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2006年『三年身籠る』感想

2006年『三年身籠る』(監督/唯野美歩子)観賞。
西島さんは臨月を過ぎても生まれてこない子供の父親、徹役。妊娠中で過敏になっている妻、冬子に中島知子さん。父親になるのに浮気していると言う最低男で始まり、お腹から出て来ない子供と純粋な妻の姿を見てどんどん改心し、良き父親になっていく。

冬子は生まれて来る子供に良くないから、と周囲の音や光をすべてを遮断する。けれど子供は臨月を過ぎ、一年、二年経っても冬子のお腹から出て来ない。最初は文句をぶつける徹だが彼女は既に車椅子での移動しかできなくなっており、周囲からは奇異の目で見られ、マスコミもかぎつけ、冬子の妹、緑子(奥田恵梨華さん)の恋人の医師に託したが、あわや研究材料にされかけてしまう。
意を決した徹は冬子と何もない山奥で生活を始める。究極の自然の生活。そこには冬子の姉や母、緑子もやって来るが、恋人の医師との関係に悩む緑子が徹を誘い、関係を持ってしまう。隠していたはずなのに冬子にはバレており、奇抜に伸ばしていた髪をばさりと切られ、緑子は恐れおののき、徹も心から謝罪するが、そんな中で冬子はとうとう出産時期に差し掛かった。もうお腹は破裂しそうなほど限りなく円状に近かった。ただただ母子の無事を祈る中、徹の前に、三歳ほどになる裸の男の子が歩いて来た――。

ずっと観たい映画だった。随分前の雑誌で知り何となく惹かれたまま忘れていたが配信されているのを知った。三年と言う年月を妊娠し続けるという設定はあり得ないけれどそんな原作を作り、映画化し、監督までした唯野美歩子さんはすごい。またこの作品に出演を決めた俳優さんたちもすごい。だって何も、誰も想像できない。細かいことを言うと色々ある。けれどこれは純粋な感性でなければ作れない作品だと思う。言わば生まれて来る子供の立場から描いたと言ってもいい。

前半、クズ男に描かれ、途中から父親になる決意を固め、生き方を改める徹もまたすごい。この状況を、そして妻を受け入れられる懐は大した物だと思う。ある意味、普通が一切描かれていないけれど、最終的にすべてが幸せに満ちるという不思議な感覚だった。やっぱりこれはファンタジーだが、かなりのブラックだろう。男の人は怖いんじゃなかろうか。もちろん、女である私も怖い。けれど好きな作品です。

映画ポスター
DVDジャケット(このポスターはポップ過ぎて誤解を招きそう)
徹(西島さん)と冬子(中島知子さん)

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