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2012年映画『セイジ - 陸の魚 - 』感想

2012年映画『セイジ - 陸の魚 - 』(監督/伊勢谷友介)観賞。
西島さんは謎の多い寡黙な雇われ店長、セイジ役。物語を進行させていくのは、自転車旅を続けていた「僕」(森山未來さん)。事故に遭い、助けてくれた男にドライブインに連れて行かれ、成り行きでしばらく働くことになる。騒々しくも心を寄り添わせる連中を「僕」は見る。セイジは店長なのに寡黙で感情を露わにしない。他にも風変わりな連中が集うこのドライブインだが、昼夜問わず酒を飲んでは飲み過ぎてぶっ倒れ、客の世話になる自然児のようなオーナーの翔子(裕木奈江さん)にセイジが過去に大きな問題を起こし、秘かに傷として抱えている、と聞く。
「僕」は翔子に仕事を教わりつつ、その愛らしい容貌に秘かに憧れを抱く。ある日、笑顔を見せないセイジが唯一心を許し、笑顔を見せる少女、りつ子(庵原涼香さん)が心身共に傷つく重大な事件が起きる。心を閉ざしてしまったりつ子のため、不器用なセイジが起こした行動。周囲を驚愕させた彼の行動だが、それはりつ子にとって心を開くものであり、永久の絆となる。

田舎のドライブイン、という閉じられた空間ですが自然豊かで潤いのある画面が魅力的です。「僕」を受け入れてくれる人間たちのドラマも、乱暴だけど何となく心地いい。途中出て来る動物愛護団体のエピソードが逆に雑音に聞こえてしまうくらい。どうしても監督の想いが強すぎるとひとつの作品にすべてを詰め込みたくなるのだろうか。映像も美しいからこそ、その雑音が少しもったいなかった。
セイジは誰にも心を許していないようで無愛想極まりないが周囲はそんな彼をそのまま受け入れていて人間模様に好感が持てた。そして音楽が抒情的で郷愁を煽る。

その後、大人になった「僕」がドライブインを訪ねるとそこはもう営業されておらず、セイジと翔子の行方は描かれない。けれど大人になったりつ子が笑顔で現れる。セイジの行動は間違っていなかったのだろう。とても好きな作品です。

映画ポスター
DVDジャケット
自転車事故を起こし、傷の手当てを受ける「僕」こと森山未來さんと翔子(裕木奈江さん)

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