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フットボール観戦的ハロプロの楽しみ方

「ハロプロの追っかけをしていて何が楽しいの?」そう問われる事がある。「可愛いから」「歌が好きだから」「ライブが楽しいから」答えとしては様々あると思うが、個人的にずっと変わらないスタンスとしてあるのが「サッカークラブのサポーターと同じ感覚で見ている」という事だ。

僕はハロプロ好きと共にJリーグ名古屋グランパスのサポーターでもある。1993年の開幕以来、一貫して地元のグランパスを応援している。高校を卒業してすぐ上京し、すでに地元生活より東京生活のほうが長くなってしまったが、26年変わらず好きでいられるのは「名古屋グランパスというクラブを好きになってしまった」だからだ。

アイドル用語で言うと『箱推し』である。

クラブチームの応援を長年していると選手個人よりもクラブ全体を見るようになっていく。所謂「ウチ」理論という思考が生まれてくる。

重度のサポーターになればなる程、自分の立ち位置がクラブの外側ではなく内側になり「ウチの選手は」とか「ウチのクラブは」と言い出すのだ。そしてハロプロを見る場合も僕は同じなのである。

では具体的に何が同じなのか?

1.ユース年代の育成と昇格

サッカークラブの特徴として、各クラブにアカデミーと呼ばれる若手育成の下部組織が存在する。そこで小学生や中学生の頃から育成された選手がトップチームに昇格していくのを見守る楽しさというものがある。グランパスでいうと杉森考起(現在は徳島へレンタル)や菅原由勢(オランダ名門AZへ完全移籍)などがそうだ。彼らの事は12歳くらいから観ている。杉森くんがジュニアユースの頃に優勝した試合は目の前で観て我が事のように泣いたほどだ。

2020年シーズンはGK三井大輝、DFの藤井陽也、成瀬竣平、MFに 石田凌太郎とユースからの昇格組が各ポジションに増えてきた事も嬉しい。

これをハロプロに置き換えると『ハロプロ研修生』がそうなる。

以下、話が多岐にわたってしまうので一番応援しているアンジュルムを中心に具体例をあげようと思う。

そもそもの成り立ちがスマイレージまで遡ると初期メンバーの4人とも当時のハロプロエッグ(研修生)から昇格してデビューした経緯がある。前リーダーの和田彩花は、エッグ時代から合わせて15年間ハロプロ一筋で活動してきて今年の6月に卒業をした。グランパスにそんな選手いないので、サンフレッチェ広島でいうと森崎和幸がそうだろう。ユース年代から合わせると20年以上広島一筋で引退したレジェンドだ。ひとりの人間の15年や20年の歴史を見守る、こんな感慨深い事あるだろうか?

彼女は卒業してからもソロアイドルとして独自の世界観で活動を始めている。美術史を専攻し大学院にまで通う彼女の今後が僕はとても楽しみで仕方ない。

それ以外にも竹内朱莉、室田瑞希、笠原桃奈と多数の研修生から昇格してきたメンバーが現在のアンジュルムの中核を成している。去年は更に太田遥香、橋迫鈴という子達が研修生から昇格してきた。育成時代から成長を見てきた子たちが自分の好きなグループで輝いているのを見る喜び、これはハロプロもサッカーも同様の物があると思う。

ちなみに橋迫鈴ちゃんはアンジュルムでは初の愛知県出身の子だ。地元出身というのは、これはもう無条件で応援してしまうマンである。

2.高卒、大卒選手の成長

ユースからの昇格と共に高校サッカー、大学サッカーを経て加入してくる選手たちもいる。特に最近は育成を地元の大学などと協力して即戦力を作り上げていく事が主流になりつつある。

名古屋グランパスで高卒ルーキーとして大活躍した選手といえば、本田圭佑だろう。ユース出身とは違う感性や考え方、独特の価値観を持っている選手が高卒、大卒選手には多く見れる特徴だと思う。

アンジュルムでも上國料萌衣は4期メンバーとして単独加入した逸材である。当時、他のグループでも研修生からの昇格が大多数を占めていた時期に全くの未経験者が加入するというのは異例だし、アンジュルムにとっては2期の中西香菜以来数年ぶりの事だった。

研修生上がりのメンバーばかりの中で全く経験のない高校生が入るというのは、それだけで刺激になるし、しかもその子がとんでもない逸材だったら尚更だ。上國料萌衣とはそういう存在だ。

個人的には「今のアンジュルムとは、上國料萌衣である」と言い切っても良いくらいだと思っている。

そしてもう一人、7期メンバー伊勢鈴蘭である。

かみこ同様、彼女も普通の中校生で、しかもハロプロの事をほぼ知らなかった。姉がハロヲタだったせいで勝手に履歴書を送られて、なんだか分からないままオーディションに合格して加入した。

伊勢鈴蘭もまた逸材である。

これはもう、一度見てくれとしか言いようもないのだけど、加入の瞬間の動画をまず貼りますね。

バレエが得意な、少し芋っぽい北海道の中学生。そんな印象だった。ただ、「宝塚が好き」というプロフィールを知り、この子は来るぞと思った。

ハロプロメンバーでは歴代、宝塚の観劇が趣味だったり宝塚に憧れている子は伸びるイメージがある。高橋愛、宮本佳林、田村芽実、小田さくら等、実力と華やかさを兼ね揃えたメンバーが多い。魅せる事に特化している宝塚を観て育つ事で自然とパフォーマンスの基礎が養われるんじゃないかと思う。

結果、1年が経ち伊勢鈴蘭は開花している。

新曲『私を創るのは私』『全然起き上がれないSUNDAY』の両方でポイントとなるソロパートを獲得し、『全起きSUNDAY』では間奏のダンスパートでアンジュルムのダンス四天王を従えて堂々とバレエダンスをソロで披露している。

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とにかく華のある子だ。居るだけで存在感が伝わる逸材だと思う、今後が大注目のひとりだ。

3.他のクラブから有望株を引き抜いて育成

ユース、ジュニアユース年代、トップチームになってもサッカークラブは各地にスカウトを派遣して育成年代の有望株を探している。グランパスのDFで宮原和也という選手がいる。現在23歳。彼はジュニアユース時代からサンフレッチェ広島で育ち、高校生ながらトップ昇格した。将来を嘱望された彼だが、20歳の時に当時J2降格が決まったグランパスへレンタル移籍してきた。

広島の宝のような彼がなぜ?

と思ったものだが、逸材の輝きは留まることを知らない。爽やかなルックスと圧倒的な対人スキルに近年はDFながらゴール前まで飛び込んで得点することまで身につけてきた。当然、グランパスは完全移籍で宮原を買い取った。

もっと分かりやすい例を出すと、今話題の久保建英がいる。

彼は小学3年生まで地元の川崎フロンターレに所属していた。当時からテレビでも度々紹介されるほどの天才児だった。そんな彼を世界も放っておかない。わずか10歳にして彼は超名門FCバルセロナの下部組織に入団する。そしてその後、紆余曲折はあったが18歳でFCバルセロナのライバルクラブであるレアル・マドリードに入団した。現在はレンタルでマジョルカへ移籍しているが、先日は初ゴールも決めて順風満帆である。

青田買いは度々問題にもなるが、若い芽を引き抜き育てるのもサッカーの醍醐味だと言えるだろう。

ハロプロも最近は地方でロコドルとして活動していたり、Perfumeや元モーニング娘。の鞘師里保、Juice=Juiceの段原瑠々が所属していたASH(アクターズスクール広島)のようなダンススクールから研修生に加入させて育てる傾向も増えてきた。

ある程度の計算が出来、かつ伸びしろが期待できる子を早くから囲うというのは現在のアイドル市場でも常識となっている。

アンジュルムでは佐々木莉佳子、川村文乃、船木結がそれに該当する。

佐々木莉佳子は2011年の大震災で被災した地元気仙沼を元気づける為に結成されたSCK GIRLSのセンターを小学生の時に務めていた。当時からその容姿が「前田敦子と大島優子を足して2で割ったような美少女」と話題になり注目されていた。

そんな逸材がモーニング娘。オーディションを切っ掛けにハロプロ研修生になりアンジュルムへ加入した。まるで久保建英的な逸材だ。

そして川村文乃。彼女のことは以前書いたnoteがあるので、そちらを読んで貰いたい。

彼女の苦労と努力と決意は生半可ではない。言ってしまえば人生をかけて掴んだ栄光である。

最後に船木結。彼女は更に異質である。同じハロプロ内のカントリー・ガールズから移籍してグループを兼任するという異例の人事でアンジュルムに加入した。これも話しだしたら長くなる。現在、突然のカントリー・ガールズ活動休止が発表され、彼女は活動休止を機にアンジュルム、ハロプロ自体からも卒業することを決めた。

おそらく何もなければ未来のアンジュルム、ハロープロジェクトの中心メンバーになったであろう子だが、世の中なにが起きるか分からないものだ。

最近のグランパスでいうと去年から大学在学中に強化指定選手として出場し大活躍していた相馬勇紀がグランパスの不振と自らの処遇、来年の東京五輪出場という目標の為に突然、鹿島アントラーズに期限付きとはいえ移籍してしまった衝撃にも似ている。

どちらもショックがデカくて心が痛い。

何か僕らに出来ることは無かったんだろうか?ハロヲタとしてもグラサポとしても自問自答の毎日である。

4.成長した選手が海外へ旅立つのを感慨深く見送る

グランパスのジュニアユースで育ち、とうとう日本代表のキャプテンにまで昇りつめた吉田麻也。そして前述の本田圭佑や、今年でいうと同じくユース出身の菅原由勢が19歳でオランダへ旅立った。菅原くんは移籍先の名門AZでも愛され出場機会も得て急成長して、今回めでたく東京五輪U-22代表候補にまで選出された。そして今年、彼はAZに完全移籍をした。実力で名門チームに認められたのだ。

サッカーは世界中で愛されるスポーツだ。だから狭い日本だけじゃなく本場ヨーロッパや南米、東南アジアにアフリカ大陸、どこにでも可能性は広がっている。

アンジュルムには田村芽実という子がいた。

元々小学生の頃からセミプロとしてミュージカルにも出ていたような子が、なんの気まぐれかスマイレージのオーディションを受けて合格し、本人も「アイドルに興味はないけどスマイレージだけは別」という愛情を持って活動していた。

スマイレージがアンジュルムになり、本人も歳を重ねるに連れ持っていた才能が輝きを増していった。観ている誰もが「この子はハロプロの枠に収まりきらない」と思い出していた矢先に17歳で卒業を発表。事務所であるアップフロントからも抜けて本格的にミュージカル女優になる道を選んだ。

現在の彼女は、かつて天才ミュージカル女優と言われた本田美奈子が所属した事務所にいる。そこで着実にミュージカルスターへ前進している。

来年めいめいは『ウェスト・サイド・ストーリー』でヒロインを演じ、『ヘアスプレー』では主人公のライバル役を演じることが決まっている。世界的にも超有名なミュージカルの主演にまでなったのだ。彼女が本田美奈子のように帝劇で『レ・ミゼラブル』に出る日も遠い未来ではないと思える。

こんな凄いストーリーを追える幸せはない。

アンジュルムではないが、同じく17歳でモーニング娘。を卒業した鞘師里保が今年BABYMETALとして世界最大規模のロック・フェスティバルであるグラストンベリー・フェスティバルのステージに立った。

まさかベビメタにサポートメンバーとはいえ加入するなんて思いもよらなかったし、あのグラストンベリーに元ハロプロメンバーが立つ日が来るなんて夢にも思わなかった。元グランパスの選手がチャンピオンズリーグ決勝の舞台に立つようなものだ。

すごい時代になった。

5.OB選手のクラブスタッフ就任を喜ぶ

ハロプロに一番足りていない部分である。

サッカー界では引退した選手がライセンスを取り監督としてクラブに戻ってきたり、経営者としてフロント入りをする事が普通の環境として整っている。グランパスでは、というか日本のサッカー界においてもレジェンドとして語り継がれているドラガン・ストイコビッチという選手がいた。

『ピクシー』という愛称で親しまれた彼が2008年に監督としてグランパスへ戻ってきた。それだけでも僕らは嬉しかったんだが、彼はそこから2年でグランパスをJリーグ初優勝までさせた。クラブ史上初めての戴冠をピクシーと共に達成できたあの日の感動は忘れられない。

例えばジャニースではタッキーこと滝沢秀明があの若さで引退して事務所のプロデュース活動に専念するという衝撃的なニュースが昨年あった。そもそもアイドル活動をしながら『滝沢歌舞伎』などを積極的にプロデュースしていた側面もあったので、必然的な出来事だったと思う。

とても羨ましい。

ハロプロといえばいまだに「つんく♂」というイメージが内外ともにある。だが、もうつんく♂はプロデューサーではないのだ。その経緯は置いておいて、現実問題で空席となっているポジションに新しい風を入れても良いんじゃないかと思う。

つんくは総合的なプロデュースが出来たけど、そんな人間はなかなか居ない。音楽的な側面は現状の制作スタッフやチームで担えば良いと思う。それ以外のアイドルとしてのプロデュースが出来る人材を立たせられないだろうか。ハロプロ全体だと大変かもしれない。ならば各グループごとに立たせるのも個性が出て面白いんじゃないだろうか。

道重さゆみのプロデュースするモーニング娘。とか、絶対にヲタは付いていくだろう。佐藤優樹が突然の卒業と共に電撃就任しても喝采が巻き起こるんじゃないか?

福田花音プロデュースのアンジュルムは、賛否両論になるかもしれないが僕は応援出来るし面白いと思うのだ。

若いから、経験がないから、前例がないから、女性だから。そんなの吹っ飛ばして新しい事をハロプロから発信出来るようになって欲しい。AKB系だって指原莉乃という逸材をキチンと今から育てているじゃないか。

ハロプロが本当の意味で続いて行くためには必要だと思うのだ。

6.スタジアムで生まれるプレーに感動する

様々な経緯や状況によって集まった選手達が名古屋グランパスというクラブを背負って戦う光景、躍動する姿、そして勝利を掴み取る気迫に僕らサポーターは感動する。彼らのプレーの後押しに少しでもなれるように声を枯らしてスタジアムで叫ぶ。

ハロプロの醍醐味も同じだ。

ライブハウスでもホールでも武道館でも、変わらず笑顔で歌い踊り、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれる彼女達を僕らは声を枯らして応援する。

そして成長していく過程を見守り、羽ばたいて行くのを送り出す喜びがそこにはあるのだ。

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