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2008年映画『真木栗ノ穴』感想

2008年映画『真木栗ノ穴』(監督・脚本/深川栄洋)観賞。
原作は山本亜紀子。とても好きな小説です。
西島さんは売れない作家、真木栗勉(まきぐりべん)役。しかし才能があるというのは随所に描かれている。真木栗はひょんなことから官能小説を依頼されるが実は苦手なジャンルのため、受けたはいいが悩んでいたある日、家に空き巣が入ってしまう。ボロアパートからは何も盗られなかったが、両隣の壁との間に穴を見つけ、覗くと隣人の男の私生活が丸見えだった。その露わな姿に笑ってしまう真木栗。そして反対側の穴を覗くが、そこは空き部屋だった。
そんなある日アパート前で清楚な女性を目にし、彼女を主人公にして物語を紡ぐことにする。更に彼女をモデルにした途端、真木栗の部屋の隣の空き部屋が埋まった。それは、あの時目にした女性、水野佐緒里(粟田麗さん)だった。真木栗はすぐに彼女の部屋を覗き、官能小説を書き始める。
佐緒里とはご近所、ということもあり、花火大会で偶然会って話したり、トマトを分けたりして普通に仲良くなる。けれど佐緒里と言う女性の素性は謎に包まれたままだ。

真木栗の書くエピソードはなぜか現実になってしまい、その登場人物には確実に死が訪れる。そんな事など知る由もなかった頃、真木栗はラストに自分を何気なく書き込んでいた。すべてを知ってから、あまりの恐ろしさに一旦原稿を破ろうとする。しかし、やがて手を止め、物語に委ねる。私はこの物語がとても好きだ。ホラーであり、サスペンスであり、純愛であり、人生だ。

映画では、原作で編集者が語った言葉が真木栗の書く小説の言葉に置き換わり、オープニングとエンディングにそれぞれ真木栗の声で流れる。その文章が真木栗の想いをすべて表しているようだった。

 たとえ白日夢であったとしても、
 掴んだ手を離しはしない。
 なぜなら、私たちは誰もが孤独であり、
 その命は刹那で、儚いものだから。

山本亜紀子 『穴』 (角川ホラー文庫)

私はこういう幽霊物、女が男を黄泉の世界に連れて行く物語が大好物である。正直、羨ましく思う。それはもちろん自分が幽霊側という条件ありきで。若い西島さんの姿は欲望が内包され、静かであってもそれが滲み出てしまう。この役を演ってくれて嬉しい。とても良かった。

PS / 硬い役が多い田中哲司さんの結構激しめなラブシーンを観た時は驚愕した。

エンドロールの少し前、この画面が現れる。このサインが読めなくて誰の物か判らない
映画ポスター
日傘を差し、ワンピースで現れる佐緒里(粟田麗さん)が清楚で可愛らしくてとても良いです
佐緒里と真木栗(西島さん)の出会うシーン。彼女には哀しい秘密がある

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