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「ネットに秘密なんてない」では、アイドルの捌け口はどこにある?

つばきファクトリー小片リサの活動休止が発表された。

今回の件、アンジュルムで現在活動休止状態になっている太田遥香と似ているSNS絡みの問題だ。書いていた内容に関しては、アップフロント社長の西口さんが(文面から滲み出る)優しい口調で「愚痴をこぼすことは誰にでもあることです」と表現しているように日々の活動における完全な愚痴だ。特にサブリーダーというポジションで、かつ下積みも経験し苦労もしてきた彼女らしいストレートな怒りや苛立ちが全面に出ていて、むしろ人間らしくて、普通の女の子らしい心の在りようだと好感すら持った。

ただ、それを吐き出す場所を間違えていた。キチンと理解してSNSを使っていなかった。ただそれだけだと思う。

ハロプロ好きなライターの小沢あやさんも即反応してnoteをアップされていたけど、僕としても外部カウンセラーは芸能事務所には必要だと思う。日本ではカウンセリングに対するハードルはいまだに高い。カウンセリングにかかると言うと「精神状態がおかしいんじゃないか、心が病んでいるんじゃないか」と思われるし、僕も少しそういう偏見はあった。

現在、僕もカウンセリングを定期的に受けている。ちょうどコロナ禍で色々と悩むことが大きくなって体調も崩してしまった5月くらいに持病の掛かり付け医師から勧められて受けることになったんだが、カウンセリングを受けて良かったと最近は思うようになっている。

カウンセリングって僕も勘違いしていたんだけど、何かカウンセラーから助言を受けたりするのがメインではない。どちらかというと自分が思っていること、悩んでいること、整理が付かないモヤモヤなんかを吐き出すことが主軸だ。そして重要なのが「自分と利害関係のない第三者」という立場にぶつけるということだ。

どうしても身近な存在や、例えば会社の上司や同僚では言いにくいこともある。だけど、完全に自分の生活と離れた場所の専門家に話すだけで考えがまとまったり、漠然としていたものが見えてきたりする。自分が何を恐れ、何に怒り、何に迷っているのか、それがフワッと形になって見えてくる。

しかも自分が喋っている間、カウンセラーが茶々入れすることもないし、頭から否定もされない。とにかく支離滅裂になりながらも思いのたけを喋ることでクリアな思考が生まれてくる。

面白いと思った。

この感覚は、ちょうど去年の同じ時期に感じたものと似ていた。

元アンジュルムリーダー和田彩花がソロ活動を開始したばかりの頃に開催された30人限定の座談会に参加した時のことだ。この会では参加者がそれぞれ「自分が選択する切っ掛けになった一冊」という本を持ち寄って発表する時間があった。

生い立ち、境遇から今の仕事の事、自分の悩みや性格の事を話しながら、人生で迷った時に出会った一冊や切っ掛けの一冊を紹介していった。ある人は感情の昂ぶりが抑えられなくなって泣いてしまったり、言葉に詰まってしまうこともあった。

でも、そんな時もあやちょは身を乗り出してジッと見つめて優しく微笑んで見守っていた。途中でこれはセラピーみたいだなと思った。アメリカの映画やドラマで薬物依存者や犯罪被害者の会とかで車座になって自分語りをして、拍手で終わるやつ。いつも見ててピンときていなかったんだけど、自分が似た状況に参加していて分かった。

否定ではなく無条件の肯定の共有というのは一定の癒やしになる。

当時の僕はそう記している。今、カウンセリングを受けて感じる気持ちはまさにこの時に似ている。

一般人の僕だって辛いこと、しんどいことは山ほどある。ステージに立って何百何千、何万人の他人に観られ、評価され、時に謂れのない誹謗中傷や嫉妬、やっかみに晒されるような芸能人、スポーツ選手なんか僕らからしたら毎日が想像を絶するプレッシャーだろう。しかも10代20代の多感な時期の少年少女なんて、そんな状態で心のバランスを取れる人間の方が少ないと思う。

だから安易に裏垢というもので愚痴を溢したりしてしまう。SNSが身近になり過ぎている為にインターネットの怖さ、ネットリテラシーを身につけずに(裸でとは言わないが)下着姿で街をうろついているのと同じレベルの危険を冒してしまっている。

小片リサも謝罪ブログで

誰にも見られない場所で書いており、
なぜこのようなことになったのか私自身困惑もしておりますが、
そもそものきっかけを作ってしまったのは間違いなく私自身です。
https://ameblo.jp/tsubaki-factory/entry-12630275589.html

と書いている。

そもそもこれが完全に認識を間違えている。彼女のプライベートアカウントには鍵もかかっていないし30人以上のフォロワーがいた。決して誰にも見られない場所ではない。その30人は友達や知り合いだったかもしれないが、絶対に友達が裏切らない保証なんてどこにもない。

吉田豪のSHOWROOMにタイムリーなゲストで現在はZOCで巫まろとして活動している元アンジュルムの福田花音が出ていた。

その中の質問コーナーで「アイドルの裏垢について」というお題があった。それに対する回答で、まろさんの金言がさく裂した。

ネットに秘密なんてない。

本当に見事なパンチラインである。彼女は更に「アイドルは基本的に皆、見る用とかでプライベートアカウントは持っているはず」とも言っていた。まあ、今どき当然だろう。そしてある程度は事務所なども黙認しているんだと思う。ただし「問題は起こさない」という前提は暗黙でもあるはずだ。

話題のNiziUプロデューサーJ.Y. Parkも同じようなことをオーディションかなにかで話しているのを見た。

カメラの前で出来ない言葉や行動は、カメラがない場所でも絶対にしないでください。気を付けようと考えないで、気を付ける必要のない立派な人になってください。

流石、韓国のつんく♂さんだ。まさに金言である。

では、今回も件にしても今後アイドル業界、いや芸能界全体に必要なことは何か。まず「ネットリテラシー教育の徹底」そして「定期的な外部カウンセリングの実施」この二点な気がする。

最近の相次ぐ訃報も含めて、もっと正しい知識と心のケアは急務だと思う。特にコロナ禍においては人間らしく心豊かに暮らすこと自体が大変な時も多い。そんな時にちょっと逃げ込める場所や気軽に開放できる場所を作ることが大切なんだと思う。

今回の騒動を通してあらためて痛感した。

最後に小片リサという子は、つばきファクトリーにとっては決して欠かすことの出来ない子だと思う。彼女の滲み出る哀愁は、モーニング娘。リーダー譜久村聖に引けを取らない唯一無二なものだ。つばきファクトリーとつんく♂曲が妙に相性良いのも彼女の存在あってこそだと思う。

戻ることも色々と大変かもしれない。だけど、周りも含めてうまくフォローしてあげて、出来ることなら戻ってきて欲しい。まだまだ、つばきも花を咲かせていないはず。

今回のことは、それこそピッタリな曲がつばきにはあるじゃない。

また明るく「ガハハ」と笑い飛ばして復活する小片リサを楽しみに待ちます。でも、無理はしないでね。


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