勉強会vol.3 「館山市内での『モデルコミュニティ協働運営事業』企画書」|三田啓一著
第三回の課題図書はこれまでと少しテイストを変えて、一般販売されているものではなく、館山在住の行政学の専門家である三田さんが書かれた「館山市内での『モデルコミュニティ協働運営事業』企画書」を取り上げて、三田さんとのディスカッションがメインの回となりました(3月開催)。
参加者はこれまでで最も多い行政7名、民間8名!
本書の内容について
本書の内容について、前回の投稿で今回のプレゼンターのひがしさんがまとめていただいていますので、そちらをご覧ください。
次回の要点整理『館山市内での「モデルコミュニティ協働運営事業」企画書』|三田啓一著
ざっくり内容をまとめると
・市民参加の段階を3段階で見ると、館山市では市民の関与度は最も低い行政主導の市民参加の段階にある
・市民参加を高めるためには、小学校区を基準としたコミュニティ活動にヒントがある
・自治体はコミュニティ運営組織のサポートを行う戦略本部の役割を果たす必要がある
などといったようなものでした。
ディスカッション
ディスカッションの中でいくつか印象に残ったものをあげます。
・(現在の館山市の市民参加の段階では)ほっておいて勝手に市民がまちづくりに取り組むことはない。まずは市がおぜん立てする必要があり、それによる活動を続ける中で市民性が育ってくる。(三田さん)
・市役所の職員個人が地元コミュニティにコミットしているかは、昔と異なり今は個人によって関与度が大きく異なる。
・行政の事業は担当者のやる気などに拠るところも大きい。担当者の異動によって変わったり、市役所内の担当組織が統廃合などすることで取組み度合にも変化がでてしまうこともある。
・館山市の特徴として自治会・町内会加入率85%という高さがある。これをうまく生かすことが必要だが、市民の方はただ、何のために自治会・町内会があるのか、どうやったら市民参加につながっていくのかがよくわかっていない部分もある。
・昔は、地域のコミュニティでコンセンサスを得てから市役所や議員に話をあげており、市民の意見を吸い上げる経路がはっきりしていた。現在は価値観の多様化などもあり、政策のプライオリティをどうするかの判断などが難しくなってきている。
・自治会・町内会等がコミュニティ運営組織として活動する場合、誰が組織をマネジメントするのか。区長などは1,2年で変わってしまうため、運営の担い手に何らかの教育や勉強が必要。
・コミュニティ運営組織の担い手について、人が減る中でさまざまなコミュニティ活動が特定の人に集中してしまっている。
・現在ちょうど小学校・公民館再編を行う中で小学校区単位で説明会を行っている。小学校区単位でのコミュニティ活動についての参考になる可能性があるのではないか。
などなど。さまざまな視点から意見や質問が出ました。
三田さんからお話があった中で印象的だったものとしては、
・自治体から市民活動をどう仕掛けていくかという点で、コミュニティカルテという手法を活用して、それを総合計画へのリンクしている自治体もあるとのこと。
参考:神戸市 https://www.city.kobe.lg.jp/documents/15529/20161212130705.pdf
・各地の先進事例についての情報を収集するために、「D-ファイル」などの情報誌・情報サイトを活用することが重要であるとのこと。(ちなみに館山市では時事通信社の「iーJAMP」を活用しているそうです)
https://www.imagine-j.co.jp/dfile.html
レポーター感想
レポーター個人の感想です。
民間と行政の役割に関する考え方を変えること、これは過去2回の勉強会でも言われてきたことです。ただ、その変化を進めるためには最初の段階で行政がうまくきっかけをつくることも必要だということを今回学びました。
また、行政と同じく従来の地域のコミュニティ運営組織は、数年で役員が変わってしまいます。個人に拠らず組織として活動を継続的なものにしていくためには、市民参加に関するシチズンシップ教育のようなものも重要となってくるのではないでしょうか。
加えて、単なる議論に終わらせずに具体的な活動に移すことを考えると、今回は行政セクターと主に市民セクターという分け方がなんとなくの前提になっていましたが、民間セクターのうちの企業セクターもうまく活用していくことで、コミュニティの人手不足や活動の継続性、お金の問題など解決する一つの可能性があるのではないかと感じました。
さて、今回はゲストをお呼びしての特別回でしたが、これからもまたこのような形で行うのも面白いですね。
次回4月は、明石市長の泉房穂さんの「社会の変え方」を課題図書に議論を行います。お楽しみに♪
みぞぐち