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【#読書感想文】罪の声

※ネタバレはありません、ご安心ください☺️


この物語は、未解決事件である「グリコ・森永事件」をモデルに書かれています。

京都でテーラーを営む曽根俊也。自宅で見つけた古いカセットテープを再生すると、幼いころの自分の声が。それは日本を震撼させた脅迫事件に使われた男児の声と、まったく同じものだった。一方、大日新聞の記者、阿久津英士も、この未解決事件を追い始めー。


物語の主人公である曽根俊也は、カセットテープを再生させると

「きょうとへむかって、いちごうせんを…にきろ、ばーすーてーい、じょーなんぐーの、べんちの、こしかけの、うら」

という声が流れます。

※僕もyoutubeで聞きましたが、幼稚園児くらいの声でした。

「これは、自分の声だ」

と衝撃を受けたところから、物語は始まります。

自分や家族がこの事件に関係しているのか?

その疑問・不安から、亡くなった父親の友人とともに、事件に関わったと思われる人を調べ、訪ねます。

その行動は、大日新聞の記者である阿久津氏も同じ。

当初は、事件の真相解明を目指していたものが…

訪ねた先で話を聞くうちに、

「犯人たちは何が目的だったのか?」

という、犯人の動機や背景に焦点が当たり始めます。


あれだけの大事件であったのに…

あれだけの大事件であったとしても…


原点は、人間の欲望や思想がきっかけになるのかもしれません。


僕が面白いと思ったのは、事件の真相解明だけでなく、

事件に関わった加害者と関係者の心情が丁寧に描かれていたことです。


怒り、絶望、後悔が巡る中での、

「僕は…、母親を…、母を置いて逃げてしまいましたっ」


カセットテープの声だけでなく、

絞り出すようなこの告白もまた「罪の声」なのだと思います。


物語の終盤に、新聞社のデスクが言った言葉。

「俺らの仕事は素因数分解みたいなもんや。何ぼしんどうても、正面にある不幸や悲しみから目を逸らさんと『なぜ』いう想いで割り続けなあかん。素数になるまで割り続けるのは並大抵のことやないけど、諦めたらあかん。その素数こそ事件の本質であり、人間が求める真実や」


未解決事件がモデルになっているからこそ、余計に重みを感じた言葉でした。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。







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