-VS EATER-
パリ、夜の裏路地。カレーライスと八宝菜が手足をバタつかせ、捕食者に悲痛な抵抗を示していた。
「アァ、ウマイ、こんなご馳走にありつける日がまた来るなんて……」
「存分に味わえ、これは本来ヒトに許された当然の権利だからな」
「頭が無くなる!助けて!」
哀れな被食者にがぶりつくのは薄汚い男女二名、その後ろで黒服男が一人見守る。哀れな被食者の頭部は今に平らげられようとしていた。
「肉断ち」
その時!白いコック衣を纏った男が音もなく現れ、カレーを貪る男の右手首を断ち切る!その太刀筋があまりにも早かった為か、男は痛みも感じず、ただ腰を抜かした。驚愕した女が立ち上がり、懐のナイフを向ける。
「なっ!?何だテメー!」
「貴様こそなんだ、その包丁の持ち方は」
コックは既に女の手からナイフを奪取し、これを女の肩に刺し返した。女は気絶。その他方、先程切り落とした手首から"腕と脚"が生え、独りでに走り出した……
調理を施された全ての食材は生命と自我を得る、覚醒の日以来この理は切り落とされた人体部位でさえ適用されるのだ。コックはそれにも目をくれず、奥に佇む黒服の元へと潜る。月明かりが黒服男の、フォアグラ肉の頭部を映し出した。
「久しいね父さん、まァだヒーロー活動してるの?」
狂気染みて嗤うフォアグラが三節混を横に構える。応じてコックが腰を深く落とした。
「懲りもせず同族喰らいに与する貴様ほど狂っとらんがな」
「まだ言うか!僕もアンタも根元は醜い同族喰らい、何も違わないな」
「違うわ、人間という生き物は……セエッ!」
両者は同時に動いた!得物がかち合い火花を散らす!続いてにコックが袈裟斬りし、回避、突く、受ける、鍔競り合い!
「暴虐不遜の消費者だ!」
「そうとも!だが!」
両者敵の胴へ横蹴りを見舞う!交錯!
-VS EATER-
因縁の始まりは16年前に遡る、それはある見習いコックが創作フォアグラ料理を作った日、あるいは、全料理覚醒の日。
【TO BE CONTINUED】
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