見出し画像

気づいたのは自分だけ! そのときあなたはどうする?

いつもお読みいただきありがとうございます。
本日はリスク管理の話。
日々何気なくやってしまうあの行動の危険性について、書きたいと思います。

日本には古来より安全祈願という風習があって、その影響もあるのかどうか、トラブルは神様次第で起こるものという考え方も根強いですよね。
まぁ、エンジニアたる皆さんの中にはいないでしょうけど、「トラブルは本質的に防ぎようがなく、起こってしまったらもう不運だったと諦めるしかない」という考え方の人もいます。
そういう人は祈願というものに対しても、自分を冷静にするためのものとは考えておらず、むしろ安心すると油断したりするんでしょうね。

さて。
そういう人が仕事中に、誰も気づいてない潜在バグを見つけたとしたら、果たしてそのことを上司に報告するでしょうか。
トラブルは運だけで起こる、という考え方の人はしないでしょうね。
そんで不具合が起こっても知らんぷりを決め込むでしょう。
なんせそういう人にはトラブルは防げるという感覚自体がないのですから、必然的に、トラブルを防ぐための行動をとらないはずです。

では、あなたは???
もし、修正が結構面倒くさいケースで、なおかつそのときのリーダーがたまたま結構頭のいい、キレるタイプだったら?

やっぱり同じようにスルーするのではないですかね?
だって、自分が言わなくったって、その人が気づく可能性もあるから。

。。。。。あれ!? ホントに!?
「頭がよければ自分で気づけるでしょ?」って、それ本気で思ってる?

その問題、もしかすると、気づける人自体がそもそもあなただけなんてこともあるかもしれませんよ?
だって、こういう例もありますからね。

モンティ・ホール問題

ご存知の方も多いと思いますが、有名な確率論に関する命題です。
アメリカで一世を風靡した大人気クイズ番組 "Let's make a deal" の中で行われたゲームです。
モンティ・ホールは番組の司会者の名前で、日本でいう児玉清さん枠の人気タレントでした。

。。。。ん? どっちもご存知ない?
児玉清が分からない?
「アタックちゃあ~~んすぅ」の人なんだけど?

。。。オーマイ! ジェネレーション・ギンヌンガガプ!!!(T_T)

や、まぁ、そんなことはどうでもいいとして。
モンティ・ホール問題とは、こういうクイズのことです。

ここに、扉が3つあります。
うち1つに豪華賞品が1/3の確率で入っています。
見事そのドアを当てたら、景品はあなたのものです。
景品は具体的には、番組内では高級車とかだったみたいです。

あなたが1つ選ぶと、モンティッティがこう言うんですね。
「ファイナルアンサー??」
そりゃあもう、それはそれはイヤミったらしいニヤニヤした顔で。

でも彼が偉かったのは、みのもんた みたいに、黙ったままプレッシャーをかけるだけの人ではなかったことです。
三択なのにヒントをくれるっていうんです!
なんというサンタクロース!
「あなたが選ばなかったドアのうち、ハズレの方を開けます。その後、あなたはドアを変えてもいいですよ」
そう言って、1つドアを開けます。

当然、そのドアは空っぽです。

はい! ここでクエッションです!
あなたは「最初の選択を貫く」「ドアを変える」どちらを選んだ方が、豪華賞品が当たる可能性が高いでしょうか!?

こういう問題。

この命題が最初にアメリカで生まれたとき、多くの人は「そんなもん2つに1つなんだから、ドアを変えても同じだろ」と考えました。
素人衆だけでなく、数学のプロフェッショナル達もほぼ「変えても変えなくても同じ」という意見に賛同しました。
読者の中にもしこの命題をご存知ない方がいたら、おそらくそのように感じると思います。

ですが実際には正しい答えは「ドアを変えるべき」なんですね。
2022年現在、この命題はそれが正しいと証明されています。

にもかかわらず、問題文を初めて見た多くの人が「変えても変えなくても同じ」と感じます。
すでに証明されているのに、多くの人が間違えるんです。

なぜか。
もちろん決まってます。世界中の出題者達が面白がって同じ問題文章を使い続けたからです。
(え、おまえもだって? 、、、はい、そね。えろうすんまへん、、、)

マリリンはなぜ気づいたのか

この命題に対する正しい答えを公式な形で最初に発表したのは、コラムニストのマリリン・ボス・サヴァントでした。
彼女は「ドアを変えた方がいい」とコラムに掲載し、これはこれで騒ぎになりました。

出題者であるモンティ・ホールがドアを選ぶとき、彼には選択肢は2つありました。
まぁ、残ってるドアが2つなのですからね。

でも彼はランダム適当に開けることをせず、残るドアのうち1つを意識的に選んだんです。
それはなぜでしょう?

決まってます。もう片方のドアには豪華賞品が入っているからです。
豪華賞品が入ってるドアを出題者が自分で開けちゃったらダメでしょ?
だから開けなかった。当たり前。

つまり、もう片方のドアを、豪華賞品が入っているからという理由で避けた確率が2/3なんです。
ですから、司会者が選ばなかったドアこそが、2/3の確率で豪華賞品の入ったドアです。
(残り1/3は、回答者がノッケにいきなりアタリを引いた可能性)

このことを最初に発表した公的にはマリリン・ボス・サヴァントですが、彼女はなぜ気づいたのでしょう?
よく言われるのは「IQ228の天才だったから」です。

でも本当に???
実は、彼女が答えを出す以前から、ドアを変えるべき派の人達は少数いたんです。その人達はどうなるの?
マリリンより早く答えにたどり着いたわけだから、その人達はみんなマリリン超えの超々天才だったってこと?
統計的にはアメリカ人の10%弱くらいいたはずなんだけど?
マリリン、世界最高のIQホルダーとしてギネスに載った人だけど?
計算あわなくない?

そう。
その人達は、頭がよかったから最初からいきなり答えを直感的に悟ったのではなく、まず最初にこれが数学命題ではないことに気づいたんです。
なぜなら、残るドアの向こうに景品が存在する確率自体は1/2であって、これはこれで別に数学的には間違ってないからです。
だから数学的な観点だけで考えていたら、この問題は間違えます。

この問題が「数学命題」ではなく「統計命題」と呼ばれるのは、そういう理由です。
統計学とは人間の感情を数値化するための学問ですから、「統計命題です」と言われたら、数学的にではなく心理学的に分析しなければ正しい答えにたどり着けないことがあるんです。
ですのでこの問題は、「ドアの向こうに景品がある確率」ではなく、「モンティ・ホール氏がそのドアを選んだ理由」を、心理学の側面から紐解くのが正しいワケ。

(※現在では、数学論のみで答えにたどり着くルートももちろんあります)
(※あ、ちなみにドアの数を10枚に増やして説明しようとする人もいるけど、それだと数学的観点しか持ってない人に何の追加情報も与えていないので、説明手法としては悪手です)

つまり、正しい答えに自然にたどり着いた人達がなぜ分かったのかというと、彼らには数学的な知見と心理学の知見の両方があったからということですね。
だから答えが分かった。
マリリンが頭いいのは変わらないにしても、気づくか気づかないかに関しては頭の良さは関係がなく、観点を予め知っていたかどうかがカギになるわけです。

ですので、後続の人達が同じ問題に引っかからないようにするには、問題文を少し変えればよかったことになります。
「モンティ・ホールは、なぜこちらのドアは選ばなかったんでしょうか?」
って。
そう聞けば、そのドアにこそ豪華賞品が2/3の確率で入ってることが、ほぼ誰にでも伝わるでしょう。

つまりこのモンティ・ホール問題の最大の問題点は、先に気づいた人達がそのことをみんなに伝えなかったことです。

気づいたのに言わなかったらどうなるか

結果は、まぁ、ご存知の方はご存知の通り。
(知らない人は知らないでしょうが)その人達がだんまりを決め込んでしまったがゆえに、この話はアメリカを揺るがす大論争に発展してしまいました。
今件に限らず、気づいたのに言わないという行為は、大きな問題に発展するリスクを常に抱えているものです。

かつ、今回の問題のような隠された答えとか、世の中の潜在リスクとか、そういったものに的確に気づくためには、観点を予め知っている必要があります。
決して、頭が良ければ誰でも気づくわけではないのです。

ですので、年寄りがやりがちなここは1つ黙っておいて若い連中に気づかせようと、わざとリスクを見逃すのも通常多くは無意味です。
シニアエンジニアとは、若いエンジニアにはない観点を持ってるからシニアだからです。
年取ってりゃシニアなわけじゃありません。

観点がなくてリスクに気づけなかった人からすると、気づかせるためにわざと言わなかった人達の行動はただの意地悪にしか見えません。
心理学的な観点のない人に前振りなくモンティ・ホール問題を出したら、出題された側は「数学の問題だと騙された」ように感じるでしょう。
なぜならリスクとは、観点を持っていなければ予見しようがないことだからです。

モンティ・ホール問題に限らず、世の中の全ての なぞなぞクイズ の類も同じで、「クイズとは答えに気づくかどうかを問うもの」というのが社会共通認識で、それゆえに多くの人は気づきさえすればバカでも答えられると考えているように思います。
ですが実際には「気づくかどうか」と「ヒント足りえる観点を予め知っているかどうか」は同じことですから、どんなに頭がよくても観点を持っていなければ答えることはできません。

そしてその観点を持っているのは、もしかするとあなただけかもしれないのです。
だから、気づいたことがあるのなら、気づいた人がどんどん発言すべきなわけです。

潜在バグの件もね。
気づいてたのに黙ってたものを、不具合が出てから申し出るのってなかなか怖いよ?

あ、、、
でも、もしチームリーダーに責任の押しつけ癖とかがあると、なかなか言えなくなりますかね?
「言い出しっぺがなんとかしろ」で済ませちゃうリーダーとかとかね。

まぁ、そういう人はつまり リーダーなのにリーダーシップがない ってことなわけだから、気づいたことを発言するより先にまずその人に毒を盛った方がいいかも知れませんね。。。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?