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自分の中にあった隠れた偏見を恥じる

ドイツで知り合った日本人女性の方の話。

ドイツでは、人生の比較的早い段階で職業の方向性を見据えた上で学業なり実務経験なりを積む必要があり、途中で職業を変えることが難しい社会です。例えば、調理師さんだった人が一般企業の事務に勤めようとすると、またいちからアドミニの勉強&インターンをしなければ転職出来ない、といった感じです。最終的に自分が何を学んで、どんな実務経験があるか、によって選べる仕事が決まってきます。

要は、資格社会で、何をするにも、どんな資格を持っているか、が関係してくるので、日本からドイツへ移住する際、場合によってはまたいちから勉強しなおさねば職を得られない、ということもあります。(保育士資格など、中には日本での資格がそのまま認められる職業もあるようです)

ドイツのどの都市かにもよりますが、日本企業が集まるような場所でない限り、多くの求人にはドイツ語が必要になります。
そもそも、ドイツでの滞在許可(ビザ)を取得するためには中級レベルのドイツ語(B1)が必要になり、ゼロからのスタートの場合、週5半日のドイツ語コースに通っても最低でも半年はかかるので、ドイツ語力という点も考慮に入れておかねばなりません。
(尚、移民向けのドイツ語コースは政府からの補助が出るため、諸条件ありますが格安で受けることが出来ます)

中級レベルのドイツ語検定に受かったとしても、大学進学や就職には更に上のドイツ語レベルが求められるため、かなり本腰を入れなければ難しい、ということがお察し頂けるかと思います。

また、日本に比べて「格差」が非常に大きい、という点も併せて明記しておきます。

さて、本題です。

こちらドイツで出会った日本人女性数名から、ハッとさせられる話を伺いました。その方々は、こちらに来た当初はドイツ語も出来ないし、でも何かの仕事をしたい、しなくてはならない事情があり、清掃の仕事から始めたそうです。

店舗やオフィス、学校などの公共施設、または各家庭の清掃は、企業登録された業者が行う場合と、個人レベルでPutzfrau(プッツフラウ・掃除する女性)にお願いする場合とがあります。いずれの場合も、一般的に、海外からの学生さん、決まった職に就いていない人(手に職のない人、ある一定の学問を修めなかった人)、言葉の問題がある人(移民の人たち、自分も含めて)、事情がありオフィシャルには働けない人などが就いている仕事というイメージを持つ人が多い仕事です。

私が話した方々は、日本国籍を持ち、しっかりとした学歴も日本では就職もしていたにも関わらず(こう書くと、差別的になってしまうので表現の仕方を迷うのですが・・・)清掃の仕事を選んだ、ということが私にとってはある種の驚きでした。

私の中に、清掃は自分が就く仕事でない、という変な偏見や差別があったんだな、と気づくことになり、とても恥ずかしい思いをしました。

そこには、「日本人」だという変なプライドや、学歴や社会人歴など、ガチガチに洗脳された価値観があり、清掃という職業に就いてくれる方へ意識せずとも自分とは関係ないという隔たりをもって接していたのだと思います。

あぁ、本当に情けない・・・。

その日本人女性たちはというと、口を揃えて「清掃の仕事は運を運んでくれた!」と言っています。

清掃の仕事を登録していた会社から、そのうち、一般企業の仕事を紹介されて、日本企業の支社でオフィスワーカーとして働くことになった、とか、(正直)珍しい日本人の清掃担当者ということが売りになり、個別にオファーが来るようになり、裕福な家庭専属でお願いされるようになった、など、それぞれのストーリーがそこにはありました。

やりたい!と思ったり、
やらないといけない、と思ったとき、目の前にある機会を色眼鏡掛けることなく掴んでみると、そこから可能性は広がっていき、当初は思い描いてもいなかった道筋へと導かれることのよい例だと思いました。

そしてまた、私にとっては大切な気づき、戒めとなった出来事でした。

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