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「カレンダー」the 1st spoon_かとうひろみ

文芸ユニット「るるるるん」によるツイッター400字小説『3spoons』第二回テーマ ”カレンダー“

『月末までにお願いします。』
 そう言われてカレンダーを凝視する。きっかり一カ月あるので余裕だと思い、飲みに行く。一カ月という猶予は気持ちを大きくし、知らず深酒をしてしまい、気付くと三日経っている。まずいと思い、依頼に取り掛かろうとするがきっかけがつかめず庭の草むしりに精を出す。没頭して二日経つ。カレンダーの呪縛とは怖ろしいもので、たとえ仕事が控えていても土日になると休みたくなる。それで休む。
 まだ余裕はあるが、机に向かうとTwitterを見てしまう。フォロワー同士で微妙に深まった間柄がこじれてややこしいことになっていて、何も手につかない。手につかないまま数日経ち、やっとWordを立ち上げたが、明日はまた週末なので休む。
 月曜日、やる気を出すためにスーツを着ることにする。二年ぶりに着るスーツはすっかりきつくなっているのでデパートに新しいのを買いに行く。ジャストサイズにするために仕立て直してもらい、出来上がりは一週間後である。自然、仕事の開始は一週間後になる。
 一週間後についに仕事に着手する。素晴らしい手際で難題をこなしていく。明日が納期である。私は常に実直に〆切を守る。31日を私ほどうまく使えるプロは他にいない。

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