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1999年映画『ニンゲン合格』感想。

1999年映画『ニンゲン合格』(脚本・監督/黒沢清)鑑賞。

ストーリー
14歳の時に交通事故に遭った吉井豊(西島秀俊)が10年間の昏睡状態から目覚めると、両親は離婚し、妹は親元を離れて恋人と暮らしていた。父の友人であり産業廃棄物の不法投棄を請け負っている藤森(役所広司)が、豊の面倒を見ることになる。家族を取り戻したい豊は、一家が経営していたポニー牧場を立て直そうとするが……。

Wikipedia『ニンゲン合格』より抜粋

少し遡って、西島さんの若い頃の作品を。
物語そのものは命の奇跡でもあるのに、目覚めた豊も周囲もあまりにも淡々とした描かれ方で進行するので困惑した。そして漠然と穏やかではない。家族を含め、彼と関わる人間たちがみんな、心が子供のままで退院した豊のそばにいる訳ではなく豊の許を行ったり来たりして地に足が着いていないから。

14歳は、様々な媒体で描かれるように表情が豊かな訳でもなく、素直でもない。小さなことに苛立ち、意地を張り、喧嘩も吹っ掛ける。豊を演じた西島さんには終始、そんな少年、豊の鬱屈さが溢れ、走ったり座ったり何かを見つめるまなざしすべてに14歳の豊がそのままそこにいるようだった。

落ち着きのない大人たちの中で、豊は一体どこに心を着地させるのか予想できなかった。豊の淡々とした言動や行動の中に、夢や希望を抱く以前の問いかけを感じていたせいだ。
この映画の海外でのタイトルは、Licence to Live.
生きるための許可。豊が存在した証。
ラスト、やっと豊はその問いかけに絶対的な言葉をもらう。起こったことは悲劇かも知れないが、きっと豊にとってはハッピーエンドだと思う。

🐴 🐴 🐴

黒沢清監督で西島さんが出演した作品と言えば、以前『クリーピー~偽りの隣人』(2016年)を鑑賞し、救いのなさや無機質な印象があったため、身構えました(笑)この作品でも独特な家屋の映し方、小物、はっきりさせない人の気配など、夢か現か判らない描写に驚いたり、感心したりしましたが、最後はひとりの少年の存在を思い、泣けて来た。とても良かったです。

※追伸
作品内に馬が出てきますが、この子は痛い目に遭うことはありません。

映画のフライヤー。
映画ポスター。
海外版ポスター。

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