新宿

漫画喫茶に入った小林は、「いまどんなのが面白いの?」
と聞いてきたので、「この辺かな?」と目ぼしい漫画を手に取って渡すと、小林はパラパラとめくりながら、「面白いね。」と興味深そうに漫画から視線を外さずに答えた。僕も読んでみたかった漫画を手に取ろうとすると
「あとで新宿に出ようよ、何をしたいわけじゃないんだけど、なんとなく歩きたいから付き合ってよ。」
と小林は言った。僕は、「そしたら今から出ようよ。オレも久しぶりに新宿を歩きたいからさ。」と返すとさっさと店を出た。
「変わらないな、ここは。」と少し風の強い横断歩道を渡りながら小林は言った。ぼくは「そうかな。そうだね。」と答えた。すると
向かいから、間を抜けられない程度に少し距離をおいて並んで歩く男女とすれ違った。少し赤色の髪をしたショートカットの女の子と、その女の子より30cmは背の高い、ボブっぽい髪型をした男の子。
格好良さと優しさと、ほんの少しの冷酷さを感じさせる、背の高いその男の子から目が離せなかった。
新宿も新しくなったんだな。
雑踏の中で、孤独を意に介さない、存在感のある、歩幅の違う人たちにそれを感じた。

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