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読書記録 - 我孫子武丸 「殺戮にいたる病」

蒲生がもうみのるは、逮捕の際まったく抵抗しなかった。
樋口の通報で駆けつけた警官隊は、静かに微笑んでいる稔にひどく戸惑いを覚えた様子だった。彼の傍らに転がった無惨な死体を見てさえ、稔と、これまで考えられてきた殺人鬼像を結び付けるのは、その場の誰にとっても困難なことだった。

(エピローグ)

我孫子あびこさん、あなたね……書きゃ良いってもんじゃないのよ。

ドス黒い気分を味わいたいなら

犯人の逮捕シーンである "エピローグ" から幕を開けるサイコスリラー。

  • 犯人の蒲生稔

  • 息子から犯罪の匂いを嗅ぎ取る蒲生雅子

  • 友人を殺された元刑事: 樋口武雄

という3人の視点で、時系列を前後しながら物語が進行していきます。

たまにはホラーも読んでみようと、軽い気持ちで読み始めたのが間違いでした。

グロ注意にもほどがある。
ホラーというより、ただただキモい。エグい。救いようがない。

なんせ死体を弄ぶ現場が犯人視点で克明に描かれるので、そういうの苦手な方はマジで読まない方が良いと思います。

最後の1ページまでキモい

「なぜ犯人逮捕のシーンから始まるのか?」
僕は非常に疑問でした。

だって結末を先に見せちゃうってことは、ある意味損してるわけです。
犯人もわかってしまう、その犯人が逮捕されることまでわかってしまうでは、「最後どうなるの?」というドキドキがありません。

でも最後の1ページまで読むと、それがわかる。
まるでテレビの電源を落とすような、余韻なきラストは鮮やかで、素晴らしいの一言。

この小説に「美しい部分」があるとすれば、それだけです。

舞台は1990年代初頭

最後に読む際の注意点として、時代背景を挙げておきましょう。

この世界にはスマホも携帯も登場しません。
それもそのはず、単行本の刊行は1992年9月。
「NTTドコモ」の誕生が92年だったことを考えると、まだ携帯電話が普及していないのも当然でしょう。

それを念頭に入れて読めば、全体からなんとなく漂ってくる古さや、スマホが登場しない違和感も納得できるんじゃないでしょうか。

つまりどんな小説?

吐き気がする。おすすめ。

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