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詩『箱』

死にたい、ではない。
消えていなくなりたい、ではない。
受け皿無く情動が零れ落ちていく。
気楽に生きろ、とは随分と無責任な言い分だ。
死ぬ覚悟があるなら何でも出来る、
とはおめでたい話じゃないか。
分かち合いの精神が大切だろう。
毎秒1.8人が死んでいくこの世界では。

時計の針の刻む音がする。
電池は疾うの昔切れたのではなかったか。
この箱の中にいるのは私一人だった。
時間を気にする必要はもはや無いだろう。
前に進んでいるつもりが後ろに進んで、
そもそも最初から前も後ろも無く、
四方は壁で覆われているのだから。
本人は悲劇のつもりでいるが、
はたから見れば喜劇でしかない。
いよいよおめでたい話じゃないか。

準備を進めようかい。
決して衝動ではない。
産まれた時から計画は固まっていた。
この箱の中では覚悟も何も無い。
正当化する理由も必要無い。
私は私を追い込まなくても、
最初から身動きが出来なかったのだから。

それでもひとつ祈ろうか。
どうかこの人生に価値がありませんように。

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