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銭湯に行った話

ちょっとがんばった日か行く気がある日は近所の銭湯に行く。
ほんとに近所。徒歩2分くらい。
まじで適当な格好で行ける。寝巻も余裕。

カラカラカラと扉を開けて湯舟の方何の気なしに見ると、海の浮きみたいな
なんかでっかい丸い物体が4個くらいぷかぷか浮いている。
今日はなんかそういう日(ゆず湯の日が前にあった)なのか?

リンスインシャンプーとボディソープを拝借。
クレンジングは持ってきた。
シャワーから出てくる温度で今日の湯舟の熱さを大まかに把握する。
とにかく熱いのだ。この銭湯は。

銭湯とは縁もゆかりもなかった私がこうしてふらっとこれるようになったのは、幼いころから銭湯を愛する恋人の影響が大きい。
大きいというか、それでしかない。
だって銭湯って独自のルールがありそうだし、へましたら番人みたいなおばあさんに怒られるかもしれないじゃん。
だから初めて行った日のことはよく覚えている。
銭湯はおうちのシャワーとは違って、ヘッドが固定されてるよ。
お湯と水を混ぜ合わせて、温度を調整して桶に出すといいよ。
湯舟にお水が出てくる蛇口がついてるから、熱かったら調整しな。
でも先に入ってる人がいたら一声かけたほうがいい。

初心者の緊張を解くためにこれだけ丁寧に説明してくれて、とても感謝である。
そしてよけいビビる。
しかも私は目が悪い。眼鏡をはずしちゃうともうよくわからない。
初めていくお風呂は、たとえ旅館だとしても緊張するものだ。


一つ隣で体を洗い始めようとしているおばさまと目が合う。
すっかり銭湯に慣れた私は、
こんばんは、なんて挨拶をする。
地元の人に混ざれたみたいでちょっとうれしい。

湯舟に浮かぶモノの正体は、グレープフルーツみたいな顔くらい大きい柑橘系の果物だった。
シャワーの感じだと今日は余裕だと思ったのに、やっぱりあーちぃ
カランをひねろうとしたとき、挨拶したおばさまが湯舟にいらっしゃった。
「いいですか?」
「いいわよいいわよ、埋めちゃって!慣れるまで熱いもんね」
ぷかぷか浮いているデカ柑橘果物がなぜか私の周りにたまる。
「お姉さん、囲まれちゃったわね。何かしらね、これ。知ってる?」
ぜんっぜんわからん。
「グレープフルーツみたいなにおいしますね~。こんな大きいわけないか。」
「いい香りよね、私の姪が高知から送ってきてくれた果物によく似ているんだけど、なんだろうね。」
わかんないけど楽しいからいい。来てよかった。
この果物のおかげか、いつもより肌がピリピリする気がする。
あと、やっぱりあちー
心地いい広々湯舟に浸かっていたいけどのぼせちゃう前に上がる。

しっかりあったまって、体が真っ赤っか。
拭いても拭いても汗がじわぁっと出てくる。
汗が引くのを待ちながらゆっくり帰り支度をしていると、
先ほどのおばさまもお上がりで、2個となりのロッカーからいそいそと荷物を取り出す。ブラが落ちる。
ガラガラっと扉が開いて、新しいお客さんがやってくる。
「こんばんは~」
銭湯地元ネットワークはすごくて、いつも思うけど、ここに来てる人たちみんな知り合いっぽい。
先に上がっていたおばさまと、新しく来たおばさまと、今しがた上がってきたおばさまが、さっきまでパラパラ降っていた雨の話をしている。

ぽかぽかしている体を保温するようにコートを着込んだ私は、
お隣にいるおばさまに挨拶をした。
「お先に失礼します。」
「はい、さよなら。おやすみなさ~い。」
するとほかのお二人も言ってくれるのだ。
「おやすみなさ~い」
「おやすみなさい」
会釈しながら返す。
番台に座っているおかみさんにも
「ありがとうございました。」と言いながらペコっとお辞儀する。
「お気をつけて~」と言われながらガラガラっと扉を開ける。

外気がひんやり心地いい。
私に銭湯を教えてくれた恋人にはとても感謝している。幸福度、爆上がり。
今日はちょっとがんばったから、銭湯に行った話。

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