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あの日ぼくはカフェを潰した〜「みらいの食券」に込めた想い

新型コロナウイルスが猛威を奮う3月上旬、とある決断をしました。

「苦境に立たされてる飲食店を手助けできるサービスを開発する」

PRプランナーの友人に相談しプレスリリースを出すと共にオンラインで開発に携わってくれるチームを編成。「みらいの食券(当初はTicketimeという名称)」開発チームが爆速で立ち上がりました。

様々なメディアに紹介された反響は凄まじく「飲食店を支援したい、でも自粛要請で行くことが出来ない」というジレンマを抱えていた多くの人々に共感していただきました。下記のツイートには1,500を超えるいいねと1,000近いリツイートが。

今は行けないけど落ち着いたら行く。
潰れてしまっては困るので今支援したい。

そんな想いが今でも非常に多く寄せられています。
改めて「今」必要なサービスだと感じると共にその責任も重いものだと、中途半端に終わらせてはいけないと覚悟を決めました。

そもそも何故このサービスを思いついたのか。それは20年前に遡ります。

カフェ開業と、もがく日々

友人とカフェを開業したのは今から20年ほど前。
世間を知らない二十歳そこらの若造が親や銀行から借金して半ば勢いで出したお店。とはいえ当時熊本ではまだ見かけなかった緩い感じのカフェはメディアで紹介されることも多くお客さんも徐々に増えていきました。

しかしそれまで飲食で働いていたとはいえ経営の勉強は全く不十分だったので、十分な利益を残せず苦しい日々が続きます。

友人とも仲違いし、借金しながらどうすればもっと集客できるのかばかり考えていました。

もっとお客さんが来れば。もっとお店を知ってもらえれば。

あの手この手で、もがき続けましたが5年目に差し掛かった頃に力尽きてしまいました。お店を潰すことに決めたのです。

最終日、最後に楽しんでもらおうと閉店パーティーを開催しました。
すると本当に多くのお客さんに来てもらったのです。閉店することを本当にみんな惜しんでくれた。常連さんに「僕たちの居場所を奪うことは罪ですよ」とも言われた。それだけその人にとって大事な場所だったのです。嬉しいやら情けないやらで閉店後、涙が止まりませんでした。

その時にようやく気づいた事があります。
目の前のファンを大事に出来ないで何が集客だと。
こんなに多くのファンに支えられていたことにも気づかず何が経営だと。
当時は売上を上げなければと周りが全く見えておらず、ファンに喜んでもらうよりも集客ばかり考えていましたが、そもそもそれが間違いでした。

ブランディングとの出会い

あれから数年、飲食をやってた頃から兼業で続けていたデザインの世界に絞り個人事務所を出します。そこで一番力を入れているのがブランディングの考え方。コンセプトが大事、ポジショニングが重要とクライアントのブランド構築支援をしていますが、そこで口酸っぱく伝えているのがCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)の考えです。

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これはいつも出している図なのですが、ブランディングで重要なのが

「こだわり」「インサイト」「CX」

だと思っています。
どれだけこだわりが強くても、どれだけ顧客のインサイトを掴んでいても、顧客体験がマイナスであればブランドとして成り立たないのです。

以前この部分について書いた記事はこちら。

以下記事より抜粋。

今の時代私たちは同じようなモノと情報に晒されすぎて、正直うんざりしています。疲れているのです。新しい商品やサービスが生まれても身体が慣れてしまっていて心のどこかで「あぁ、またか」と感じています。
そんな中で顧客を魅了し、ファンを増やし続けているブランドに共通するもの。それは圧倒的な「こだわり」です。
その「こだわり」はUSPといった競合との差別化の為に作られるものとは一線を画します。次元が違うと言ってもいい。理想の姿を追い求める情熱と行動力、そして自分の会社だけではなく取引先や業界をも変えていきたいという公器としてのビジョンも内包されています。
その「こだわり」が生活者のインサイト(無意識の心理)とハマり、顧客に伝えるための企業努力が商品だけではなくツールや店頭での接客にまで落とし込まれている、つまりCXまで丁寧に設計されている商品・サービスがここ最近でブランディングに成功している方程式だと感じています。​


目の前の顧客を魅了することができなければ、いくら集客にコストをかけようが穴の空いたバケツに水を注ぐようなもの。

20年前に身を持って体験した経営の失敗が皮肉にも今活かされています。

「みらいの食券」で実現したい未来

今開発を進めている飲食店の食券販売サービス「みらいの食券」は回数券+αのサービスがついてくるサービスです。+αのサービス部分はお店側で自由に決められます。

回数券にしたのは顧客の「次回来店率」が回を増すごとに高くなるデータが出ているので、いわゆる常連化につながることが期待されるからです。

そして食券を買うエンドユーザーへの利益として単純な割引だけにしなかったのは、この+αのサービス部分をそのお店独自のものにしてほしかったから。

今目の前にいるお店のファンが喜んでくれるサービスは何か、考えるきっかけになり得ると思ったのです。自分のお店でしか体験できないサービスは何か、自分のお店の顧客が利用してみたくなるサービスは何か、それらを考えることは自然とファンと向き合うことにつながると信じています。そしてその積み重ねはきっとお店に返ってくるのです。

最後に

現在公開しているサイト上で、一般の方から「食券を買いたいお店」のリクエストを募っていますが、既に300件を超えるリクエストが集まっています。一部抜粋します。

山梨県:TOYOSHIMAさんへ
「いつもニコニコ嬉しそうに、料理の語っているシェフが最高です。頑張りましょう。」

北海道札幌市:ウエスタンさんへ
「誕生日などのお祝いに利用しています。テイクアウト出来ない職種なのでご苦労されてると思いますが、地元的に飲食店少な目なので無くては困ります。落ち着いたら利用します!それまで持ちこたえてくださいm( )m」

東京都:レザングリルさんへ
「本当にお気に入りのお店で料理がどれも美味しすぎて感動です!友達を連れて行ったり何度もお邪魔しています。絶対になくなって欲しく無いので緊急事態宣言がでた今とても心配です。未来の分のお金が今払えるなら払いたい気持ちでいっぱいなのでリクエストをしました。」

神奈川県:マイクスさんへ
「大学の頃からお邪魔している大好きな、思い出の詰まったお店です!!卒業してからは前ほどの頻度では行けていませんが、行くたびに、笑顔で迎えてくださるお母さんやスタッフの皆様が大好きです。住んでいる家が遠いのでコロナ以降はテイクアウトでも伺えていないのですが、今から少しでも応援できることがあればと思っております。大変な中だと思います、心の底から応援しています!!!」

福岡県:花花さんへ
「大学生の頃から、社会人になったいまもことあるごとにお世話になってます!私も彼も友人も、みんなだいすきなお店なので、コロナ落ち着いたら絶対行きたい!」

石川県:Hum&Goさんへ
「石川県に引っ越してきたばかりの頃のんびり心落ち着く場所で、よく行っていました。また行きたいから、どうかなくならないで」

他にも沢山のメッセージが届いています。
それは自分にとって大事な場所がなくなってほしくないという願いと、自分に出来ることで支えたいという善意にあふれています。

この中にはお店の人も知っている常連さんもいれば、人知れず通っていたファンもいるかもしれない。自分で思っているよりお店のファンは意外に多いものです。


本当につらい日々が続きますが、新型コロナウイルスが収束し、私たちに日常が戻り、いつしかこのサービスが当たり前に使われる世の中になったとき、飲食店の収益構造がほんの少し改善し、同時に顧客との関係性も良くなっている。

そんな未来を信じてリリースまで駆け抜けたいと思います。


みらいの食券サービスサイトはこちら


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