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あの頃。 男子かしまし物語 〜アナザースカイ〜

劔幹人さんのコミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』が松坂桃李主演で映画化という、リアルに「言ってる意味が分からない」と言いたくなるニュースにハロヲタ界隈は騒然となった。

『あの頃。』は、何もなく、何者でもなかった若き日の劔さんが、ある日、友人から貰ったCD-Rに焼かれていた(「CD-R焼く」とかいう表現が既に懐かしいな)松浦亜弥のPVを観てハロヲタになっていく青春コミックエッセイだ。

映画化が発表された同時期に『推しが武道館いってくれたら死ぬ』というアイドルオタ女子の日常を描いたアニメが始まった。そのエンディングテーマが松浦亜弥の『♡桃色片想い♡』だった。

令和に生きる新風世代に向けて、小手先じゃない本物を再評価する流れが来ているのかもしれない。

松浦亜弥で始まる『あの頃。』

劔さんが大阪で騒いでいた時、僕も東京で同世代のハロヲタ仲間と2ちゃんやmixi経由で日夜ワイワイと遅い青春を謳歌していた。

『あの頃。』にも登場していた「ヲタ芸四天王」のひとりは僕の友達だ。

当時、2ちゃんの狼板は全盛期で「狼こそが2ちゃんを動かしている」と錯覚するくらい多くのクズが集まって、出来たばかりのハロープロジェクトをネタに騒ぎまくっていた。

コンサート開演のはるか前に会場周辺に集合し、ラジカセでハロプロの曲をエンドレスリピートさせながら氷結を飲んで酒盛りして上半身裸になってヲタ芸していた。わずか10数年前なのに、おおらかな時代だったと呆れてくる。

大学のイベントで爆音でハロプロかけてヲタ芸したり、ライブハウスで「爆音娘。」と銘打ってDJイベントをし、その光景をテレビで取材されて「やべー!やべー!会社にバレるwww」とか、それは『あの頃。アナザーVer.』と言ってもいいくらい劔さん達と同じような有様だった。

名前も年齢も職業も性別も気にせず、ただ「ハロプロが好き」という共通項だけで集まった大の大人たちだった。

ハロプロ界隈で伝説となっている「SSAけやき広場100人ロマモー」という動画があるが、僕らもその場に居た。居た、というか完全に当事者だったんだが、僕らはあの動画には一切映っていない。

なぜか。

あの時間、あのロマモー終わりで僕らは「51er工房」というユニットとしてBerryz工房のデビューシングル『あなたなしでは生きてゆけない』の振りコピ(今で言う「踊ってみた」)を披露することになっていた。そのための最後の確認を集まってやっていたから、あの映像に僕らはいない。

彼らの騒いでいる奥の方で必死に練習をしていた。

なぜ、そんなことになったのかは完全に悪ふざけの延長でしかなかった。『あの頃。』でも描かれているが「デビューしたての小学生たちを推す」という行為の正当化をしていたのかもしれない。

「大人が小学生のダンスを本気で踊る」というのが目的なんだと、「雅ちゃん可愛い!」なんて本気で思っていませんよ、という世間体へのアピールだったのかもしれない。

だが、どちらにせよ小学生アイドルのコンサートに笑顔で参加している20代は世間からしたらヤバい。

知ってる。

でも、そんな悪ふざけが楽しくてしかたなかった。

あの日、けやき広場で披露した『あなたなしでは生きてゆけない』は、今でも良い思い出だ。何十人もの前で踊ることの緊張感と達成感は、本当に良い思い出だが、同時に動画が残っていなくて良かったと心底から思っている。

あの頃、劔さんが救われていたアナザースカイで、僕らもハロプロに救われていた。

来年公開する時、映画館で僕はどんな気持ちになるだろう。あの頃を思い出して恥ずかしくなったり、切なくなったり、懐かしくなったり、色んな感情が押し寄せてきそうだ。

エッセイではモーニング娘。の大名曲『恋ING』が何度も出てくる。確実にキラーソングとして劇中でも流れるだろう。

僕も大好きな曲だから、流れたらイントロで泣く自信がある。

そしてラストシーンに流れる曲は何だろうか。

やっぱり『♡桃色片想い♡』だろうか。

それとも劔さんがハロヲタに復帰した切っ掛けでもある道重さゆみの代表曲『歩いてる』だろうか。

うん。『歩いてる』だったら号泣しそうだわ。


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