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詩のようなもの

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小説の合間に。
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2021年12月の記事一覧

詩『煩悩』

吐瀉物が通路の真ん中を流れていく。それは此方と彼方を分断する。吊り革につかまる少女の手首…

詩『変なおじさん』

暮れも押し迫ったある日の夕方、友人夫婦の家を訪れる。団欒に加わり、夕餉を共に取りながら、…

詩『通勤電車にて』

この電車、昨日も止まりましたよね。いや、昨日だけじゃない。一昨日もその前の日も止まりまし…

詩『アレクサンドルと亡霊』

大人たちがうさぎを奪いに来たから私はトイレに行けず部屋の真ん中で失禁した。お母さんは部屋…

詩『イカロスの墜落のある風景』

闇に溶けた足を見てそこにある骨を意識した。無音に耳を傾け、寿命を迎えた細胞が寂しく火花を…

詩『紛い物』

ねえ、教えて。 紛い物ではなく本物の愛を。 大好きだから。 嬉しい、優しいんだね。 3マン出…

詩『生産性向上』

我々の工場は、ライン方式からセル方式に切り替え、生産性が著しく向上しました。従業員は野生の猿同然でしたが、今では考える葦になったのです。 ほら、顕微鏡を覗いてみてください。卵子に着床した胚は細胞の分裂を繰り返しています。これらは将来のサイコパス予備軍です。 製品にはランダムに欠陥を埋め込み個性を作っています。個性とは差異であって質ではありません。我々は品質という概念を超越し、今では全てが許されるのです。 そう言うと工場長は跪き、涙を流しながら地面に口付けした。その背後か