キャリアパスとキャリアデザイン(その2)
前回の記事からの続きです。
令和元年の年末から行った介護職員さんとの面談で、
『経験年数が長くなる』=『管理職』を望む人は少ない、ということを実感しました。
企業(法人)側が「経験を重ねるごとに、こうなってほしい」と求める一方通行ではなく、
職員さん自ら
『私はこの先、○○で、△△を大事にして、□□な働き方をしたい』
と考えながら働ける職場環境を作りたいと思ったのです。
実は、それとは別に考えていたことがありまして。
※私の頭の中を整理するために、やや説明が長くなっております…すみませんがお付き合いください😓
それは、『毎年1〜2名は新卒者を採用する』ということです。
「なんだ、そんなことか…」と思われるかもしれませんが、これには理由があります。
特別養護老人ホームは入所者さんの定員が決まっています。
職員は「入所者3人に対して1人」などという人員配置基準があります。
収入がほぼ決まっていることもあり、人員配置基準を大きく上回る職員を配置することはできません。
単純に考えると、4月に新卒の職員を1人採用するためには、1人退職するか他部署に異動する必要があるのです。
そうまでしてでも、新卒者を採用したい理由。
それは、職員のスキルアップにつながると思うからです。
人は何かを誰かに教えるとき、「教える内容」をよく知っていなければなりません。
それまで自分の頭の中で「なんとなく」していたことでも、他人に教えるためには、「なぜこれをするのか(こうするのか)?」という「根拠」を説明しなければうまく伝わりません。
結果的に、今まで自分がしてきたことを振り返り、「勘や経験」でしてきたことを見直し、「根拠」を持った介護・支援ができるようになると思います。
この流れがなければ、
「なんでAさんには○○してるんだっけ?」
「さあ? 前からだし、みんなしてるからいいんじゃない?」
という雰囲気になってもおかしくないと思います😰
新卒者や中途採用者、そして実習生など、外部からの「まっさらの視点や価値観」を入れることが大事だと思うのです👍
ちなみに私は、新人指導は2〜3年目の職員が担ってほしいと伝えています。
※5年目以上のリーダーさんたちは、指導する職員をフォローする役割です。
「指導する」のがメインではなく、年齢や入社年が近い職員からだからこそできるアドバイスや悩みの共有を期待しています。
そして、仕事を一通り覚えた2〜3年目の職員が、他者に伝えることでさらに成長できるように…😉
さて、前置きが長くなりましたが…
・新卒者を毎年1〜2名採用したい
・そのために、いま在籍している職員が他部署に異動する必要がある
・異動する理由については、職場都合ではなく、職員本人の「キャリアデザイン」を踏まえて考えていきたい
この案を施設長をはじめ、他部署の責任者に説明しました。
特に理解してもらい、連動して動いてもらわなければならない部署は、
デイサービスと地域包括支援センターでした。
理由は、どちらも「職員の定員があること」です。
この2つの部署以外であれば…
例えば、訪問介護や居宅介護支援事業所は、職員が増えた分だけ利用者を増やすことができます。
「そちらの部署で働きたいです」
「どうぞ、どうぞ」
となり、何の問題もありません☺️
ところが、デイサービスは利用者の定員がありますから、特養と同様に職員の配置基準があります。
地域包括支援センターも行政からの委託費に応じた職員以上の配置は難しいです(法人が大幅な赤字を覚悟すれば話は別ですが)。
「半年後に、特養からデイサービスに異動希望があります」
と伝えた場合、デイサービスの職員の誰かが他部署に異動する必要があります。
予想していた通り、ここで少し難色を示されました。
いわゆる『部分最適と全体最適』です😕
「今いる職員は、業務を理解しているし、利用者さんと信頼関係ができている。わざわざ異動して職員を入れ替えなくても…」
はい、その通り。
それは、特養もデイサービスも同じ理屈です。
1つの部署だけを考えると、その部署の管理者や職員にとって「慣れた職員同士」で働く方が都合が良いと思います。
ここが『部分最適』ですね。
では、『全体最適』の視点で各部署を見ると、どんな課題があるのか…?
「介護福祉士」の資格を持つ職員も、所属する部署によって身につけなければならない能力や、求められる業務は違います。
特養であれば、食事・排泄・入浴・移乗などの身体介護や認知症ケアを中心に身につけることができます。
反対に、調理や掃除などの生活支援はしませんし、レクリエーションもほぼありません。
訪問介護は(管理者談)、家事などの生活支援が6割、身体介護は4割。
主治医やケアマネ、他のサービス事業所の方々との連携を学ぶことができる。
その反対に、排泄介護(尿パット交換)をする機会が少ない(あくまでうちの事業所の話)。
そして、移乗用リフトなどの福祉用具が利用者さん宅にないことがほとんどであり、未だに抱え上げる介護が多い😰
実は介護保険でレンタルできるリフトもあるが、ケアマネも知らないことが多く、活用されていない。
デイサービスでは、食事・入浴・排泄に加えて、送迎時の家族との関係作りも必要な能力です。
事業所にもよりますが、レクリエーションや介護職員であってもリハビリ(機能訓練)の知識が必要になることもあります。
足りない点で言えば、常に日中の利用者さんしかケアしていないので、夜間の様子などはわかりません。
例えば、食事・入浴・排泄介護の能力は高いが、レクリエーション技術が足りない特養にデイサービスから職員が異動すれば…
食事・入浴・排泄の機会が少ない訪問介護に、特養から職員が異動すれば…
介護予防から看取りまで、法人全体でより良いケアができるのではないか👍
そんなこともぼんやり考えてました。
特養の主任さんたちとの会議でもこの考えを説明してきました。
「慣れた職員がいなくなるのはつらいなぁ…」
とボヤキはありましたが、概ね賛成してもらえました😆
利用者さんが住み慣れた地域で暮らせるように、法人全体で支援する。
その方針を法人が主導して職員配置を決めるのではなく、
法人理念と職員1人ひとりの働き方や思いを掛け合わせて、
「私は今は○○のところを担うんだ。そして経験を積んだら、△△ができるようになりたい」
「今のところ別の部署で働きたいという希望はないけど、今の部署で○○を取り組んでいきたい」
「出産して、働く時間が短くなっても△△をしたい」
と主体的に考えて行動できるようになればいいなと…
それを実現するための第一歩として、昨年4月からある取り組みを始めました☝️
またまた長くなったので、次回に紹介したいと思います。
まとまりのない文章に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました🖐️