3spoons vol.5『嘘』the 2nd spoon_UNI

文芸ユニット「るるるるん」によるツイッター400字小説 3spoons

「わたし、しょこちゃんの本当のお母さんなんだ」
コープの前で、ひさしぶりに会った女に耳打ちされた。当然の反応として半身のけぞりつつも、あ、この人わたしが小1のときに6年だった蔵田ミチさんだ、と会釈してしまう。変な体勢をとってしまったものだから、首が痛む。すべてを知っているようにミチさんはわたしのエコバッグをそっと持ってくれるから、そのまま彼女と川まで歩いてしまう。

三十にもなって母と喧嘩するなんて情けない話だ。だからって突然母を変えるなんてできるだろうか。
「ミチさんってわたしと5歳しか変わらないですよね」
「そういう問題？」
「そういう問題ですよ」
そういう問題のようでそういう問題ではない。きょとんとした顔でわたしを見るミチさんのまなざしは、慈愛と母性に溢れている。どこからそれらは湧いてくるのだろう。
どうせ家に帰れば、パチンコと宗教とユーロビートに狂った母が待っているだけだ。わたしは今日から母を変える。