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詩『アレクサンドルと亡霊』

大人たちがうさぎを奪いに来たから私はトイレに行けず部屋の真ん中で失禁した。お母さんは部屋の隅で手を合わせて拝んでる。ウケる。『ファニーとアレクサンドル』のDVDを流しながら私は踊って、そうだわ、部屋の模様替えをしなきゃと思って、壁に塗る絵の具がなかったから、醤油をボトルごとまいたの。あとからサラダ油もまこうと思ったけど、お母さんが警察に通報して、盾を持った人たちが窓の外にいるのが憎たらしくて、子が苦しめば一緒に死ぬのが親の務めですと毅然と言ってやりました。私、ため息を聴き逃さなかったの。だから、お返しにうさぎの首を締めてあげたわ。『ファニーとアレクサンドル』の次は何を観ようかしら。そしたらお母さんが私を指差してまるでこの部屋はタルコフスキーの『鏡』みたいね、って言うのよ。そんな馬鹿な話あるかしら。お母さんほんと理解していないわ。あなたはアレクサンドルで、私は亡霊なのよ。

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