。
電 話:0880-35-4096
E-mail: 40010museum@city.shimanto.lg.jp

〔 四万十川に架かる沈下橋 〕

▶ 株式会社しまんと流域野菜を設立!

 「日本防災植物協会」の事務局長のほか、野菜ソムリエとしても活動している斉藤さんが2018年に設立したのが「株式会社しまんと流域野菜」です。

 業務内容としては「有機野菜の生産・販売」と「人材育成」の二本柱で、夏の時期はズッキーニ や カボチャ、冬にはナバナ や 紅芯大根、サツマイモ類を栽培し、同じ地域で有機栽培を行っている「桐島畑」さんの野菜と共に詰め合わせセットとして、通販サイト「SHIMANTO ZIGURIストア」などで販売されています。

 また県外からの研修生を受け入れていて、四万十川流域の豊かな自然のもと、有機栽培を学んでもらっています。この春は県外からきた2名のスタッフが3年間の研修を終えたそうで、一人は故郷の新潟に戻って新規就農し、大阪から来たスタッフは四万十町十和で結婚して十和で農業を始めたそうです。「しまんと流域野菜」の取り組みが着実に実を結び始めていますね♪

〔 自然の中で生きていることを実感! 〕

▶ 食べることは生きること!

 野菜ソムリエ上級プロであり、食育マイスターでもある斉藤さん。
四万十町立昭和小学校では子どもたちと一緒に、昔野菜の栽培・収穫・調理・販売も行っています。

 目的は、地元で栽培されている在来種を守ることと、子どもたちに食べることにもっと意識を持ってもらうこと!自分たちで育てた昔野菜について学び販売することで、子どもたちは農業の喜びの一端を感じているようです。

 そして「食べることは生きること!」子どもたちには食べものを通じて生きる力を身に付けてほしいと願っています。生きる力という意味では、斉藤さんが取り組んでいる防災植物も、災害時に生き延びるための助けになります。食べることと生きることは密接に関わっているのです。

〔 私たちが作った昔野菜を買うてよー! 〕

▶ 今後の夢は?

 東京出身の斉藤さんが高知に移住してから早10年。
友人からは四万十川の近くでのんびりした田舎暮らしをしていると思われているそうですが、実際には東京時代よりも忙しく動き回っているんだとか。
四万十で出会った人たちに力をもらい、励まされ、支えられながら、自らの活動範囲をどんどん広げ、仲間を増やしています。本当にエネルギッシュでアクティヴな斉藤さんです。


 最後に斉藤さんの今後の夢を伺いました。

① 防災植物の全国展開
 
四万十川から始まった「日本防災植物協会」の活動を全国に広げるべく、今年は東京でのイベントを企画しています。

② 有機野菜の生産と販売
 四万十川流域で栽培した有機野菜を多くの方に知っていただき、もっとたくさん買っていただきたいと考えています。

③ 次世代の生産者育成

 日本の農業がもう一度元気を取り戻せるよう、若い方々と一緒に農業の楽しさを感じていきたいと思います。


 澤良木庄一先生の想いを継いで防災植物の啓蒙に尽力し、四万十町十和地域では四万十川に負担をかけないものづくりを実践している斉藤さん。
現在も続けている舞踏のパフォーマンス同様に、パワフルな活動を見せてくれています。もうすっかり“土佐のはちきん”ですね♪

【 放送プレイバック 】📻✨
★ 7月14日(金)放送 ⇒ 
コチラ から!
★ 7月21日(金)放送 ⇒ 
コチラ から!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?