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29w0d ありがとう、さよなら。

最近よく考えることがある。
いつか子どもたちに「お母さんもテレビで働いていたんだってね」と言われる、そんな未来のこと。

この3年近く、カメラで追い続けてきた人がいる。
晴れの日も、雨の日も。
それはドキュメンタリー番組のディレクターという域を超えて、一緒に食事して、旅をして、ある種の家族のようだった。
きっとこの先も、人生の長い期間をこの人たちに捧げていく。ライフワークに出会ったのだ、と本気で思っていた。

でも、ついにお別れをした。

名誉の諦め」について以前書いた。
妊娠・出産で起こる、一見マイナスのように見える変化は、すべて誇らしいものだという私なりの考え。
それは今も揺るがない。

人生にはいくつも岐路があって、
そのたび人は何かを選んで、何かを手放していく。
私はベビーという最高の贈り物を手にして、
今まで当たり前に手にしていた〈取材活動〉を手放した。でも。

「これ以上は私には撮れません」と伝えた時の
相手のがっかりと寂しさが入り混じる顔。
「また戻ってくるでしょ?」と言われ、
言葉に詰まってしまう自分。

いつも休まず全力投球がウリの人間だったから、
「復帰」の仕方がわからない。
それにこの先待ち受ける人生で初めての子育て。
器用に前の仕事ができるとは思えない。

ごめんなさい。これはさよなら、なんです。

もっと自分に体力があって、上手く生きれたら良かったのか。
「絶対に復帰する!」と自分を騙せるほどの気力があったら良かったのか。

このままじゃきっと、いつかこの仕事も静かに手放して、母親としての私の身の丈にあった職について、別の道を歩いていくことになってしまう。
でも今は、あらがう力がこれっぽっちも出てこない。

テレビが好きでした。
おジャ魔女どれみになりたいと友達が言ってた頃でさえ、テレビを作る人に憧れてました。

ようやく叶った夢が、過去のものになっても、
きっと私はテレビが好きで、
しょっぱい思いでテレビを見るのだと思う。

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