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靴下をめぐる冒険

靴下はなぜいつも片方だけ行方不明になるのか。
いっそのこと、一緒になくなってくれれば諦めもつくのに。
あの紺のハイソックスの右側よ、君は左の靴下を見捨てて旅に出るような薄情なヤツだったのかね。

※以下、靴下がゲシュタルト崩壊を起こしそうなので右側の靴下を右美、左側の靴下を左美と呼称する。

いや、右美が相棒を捨てた悪者だと決めつけるのは早計に過ぎる。
左美の横暴に耐えかねた右美が、決死の覚悟で逃亡しているのかも。


「君は悪いことをしたのかね?」

左美に問いかけたところで、正直な返事が返ってくるわけがない。
「黙秘権を行使します」と言われてしまえば、お手上げだ。
靴下にも弁護士は必要なのだろうか。

いやしかし、私の目から見て右美と左美の関係は、そこまで病的なものではなかったはず。
やはり右美は自らの意志で、我々の元から出ていったのではなかろうか。
ずっと私と左美にべったりで、自分探しの旅に出ているのかもしれない。

さて、私は靴下の右美を保護するために追うべきか、自由を重んじ帰還を待つべきか、あるいは戻らぬものと諦めるべきか。

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