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「商店街」the 3rd spoon_かとうひろみ

文芸ユニット「るるるるん」によるツイッター400字小説『3spoons』第一回テーマ ”商店街“

最初は一軒だった。煙草屋だった。どうせならと24時間営業の店にした。夜行性人間の需要で、店は当たった。だが時代の流れで、煙草を夜間に販売するのは禁止となった。そこで主人は隣に喫茶店を作り、夜間はそこを営業した。昼間は人を雇ってコーヒーを立てさせた。この店も当たったのでそれを元手に今度は隣にクリーニング屋を出した。これも当たった。つまり主人は優秀な実業家であった。次々と土地を買っては店を出した。乾物屋・金物屋・総菜屋・スナック・占いの館・本屋・テレクラ・電気屋・ペットショップ・薬局。どの店でも2時間くらい勤務して次へ行った。CDショップを出してアルバイト店員を雇ったが、これが好みのタイプでここへ入り浸るようになった。それはお決まりのコースである。他の店の従業員からは不満が噴出する。不満の渦は店の景気の芽を摘む。店は次々と潰れる。アルバイトは逃げ出す。シャッター商店街が生まれる見本である。

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