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「カレンダー」the 2nd spoon_クララ

文芸ユニット「るるるるん」によるツイッター400字小説『3spoons』第二回テーマ ”カレンダー“

更衣室で同僚たちが週末の予定を披露し合うのを盗み聞きする。それをネタに、架空計画でカレンダーの余白を埋める。そしてその通りに行動する。カレンダーの中で、わたしは誰よりもリア充になる。

ある金曜日>バーでジャズを聴きながら架空デートを楽しむ。
ボトルでシャンパンをオーダーし、架空彼氏のフルートグラスにも注いでもらう。隣のカップルのテーブルでバースデーサプライズが起きたところでちょうどボトルが空いたので、二人分のチャージを払って席を立つ。

ある水曜日>カラオケボックスで架空女子会。
架空親友3人に飲み物を配り続ける。1時間50分経ったところで部屋の電話が鳴る。わたしは延長を断り、女子会プラン4人分の料金を支払う。

ある日曜日=四月始まりのカレンダーを買いに行く。
もう三月も終わりというのに羽根の飛び出たダウンジャケットを着た女が、見たことのない真っ白なバスに乗り込もうとしている。なぜか行かせてはいけないような気になり、女を引き戻す。筒に収まったカレンダーを乱暴におしつけ、代わりに白いバスのステップを上る。

女は受け取った筒をしっかりと抱き、わたしが来た方向へズンズンと足早に去っていった。
地面に足跡を叩き込むように。

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