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【恐怖】毒親がついに錯乱狂乱。

そうこうしているうちに私とゲーセンで出会った子と関係は終わる。

理由は元カレとヨリを戻すとのことだった。
元カレがどんな人なのか深くは知らないが
彼は日本でも有名な企業に勤めていたそうだ。

私は全てにおいて負けていたと思う。
収入、職種、見た目。
向こうは大企業で月に20数万稼ぎ、ボーナスもある。
私は十万そこそこ、ボーナスなしのアダルトショップのアルバイト。
将来もクソもない。
同じフィールドで戦えるはずもなく私は負けた。

ある夏の日、みんなで花火をした。
男女混合チームで、中には知らない子もいたが
そんなのは日常茶飯事だったので気にならなかった。
花火も中盤になった頃、ひとりの男が夜の闇に紛れヌボゥ、と立っている。

両手には大きいビニール袋を下げ、最初からいて、
この状況をわかっているとは思えない立ち姿。

「あれ何?」

私は近くの友人に聞いてみた。
誰も知らないと言う。

これは変質者か、はたまた不審者か。
女の子もいて、この企画の言い出しっぺである私には監督責任がある。

何かあったら事だと思い、その男に声をかける。

「何?」私は少し威嚇気味だったと思う。

「あの、これ頼まれて」

頼まれて、の「れ」のところで食い気味に後ろから
「オソイオソイ!!」とある女が寄ってきて、
男の両手から大きいビニール袋を奪い取りまた戻って行った。

一瞬だった。
一つだった疑問が二つになった。

「あれは何なの?そして君は何なの?」

私はさっきの監督責任で尋ねているトーンとは打って変わって
弱気の疑問を不審者に投げつけた。

不審者は語る。
「ここで花火やってるんだけど、花火とお菓子とお酒が足りないから買ってきてって言われて。」

まずここにいる理由はわかった。

「あ、そう。で君は誰なの?」

この不審者、名を「ウルフ」と名付けた。
体毛が濃いからだ。

ウルフはさっき「オソイオソイ!」と寄ってきた女に惚れていて、
いいように扱われている男だった。

ウルフを私たちのテーブルに呼び、ジュースを振る舞った。
経緯を聞いて私は腹が立った。
ウルフは知りもしない団体の花火とお菓子とお酒に
自腹を切って買い出しさせられていたのだ。

私は「オソイオソイの女」のことはよく知らなかったが、
ファミレスなどの集合の時
しょっちゅういるもんだから気にもとめていなかった。

誰が最初に連れてきたのかなんてもう問題ではない。

単純にこんな失礼なヤツがこの中にいたということが問題である。
「ありがとう」の一言もなく、紹介もせず、
モノだけ取って行くような輩がいたとは由々しき問題である。

私は怒り心頭でその場に居たくなかったし、

あの「オソイオソイ女」のせいで台無しだと思った。

撤収の指示を出し、ウルフに自腹を切った分の金を返す。
そして来てくれたお礼を言った。

その後私は撤収の管理をピストルに任せ、
ウルフを連れてファミレスへ行った。
ウルフは自身のことを話してくれた。

ウルフはスーパーの野菜コーナーでアルバイトしていた。
私はやるせなくなった。
ウルフはウルフ自身の人生を諦めているようにみえたのだ。
まるで師と出会う前の私のように。
彼は自由奔放な私を羨ましそうだった。
このウルフとはほぼ毎日同じ時間を過ごすこととなり、
他の面でもかなりお世話になるのだった。

そして私はその花火に来ていた女の子と
なんやかんやでつがいになった。


そして相変わらず師といっしょにアダルトショップでバイトをしていた。
そこである事件が発生する。

その頃私は引っ越したばかりの実家に戻ってはいたが、
前と同じように寝床としての認識しかなくほぼ家にはいなかった。
実家の状態や家族の状態には無頓着であった。
その結果最悪の過程をたどることとなる。

私が寝るために家に戻ると母親の様子がおかしい。
久しぶりに飲みに出たようだ。
酔っている。

母は酔うと攻撃的になる。
罵詈雑言の数々や例のごとく父の実家の気持ち悪さを
マシンガンのように撃ちまくるのだった。

気付いた時には常習化していた。飲み歩き、父と言い合いになる。
私は二人を避けるようになった。

しかし母は私をしつこく追求する。
自分がこれまでどうやってきたか、私に対してどういう投資をしてきたか、それなのにあなたはどうしてそうなのか、など。

あまり大きな声では言いたくないが気を引くために
自殺未遂の真似事をした時もあった。
私はうっとおしかった。

まぁ毎日飲み歩いていれば金もなくなるのは当たり前で、
今度は金がないから何処へも行けない!ストレスが溜まる!
と暴れ出すのだ。

私は金を渡した。


そういうことでしかその場を解決する方法がなかった。
その解決法は裏目にでることとなる。

金を渡すと母は上機嫌になり、飲みに出かける。
金がなくなる、暴れる、金を渡す、飲みに出かけるの悪循環。

私もアルバイトの身でそんなに芳醇な資金があるわけでもない。
そこをつくときもある。
その時はもう家にいないのが一番だ。
寝床さえも信用ならなくなってくる。

そんな日が幾日か続き、私も限界だった。
形が変わっただけで、
お年玉や小遣いを奪っていた時とやられていることは変わらなかった。
ただ、もう戻ってこない金であるということを最初から
わかっていられるのは逆に清々しい気分ではあった。

私が金を渡さなくなって少し立った頃、
母は私のバイト先に押しかけた。
ちょうどその時私は休みで店にはいなかったが、私の師が対応した。

どこで嗅ぎつけたのか、私と師の関係を知っていたのだ。
そしてあなたが息子をおかしくしている、と店と師に因縁をつけたそうだ。
結局言いたいことはおそらく息子に渡す給料を渡せ
みたいなことになるのだが師は断固として聞き入れなかった。
当たり前である。

そういう事があったと次の日、師から聞かされる。
師は私の母に「あの子がああいう状態なのはあなた方のせいではないか。」と結構攻めた態度で挑んだらしい。

うちに帰ると母はだいぶ錯乱というか発狂というか
ヒステリックになっていた。
自分の糸が括ってあるはずの操り人形はすでに別の誰かのものだったという事がどうしても気にくわないらしい。

もう金を渡しどうかなるレベルではない。
私は、冷静に考えてみた。

一つの結論に至った。

お酒の量も増えていたし、躁鬱が激しかった。
よく知らないが、定期的に脳神経外科に通い、
自律神経や他にも複数の薬を飲んでいたようだ。

自分があまり褒められた生活を送っていない上に実家を避けていたせいで、なかなかたどり着く事ができなかった結論。

それは母が心の病なのではないかという事である。

私は初めて父に進言した。
「母を精神的な病院へ診せた方がいい。」
父は苦い顔をした。父は断れないはずだ。

母は父のクレジットカードを使ったり、
生活費を飲み代に使われたりしていた。
酔っ払っては意味不明な事で暴れ回り、自殺未遂の真似事も起こす。
どんどんエスカレートしているのは誰の目から見ても明らかだった。

しかし父の答えは「No」だった。
「そういう病院に行っている事が実家や親戚、近所に知れると良くない」という事だそうだ。
父は母の状態より「世間体」を選んだのだった。

また「世間体」である。

私はこの家はもうダメだ、と思った。

家はあるが、もう家庭はない。

もう家族にはなれない。

とっくの昔にこの家は死んでいたのだ。

経済的に沈むことはない、しかし心が沈む。
ここにいては一生自分が納得した人生を送ることはできないだろう。

私は今でも、仕事先が母や父にバレるのが嫌で、
また押しかけれれるかもと思うとなかなか
表に出るような仕事を選べない。

私は師を含め他のスタッフや店に迷惑がかかることを恐れ、
バイトを辞めることにした。
と同時にこの家をでる決意をした。

住む家や仕事など何も決まっていない。
だが一刻も早くこの家から出なければいけない。

そしてついに、ホームレスの世界が目の前に広がるのだった。

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