本と相性の良いものを考えるvol.5

本と恋

僕は恋をしたことがある。

思いのほか簡単に落ちてしまうもの。
落ちたらどうしようもないもの。
こちらの想いとは別に終わりを告げるもの。
理屈通りにならないもの。
それが恋だった。

きっかけは一目惚れだった。
高校の入学式で、名前も出身中学もどんな人なのかも分からない女の子から目が離せなくなった。
高校時代にバスケで活躍したかったのも、何か派手なことで注目を引きたかったのも、試験でいい成績が取りたかったのも、全部その子に自分のことを知ってほしいとの想いからだった。
見た目だけでなく、その子の立ち振る舞いや話している姿、雰囲気を含めて魅力のある女の子だったといまだにそう思う。

僕の地元新潟は冬に雪が積もると
普段自転車で通学している高校生はバス通学に切り替える。
バスでその子を見かけるといつも本を読んでいた。暖かそうな太ももの上に文庫本を置き、大切そうにそれを読む姿が印象的だった。
集中して読書をする姿は名のある人間が設計した家具のような、細部に宿る造形美をありありと感じさせるのだった。

結局僕は何もできなかった。
想いを伝えることは勿論、特別な会話をすることも、何の本読んでるのか聞くことさえもできなかった。

今の僕なら言うだろう。
「何の本読んでるの?」「この本面白いけど知ってる?。」
いや、言わないのかもしれない。まだ、言えないのかもしれない。
だって、本屋や道端で素敵な人が本を読んでいたとしても声をかけるのは相当難しいから。

でも、そんな日常の中に落っこちている人との出会いの機会に本が関係すると良いなぁと、本で何とかできないかなぁと想像してみる。本スタートで恋が始まったら素敵だと思うから。僕が描けなかった話が始まるかもしれないから。

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例えば本屋なんか良いのではないか。

お目当ての本に手を伸ばすと、同じ本に手を伸ばした女性と手と手が触れ合い始まる恋。
かなり無理はあるが、発想は面白い。

咀嚼すると
・同じ本に関心があるもの同士
・不意にコミュニケーションが生まれる
・コミュニケーションは二人だけのもの
要素はこんな感じだろうか。これが現実世界で同時に満たされれば同じ効果が期待できる。
一体どんな場合なんだろう。

同じ本に見えても微妙に話の流れ、内容が違う。
隣で立ち読みしている人に「そっちの本は続きどうなりますか?」とお互いの持ってるものを開示し合う通信簿的なコミュニケーションだろうか。。。

購入するまでに、
同じ内容の本を読む人と会話すると運気が上がる!
というパワースポット的なコミュニケーションだろうか。。。

内容が難解すぎて理解が難しい本の最後のページに各々の考え方を書き込むスペースが設けられている本。そこから始まるコミュニケーションだろうか。。

同じ作家の本や同じジャンルの本を手に取ったら光ったり。何か反応のある本棚だろうか。。。

知らない人同士で買うと本が安くなるキャンペーンだろうか。
本のどこかのページに「これと同様の本、又は同同じ作者の本を持っている方と一緒にレジまで来たらどちらも無料になります。」的なしおりとして挟まっていたり。

とか。
考えながら、福岡出張から大阪に帰ります。
考えたら楽しいかなと思います。

本から始まる恋。
皆さんはどう思いますか?